将軍と佐官が同格?
●副師団長、将補に昇任(12/3 3師団)
第3師団副師団長兼ねて千僧駐屯地司令の佐藤暢彦1等陸佐[陸軍大佐]に対し、十二月三日付けで陸将補[陸軍准将]への昇任[昇進]が発令されました。
⇒佐藤将補は前宮城地連本部長。今年七月三日付けで3師団副師団長兼ねて千増駐屯地司令への補職が発令され、着任しておられました。
●上記記事に関する重要なQ&A
【質問 (エンリケ)】
上記記事について教えてください。
自衛隊人事でこういうケースはよくあるのでしょうか?
【回答 (ヨーソロ)】
よくぞ、問うてくれました。
官庁の各役職には職位の等級(給与の格付け)が決められています。
各省の事務次官は必ず指定職8級(旧11級)、とか、中央官庁の課長職は通常は行政職(一)10級、特に重要な課長職は11級(特重課長)、と言った具合です。
今の自衛官の階級は行政職の給与表に横並びなので、1佐以上の各ポストも事実上就任階級が固定されています。(約25年ほど前からの悪しき制度。細部後述)
従って、将補職である副師団長に補職する場合はまず将補に昇任させてから補職します。通常は同日付発令です。
また、将補と将の階級は人数が固定されています(定数管理と称します)。
従って、将補以上の誰かが退職か死亡でもしない限り将補以上には上がれませんので最後は常に勧奨退職(肩たたき)ですし、人事は常に玉突き人事になります。(^-^;)ゞ
自衛官の各ポストは(陸海空によって少し異なりますが)部隊の編制表(標準献立)に則って編成表(実際の部隊の人員の組み立て)が出来ており、その中で役職に応じた職種(海自では特技)、階級、人数等が定められています。
(例:護衛艦○○○○、艦長:総合職1佐、副長:艦艇用兵幹部2佐、砲雷長:同3佐、・・・、乗組幹部:艦艇幹部2尉×4、同3尉×5、・・・)
一般に軍隊の補職では、適材適所の柔軟性確保や有事の急速な補充に備えて一階級上や下でも差し支えない、と言うのが常識です。
しかし、昭和五十年代の後半に行政職の等級がそれまでの8段階から11段階に改正された際、当時の防衛庁内局は自衛官の俸給表も無理矢理行政職に合わせるという愚挙をやりました。その一つが今に残る将補(一)(二)とか1佐の(一)(二)(三)というわけの分からない格付けです。
それまで1佐職には1佐であれば誰でも(あるいはやむを得ない事情があれば将補や2佐でも)補職可能でした。ところがこのくだらない制度のおかげで、例えば、「○○隊司令職は1佐(二)職なので、1佐昇任後2年以上経過した者でなければ補職出来ない」という硬直した人事を求められることになりました。
しかも、最も重要な筈の先任順(指揮継承順序)とは無関係に、(一)(二)(三)の格付けに縛られたものになったのです。
その一方で、将補(二)と1佐(一)は格付け上で同格とみなす、という無茶苦茶さ。
一体何処の世界に将軍・提督と佐官が同格という軍隊があるでしょう。
第3師団の副師団長は将補職だと思われますが、おそらく将補(二)なので同格扱いである1佐(一)のままで発令され、12/3付で将か将補の誰かが退職して枠が空いたので昇任したものと思われます。
この将軍/佐官の同格扱いにせよ、1佐人事の無神経な規制にせよ、部隊の実情を全く知らずに机上の理屈だけでものごとを決める内局官僚のごり押し弊害の典型です。
防衛省の様々な改革の中で「行政職とは独立した自衛官の俸給(格付け)体系」を陸海空の各幕僚監部が希求しているのはこのような事情もあるのです。
(ヨーソロ)
【071217配信 『軍事情報』326号 (最新軍事情報)より】