防衛省改革会議資料について

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/bouei/dai2/pdf/siryou.pdf
本資料は、防衛省内局の文官が中心となって作成した物ですが、作成する上で留意したであろうと思われる特徴が一つあります。

それは、前事務次官による防衛省汚職事件が事案の一例として掲載されていないことです。
理由は簡単です。防衛大臣の補佐体制を検討する本資料に、それを掲載してしまうと文官の立場が非常に危うくなってしまうからです。このため、陸海空自衛隊の不祥事を前面に押し出して、これを犠牲にして自分たちの安全を図ろうとしているのです。
自衛官ももちろん、彼らの襟を正していく必要があるでしょう。しかしながら、文民統制の本質的な意義に振り返れば、調本事案や防衛施設庁入札談合事案なども当然、資料に入れておくべき内容でしょう。ところが、それを入れてしまうと議論の対象が文官になってしまうので、彼らがそれを入れるわけがありません。
(1)話は変わりますが、自衛隊の統合運用を司る「統合幕僚監部」の編成に関する話が持ち上がった時、内局は何をしていたかご存じでしょうか?防衛庁長官を支えるために統合幕僚監部をどのような組織にするのかという建設的な話をするのではなく、なんと内局内の組織である「運用局」不要論に備えるため、自衛官達には内緒で、せっせと言い訳資料を準備していたのです。そのお陰で、今でも「運用企画局」という合理化可能な組織が立派に存在しています。
(2)統合幕僚監部の新編に併せるかのうように、「情報本部」を「統合幕僚会議」から切り離したのも内局です。「情報本部」を防衛大臣の管轄下に置くことを大義名分とすることによって、実態は内局が情報を独占することに成功しました。これによって、「統幕」の防衛庁内における立場が弱まったばかりではなく、「統幕」が部隊を統合運用する際には、自らの目や耳がない状態で「内局」という盲導犬にお世話になりながら、部隊を指揮するということになってしまいました。我が国が置かれている防衛環境から考えると、これは軍事的な選択肢として挙げることすらありえない暴挙です。
 百歩譲って、内局が部隊運用のためではなく、防衛政策立案のため、自らも情報収集機関を保持するというのなら理解できますが、現状のように統幕から情報収集機関を奪った上に、その組織の構成員のほとんどが部隊運用のための情報収集を得意とする自衛官により成り立っているのは驚きというか情けないとしか言いようがありません。
(3)内局が現在狙いを定めているのは、陸上自衛隊内の組織で、都道府県に存在している地方本部(昔の自衛隊地方連絡部:自衛官の募集・自衛隊の広報等を行う組織)だと思っています。現在、その第一段階として昔の防衛施設局を解体し、内局の下部組織として地方防衛局という組織を作りました。次の段階は、陸上自衛隊の組織である地方本部を地方防衛局に編入させようとするでしょう。
 これに対する陸上自衛隊の考え方について私は承知しておりませんが、私は行政的な業務を一つの組織で効率的に行うという観点で、個人的にこの組織編成には賛成です。ただし、問題は、内局がそのような組織論からではなく、自己の組織の拡大という観点から話を進めていることにあります。
・・・・・というわけで、合理的な組織論で話を進めていくのであれば、
(3)はともかく、(1)や(2)などは絶対に起こりえない話であるということを理解していただいた上で、防衛省内局の文官が主体となって作成する資料をベースに行われる「防衛省改革会議」を見守っていただき、その行方について各所で皆様のご意見をいただければと思います。
なお、忘れていただきたくないのは、内局には優秀かつ真剣に国のことを考えている者も数多くいるということです。私は、彼らが防衛省において、自衛官達と協力しつつ、ともに日本の安全保障の将来のため全力を尽くせるような体制が構築されることを願ってやみません。皆様におかれましても、彼らに対し、厳しい中にも温かな目を向けていただきますことを希望いたします。
(防衛省の将来に期待する者)
【2007/12/22配信 『軍事情報』より】