【戦術の鬼才マンシュタインに学ぶ】独ソ戦の真実と現代戦への示唆──『漫画 マンシュタインと機動戦』を読む

漫画 マンシュタインと機動戦
漫画 マンシュタインと機動戦

こんにちは、エンリケです。

第二次世界大戦の「頭脳」にして、現代まで論争の的となってきた男、エーリッヒ・フォン・マンシュタイン。
その実像に、元自衛官の漫画家・石原ヒロアキ氏が真っ向から迫ったのが、
『漫画 マンシュタインと機動戦』(監修:大木毅、並木書房、2025年6月6日発売)です。

この記事では、本書の読みどころと魅力、さらには現代のウクライナ戦争にもつながる示唆まで、じっくりと紹介していきます。

なぜ今、マンシュタインなのか?

マンシュタイン──この名前を聞いて「おっ」と反応する方は、かなりの戦史通でしょう。

1940年のアルデンヌ突破
1942年のセバストポリ攻略
1943年以降のハリコフ戦、ドニェプル川戦線での反攻作戦

戦史に名を刻む傑作の数々を生んだドイツ国防軍の頭脳にして、孤高の作戦家。

しかし、冷戦後の研究ではその「自己神話化」や「戦略眼の欠如」も指摘され、
「マンシュタインは本当に“名将”だったのか?」
という問いも浮上していました。

そんな揺れる評価の中で、本書はあえて「戦術レベルのマンシュタインの真価」にフォーカスしました。つまり、「歴史的イメージ」ではなく「現場の判断力」に迫っているわけです。 これが本書最大の特徴です。

“作戦を視る”という新しい戦史の読み方

【読みどころ①】戦車によって変わった戦場のリアル

本作は前作『漫画 グデーリアンと機甲戦』と対をなす一冊。
焦点は「戦車の登場によって、戦場の構造はどう変化したのか?」です。
スターリングラード攻防戦
クルスク戦
ドニェプル川の戦い

こうした激戦を舞台に、
広大・流動的・高速化された戦場を、漫画ならではのビジュアルで再現。
作戦地図を“読ませる”のではなく、“感じさせる”。
この表現力は、他の軍事書では得難い体験です。

【読みどころ2】現代戦にまでつながる「問い」

驚くべきは、本書が描く独ソ戦の構図と、いままさに続くロシア・ウクライナ戦争との重なり。
たとえば:
・同じ戦場──だが決着までの時間が数ヶ月から数年に。
・ロシアは、なぜ決定的な勝利を得られないのか?

こうした問いを、マンシュタインが立ち向かった状況と重ねて読むことで、
現代の戦争理解に新たな視点が生まれます。

作ったのは誰?──信頼できる“戦争の描き手”たち

作・画:石原ヒロアキ(米倉宏晃)氏
1958年、宮城県石巻市生まれ。青山学院大学卒業後、1982年陸上自衛隊入隊。化学科職種幹部として勤務。第7化学防護隊長、第101化学防護隊長を歴任。地下鉄サリン事件(1995年)、福島第1原発事故(2011年)で災害派遣活動に従事。2014年退官(1等陸佐)。学生時代赤塚賞準入選の経験を活かし、戦争シミュレーション漫画『ブラックプリンセス魔鬼』および自衛官の日常を描いた『日の丸父さん』(電子書籍で発売中)、『日米中激突!南沙戦争』『漫画クラウゼヴィッツと戦争論』『漫画マハンと海軍戦略』『漫画グデーリアンと機甲戦』(以上、並木書房)を発表。

監修:大木毅氏
現代史家。1961年東京生まれ。立教大学大学院博士後期課程単位取得退学。DAAD(ドイツ学術交流会)奨学生としてボン大学に留学。千葉大学その他の非常勤講師、防衛省防衛研究所講師、国立昭和館運営専門委員等を経て、著述業。『独ソ戦』(岩波新書)で新書大賞2020大賞を受賞。主な著書に『「砂漠の狐」ロンメル』『戦車将軍グデーリアン』『「太平洋の巨鷲」山本五十六』『日独伊三国同盟』(以上、角川新書)、『ドイツ軍事史』『戦史の余白』(以上、作品社)、『勝敗の構造』(祥伝社)、訳書に『戦車に注目せよ』『「砂漠の狐」回想録』『マンシュタイン元帥自伝』『ドイツ国防軍冬季戦必携教本』以上、作品者)など多数。 6月10日には『天才作戦家マンシュタイン』(角川新書)も刊行予定。本作との合わせ読みで、立体的な理解が可能になります。

「読む戦争」から「考える戦争」へ──こんな方にこそ

以下のような方に、本書は確実に“刺さる”でしょう:

✅ 独ソ戦の流れは知っているが、戦術のディテールがつかめない
✅ マンシュタインの評価の“揺らぎ”を追ってきた
✅ 現代のウクライナ戦争を歴史的視点で捉えたい
✅ 戦車と歩兵、どちらが戦局を左右したのかを体感したい
✅ クラウゼヴィッツ、マハン、グデーリアンのシリーズを読んできた

単なる「過去の戦争の再現」ではありません。
“なぜ勝てなかったのか” “なぜいまも決着がつかないのか”という、
時代を超えた問いへの“作戦的回答”が、ここにあります。

あなたの「戦争観」がアップデートされる

世に独ソ戦を扱う本は無数にあります。
でも、この一冊は違います。

●漫画でありながら、戦術構造に徹底フォーカス
●冷戦後の史料と最新研究に基づく描写
●現代戦への示唆まで含む

これは“資料で学ぶ戦争”ではなく、“構造で考える戦争”です。
戦史ファンだけでなく、国際政治や安全保障に関心のある人にも、強くおすすめします。

📘書籍情報
『漫画 マンシュタインと機動戦』
監修:大木毅/作・画:石原ヒロアキ
発行:並木書房
発売日:2025年6月6日
判型:A5判/228ページ
価格:1,980円(税込)
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エンリケ

🔻追伸
「なぜドイツのこの将軍は、勝てなかったのか?」
「そして現代ロシア軍は、なぜ勝てていないのか?」
時代は違えど、問いは重なります。

そして、本書はその問いに“視覚”と“構造”で応える一冊です。
「戦争を読む」のではなく、
「戦争を考える」ために、ぜひあなたの書棚にどうぞ

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