わが国はなぜ「情報」に弱いのか?──国家の命運を分ける「インテリジェンス」の真実に迫る一冊

近現代日本の情報戦史(インテリジェンスの教科書)
近現代日本の情報戦史(インテリジェンスの教科書(1))

こんにちは、エンリケです。

2025年6月、ある一冊の本が静かに、しかし深くわが社会に問いを投げかけようとしています。

それが──

『近現代日本の情報戦史─インテリジェンスの教科書(1)』
著:樋口敬祐(元情報本部主任分析官)
発行:並木書房
発売日:2025/6/5
版型・ページ数:四六判296ページ
価格:2420円(税込)
https://amzn.to/3YQRMyA

です。

本書のテーマは、「情報」で勝ち、「情報」で敗れてきたわが近現代史です。
戦争、外交、経済、安全保障──あらゆる国家運営にとって不可欠な「インテリジェンス(国家情報活動)」。
にもかかわらず、わが国はこの分野において、明治以降ずっと“後進国”のままです。

なぜ、わが国は情報戦に敗れ続けるのか?

なぜ、私たちはいまだ「情報」に弱いままなのか?
その本質に迫るのが、本書『近現代日本の情報戦史─インテリジェンスの教科書(1)』です。

「情報で勝った戦争」「情報で敗れた戦争」

かつてわが国が誇ったインテリジェンス能力をご存じでしょうか?
日清戦争・日露戦争では、わが国は情報を制することで戦局を有利に導きました。参謀本部や在外武官が地道に築いた情報ネットワーク、暗号の解析、現地での人的情報活動──まさに「情報の勝利」だったのです。
しかし、この成功体験にわが国はあぐらをかいてしまいました。
体制の整備が遅れ、第一次世界大戦では欧米列強の情報体制に取り残され、大東亜戦争では「情報軽視」が命取りに。真珠湾攻撃の成功の裏で、ミッドウェー海戦の大敗北。暗号の漏洩、敵の意図の読み違い、組織内の情報共有の不備──
情報に負け、情報に沈んだのです。

現代でも変わらない「情報弱国」ニッポンの現実

戦後、わがインテリジェンス機関はGHQによって解体され、情報機能は長く空白の時代を迎えました。
ようやく近年、国家安全保障局(NSS)の創設など体制整備が進んでいるものの、縦割り行政や組織文化の壁は根深く、未だ情報共有や活用の仕組みは脆弱なまま。
しかも私たち自身、そもそも「インテリジェンス」という言葉を誤解してはいないでしょうか?
「スパイの話でしょ?」
「特別な人たちの世界のことじゃないの?」
そんな先入観が、現代社会の“情報リテラシー”の弱さを助長しているのかもしれません。
しかし、いまや戦争はサイバー空間やSNS上で始まります。偽情報(ディスインフォメーション)、世論誘導、情報操作──これらは、私たちの暮らしのすぐそばで現実に起きている“戦争”なのです。

なぜ、日本では「情報」が語られないのか?

本書の著者・樋口敬祐さんは、防衛省情報本部の主任分析官として、長年にわたりわがインテリジェンスの中枢に身を置いてきた人物です。
帝国陸海軍の情報組織の構造、明治から昭和にかけての情報活動、そして戦後の再建と現代の課題まで、豊富な資料と経験に基づいて実証的に描き出します。
インテリジェンスとは、国家の意思決定を支える知的活動です。
それは戦争に限らず、外交、経済、安全保障、さらには感染症対策のような危機管理まで、あらゆる分野に関わります。

だからこそ、私たち一般国民も、情報を見る目を持たねばならない

「情報に踊らされる側」から、「情報を読み解く側」へ──。
本書は、その第一歩を提供してくれます。

『インテリジェンスの教科書(1)近現代日本の情報戦史』の読みどころ

明治から現代まで、情報戦の全体像を「立体的に」学べる

なぜ日清・日露戦争では勝てたのか?
なぜ太平洋戦争では致命的な敗北を喫したのか?
戦後、わが情報機関が「空白」となった理由とは?
現代のわが国は、情報戦でどう立ち遅れているのか?

これらの問いに、歴史と現実の両面から迫ります。

本書の構成

はじめに 1

農耕民族だから「情報に弱い」は正しいか/「情報」
は日本人の造語/インフォメーションとインテリジ
ェンス

序章 インテリジェンス前史 19

『日本書紀』に登場する日本初の情報機関/新羅か
ら来たスパイ/情報収集のスペシャリスト「忍者」

第1章 日本陸軍のインテリジェンス機関 28

1、建軍前後の状況 29

海主陸従/軍の行政機関の名称の変遷/陸軍におけ
る参謀本部設立まで

2、陸海軍統合の「参謀本部」創設 37

理想的な組織に近づいた参謀本部/先駆的な陸海軍
の統合機関の設立と破綻

3、作戦と情報部門の統合と独立 44

日清戦争の戦訓に基づく参謀本部の改編/日露戦争
に備えた参謀本部の改編/情報業務における日露戦
争の戦訓/参謀本部の改編により情報部再び独立

4、参謀本部創設の立役者 51

参謀本部創設の父・川上操六/軍政の桂太郎/モル
トケの思想を日本に植え付けたメッケル少佐

【第1章のポイント】57

第2章 明治陸軍のインテリジェンスはどこが優れ
ていたか 60

1、日清・日露戦争を勝利に導いたインテリジェンス 60

日本インテリジェンスの父「川上操六」/「天下の
逸材」荒尾精/「シベリア単騎横断」福島安正/一
人で「陸軍一〇個師団に相当」の明石元二郎/僧侶
「清水松月」となり活動した花田仲之助/現地に溶
け込み活動した石光真清/報国六烈士

2、明治期インテリジェンスの先見的な取り組み 80

情報伝達手段(海底ケーブル)の充実/日英同盟と
日英軍事協商による情報の入手/ロシア側の日本軽
視の風潮/ロシア側の情報収集の失敗

3、陸軍のインテリジェンスの問題点 84

日露戦争開戦時から解読されていた日本軍暗号/プ
ロイセン参謀本部の問題点を継承した日本陸軍

4、主要国の趨勢から取り残された日本のインテリジェンス 89

第一次世界大戦への参戦とシベリア出兵の影響/大
戦から学べなかったインテリジェンスの役割/陸海
軍の英語教育への取り組み不十分/日清・日露戦争
の成功体験が仇に

【第2章のポイント】94

第3章 陸軍に遅れた海軍インテリジェンス機関 99

1、海軍情報組織の設立は、なぜ陸軍より遅れたか? 99

英国式を採用した海軍/建軍から日清戦争までの海
軍情報機関/日露戦争前後の海軍のインテリジェン
ス機関

2、日露戦争時の海軍情報活動体制 109

インテリジェンス・サイクル/情報収集から配布ま
で/欧州における在外公館の状況/武官による情報
収集/海軍駐在員等の派遣による情報収集/極東以
外のロシア海軍の情報収集/第3班の部屋の配置/
情報の配布

3、バルチック艦隊の動向を探る 118

国民総動員で情報収集/必要な情報(情報収集項目)
/情報収集地域・地点と収集源(手段)/バルチッ
ク艦隊の実際の動向/実際に収集された情報/情報
収集成果(プロダクト)/情報活動の教訓

【第3章のポイント】137

第4章 陸海軍の秘密情報活動と防諜 140

1、通信情報収集能力の充実 141

陸軍の特殊情報/海軍の通信諜報

2、人的情報収集能力の向上 149

日本の在外大公使館付武官制度/在外大公使館付武
官の管轄や派遣先/在外大公使館付武官の人選/在
外大公使館付武官の軍における影響力/陸軍の特務
機関/(海軍)軍令部特務部

3、カウンター・インテリジェンス 164

陸軍のカウンター・インテリジェンス(防諜)/海
軍のカウンター・インテリジェンス

【第4章のポイント】168

第5章 インテリジェンスの成功と失敗 173

1、真珠湾攻撃(成功事例1)173

情報上の成功要因/米国側の情報上の失敗

2、フィリピンの戦い(成功事例2)177

情報上の成功要因

3、マレー沖海戦(成功事例3)180

マレー沖海戦の成功要因/英国側の情報上の失敗

4、潜水艦暗号漏洩事件(失敗事例1)182

オーストラリア軍による暗号書の回収

5、ミッドウェー海戦(失敗事例2)184

情報上の失敗要因

6、海軍甲事件(失敗事例3)186

情報上の失敗要因

7、海軍乙事件(失敗事例4)189
情報上の失敗要因

8、陸海軍インテリジェンスの問題点 192

組織上の問題点/情報の軽視/情報の保全/不十分
な情報共有/米軍による日本軍の情報部の評価

9、軍以外のインテリジェンス機関 206

外務省のインテリジェンス機関/内閣情報部と情報
局/日本の中央インテリジェンス機関

【第5章のポイント】213

第6章 戦後日本のインテリジェンス機関の再建 218

1、自衛隊のインテリジェンス機関 220

陸上幕僚監部第2部/防衛省情報本部/情報本部の
編制/情報本部の任務と業務

2、外務省のインテリジェンス機関 226

国際情報統括官組織の設立/国際情報統括官組織の
任務と業務

3、公安関連のインテリジェンス機関 229

公安警察(警察庁警備局)/公安警察(警察庁警備
局)の編制と業務/サイバー警察局の編制・業務/
公安調査庁/公安調査庁の編制/公安調査庁の任務
と業務

4、中央情報機構 236

内閣情報調査室/内閣情報調査室の編制/内閣情報
調査室の任務と業務

5、インテリジェンス・コミュニティーの構築 242

ICの二つの型/主要な改革の流れ/官邸をスター
トにするインテリジェンスサイクル/日本版NSC
とNSSの創設/国家安全保障会議(NSC)の構
成員/国家安全保障局(NSS)の組織と業務

【第6章のポイント】253

第7章 日本のインテリジェンスの課題と対策 259

インテリジェンス機関の戦前と戦後の比較/秘密工
作活動とカウンターインテリジェンス/戦前戦後を
通じて不十分だった情報の共有と集約・統合/情報
軽視による人材不足・情報教育不足/情報共有を阻
害する「組織文化」/情報共有を阻む「行き過ぎた
秘密主義」/情報共有を妨げる官僚制/情報共有の
ためには/戦前と比較して向上している機能/主要
国にはあるのにわが国にはないか不十分な組織・機
能/不十分な人的情報活動/公開情報(オシント)
の収集機能の不足と情報共有意識の不在/インテリ
ジェンス機関における不十分なサイバー戦能力/イ
ンテリジェンス機関監視機能の不在/インテリジェ
ンス共通教育/情報組織の規模・予算から見て不十

【第7章のポイント】284

おわりに 287
主な参考文献 293

コラム1 ペンタゴンの始まり 36
コラム2 陸海の考え方の違いに関する体験談 42
コラム3 石光真清旧居(石光真清記念館) 77
コラム4 陸上自衛隊における指示棒の使い方 198
コラム5 組織の縦割り「ストーブパイプ」248
コラム6 組織文化を変えるのは容易ではない 269

歴史をたどりながら、現代の課題を直視し、わが国が抱える「構造的な情報リスク」にまで切り込みます。

著者紹介

樋口敬祐(ひぐち・けいすけ)
1956年長崎県生まれ。拓殖大学大学院非常勤講師。
元防衛省情報本部分析部主任分析官。
防衛大学校卒業後、1979年に陸上自衛隊入隊。95年
統合幕僚会議事務局(第2幕僚室)勤務以降、情報関
係職に従事。陸上自衛隊調査学校情報教官、防衛省
情報本部分析部分析官などとして勤務。
2011年に再任用となり主任分析官兼分析教官を務め
る。その間に拓殖大学博士前期課程修了。修士(安
全保障)。拓殖大学大学院博士後期課程修了。博士
(安全保障)。2020年定年退官(1等陸佐)。
著書に『インテリジェンス用語事典(共著)』『ウ
クライナとロシアは情報戦をどう戦っているか』
(並木書房)などがある。

現場経験と理論、両面から語られる「インテリジェンスのリアル」は他では読めません。

情報を見る力を鍛える、すべての日本人に向けた一冊

いま、私たちは「何が本当なのか」が見えにくい時代を生きています。
AI、SNS、ディスインフォメーション、分断、フェイクニュース──
そんな時代だからこそ、「情報リテラシー」が生きる力になります。
本書は、明治から現代までの情報戦の軌跡をたどりながら、私たちにこう問いかけます。

「情報に、どう向き合うべきか?」

単なる歴史書ではなく、国家と社会、そして私たち一人ひとりの課題に迫る、現代的で実用的な「教科書」。
未来の日本の選択肢を増やすために、まずは、情報の歴史を知ることからはじめてみませんか。

📘 書籍情報
『近現代日本の情報戦史─インテリジェンスの教科書(1)』
著:樋口敬祐(元情報本部主任分析官)
発行:並木書房
発売日:2025/6/5
版型・ページ数:四六判296ページ
価格:2420円(税込)
https://amzn.to/3YQRMyA

エンリケ

追伸
「情報」とは、国家だけの話ではありません。
それは、私たち一人ひとりの“生存戦略”にも直結しています。

いまやフェイクニュース、世論操作、サイバー攻撃は日常の風景。
知らず知らずのうちに、私たちは“情報の海”で操られる側になっています。

だからこそ必要なのが、「インテリジェンス」を正しく理解し、自分の頭で見抜く力。
それを身につける第一歩が、この本です。

樋口敬祐さんの『インテリジェンスの教科書(1)』は、
“情報に敗れ続けた日本”を知ることで、
“情報に強い自分”になるための視座を与えてくれます。

国家を動かす情報の現場とは?
歴史の裏側で何があったのか?
私たちは、これからどう備えるべきなのか?

――気づいたときには、すでに戦いは始まっています。

どうか今、手に取ってください。

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