【本の紹介】『迷走するボーイング─魂を奪われた技術屋集団』 (原題(FLYING BLIND The 737 Max Tragedy and the Fall of Boeing) ピーター・ロビソン著(ブルムバーグ記者)/茂木作太郎訳

『迷走するボーイング─魂を奪われた技術屋集団』 (原題(FLYING BLIND The 737 Max Tragedy and the Fall of Boeing) ピーター・ロビソン著(ブルムバーグ記者)/茂木作太郎訳
『迷走するボーイング─魂を奪われた技術屋集団』
(原題(FLYING BLIND The 737 Max Tragedy and the Fall of Boeing)
ピーター・ロビソン著(ブルムバーグ記者)/茂木作太郎訳

誰もが信じて疑わなかった「技術のボーイング」、その裏側で何が起きていたのか?

2018年10月と2019年3月、世界は立て続けに起こった2つの悲劇的な航空機事故に息を呑みました。墜落したのはボーイング社の最新鋭機、737MAX。346人もの尊い命が失われ、その原因が企業の安全軽視と過度な利益追求であったことが後に判明しました。

ビジネス界で「信頼と技術の象徴」とされてきたボーイング。なぜ、その名門企業が暗い運命をたどることになったのでしょうか?
著者ピーター・ロビソンが、現場の技術者、経営者、犠牲者家族、業界関係者への数百時間のインタビューと数千ページにわたる資料を基に、驚愕の真実を明らかにします。彼のリサーチを経て描かれる「技術屋集団」の変貌は、読者に衝撃と怒りを覚えさせることでしょう。

・安全を第一とするはずの航空機メーカーが、なぜか「利益至上主義」に傾倒していった。

・企業の内部文化の変質が、「空の安全」を脅かすほどの代償をもたらした。

・なぜボーイングは多くの犠牲者を出したにもかかわらず、組織の歪みを正せなかったのか?

名門企業としての誇りが薄れ、「コスト削減」「利益最大化」を追求するあまり、安全性が後回しにされた事実。エンジニアの声も、経営陣には届かず、その代償として現場で働く技術者たちが葛藤し続けました。

業界を守るはずの連邦航空局(FAA)も甘い態度で臨み続け、結果、規制と安全基準は後退して市場の信頼を失い、「市場の競争に負けてはならない」というプレッシャーの中、ボーイングはマクドネル・ダグラスとの合併以降、利潤追求を優先する文化に変質していったのです。

『迷走するボーイング─魂を奪われた技術屋集団』は、これらの事実を丹念に掘り下げ、組織の内側に何が起こっていたのかを詳細に描き出します。

「かつてのボーイングではなくなった」瞬間から、次第に歪み始めるボーイングの組織文化、そして墜落の悲劇へと至るまでの「物語」を通じて、読者はその真相に触れることができるのです。

著者は、ボーイング社員の悲痛な声、犠牲者家族の苦悩、そして企業の腐敗がもたらした影響を鮮やかに描き出し、現代ビジネスの歪んだ一面を浮き彫りにしています。

本書を読むことで、組織が利益優先の罠に陥るとどうなるのかを学ぶことができるでしょう。

では中身を少し見ていきましょう。

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目次

主な登場人物 8

序章 かつてのボーイングではなくなった 13

間違った角度で設置された仰角センサー/見過ごしてはならない欠陥/続く737MAX墜落事故/変質したボーイング/社会的責任を放棄し私腹を肥やす/失われたボーイングの安全文化

第1章 〝空飛ぶフットボール〟31

B‐47爆撃機の大口契約/造船所の一角で水上機B&Wモデル1を製作/民主党政権による契約打ち切り/困難な旅客機の開発製造/707を救った伝説のテストパイロット/より安全な飛行機の開発を目指して/〝空飛ぶフットボール〟737/予算の超過をいとわない社風/「もうエンジニアを増やすことができない」/苦戦する737の販売

第2章 ボーイング家の無名の天才「737」59

競合機DC‐10の相次ぐ墜落/ライバル機「エアバス」の登場/日本航空123便の墜落事故/驕りの始まり/エアバスが採用した最新技術/市場の急変を見過ごしたボーイング/明らかになる737の欠陥

第3章 明暗を分けたマクドネル・ダグラスとの合併 76

新世代の経営者/「ワーキング・トゥゲザー」/777のプロジェクトリーダー/投資を補って余りある収益/737の三回目の改良/マクドネル・ダグラスの終わりの始まり/マクドネルとダグラスのあつれき/錐揉み状態のマクドネル・ダグラス/ボーイングへの売却/「ボーイングがマクドネル・ダグラスに買われた」

第4章 ハンターvsボーイスカウト 105

「君は僕の部下になるんだよ」/「ファミリー」ではなく「チーム」にならなければならない/低迷するボーイングの株価/ストーンサイファーによる粛清/製造工場の売却/「我々はボーイングを信頼していない」/史上最大のホワイトカラーによるストライキ/組合指導者の鋭い一撃/ストライキ終了/ストーンサイファーの影響力

第5章 理想は潰えた… 130

ボーイングの業績改善/失敗した映画配信事業/737を世界最大のビジネスジェット機に改造/シアトルからシカゴへ本社移転/技術者集団から営利を追求する企業へ/「我々はナンバー・ツーだ」/787開発コストの大幅削減/次期CEO候補の失脚/ボーイング史上初めて主翼の開発を他社に委託/売却された「悪巧みの部屋」/女性問題で失脚/消えた「エンジニアリングの魂」

第6章 コスト削減と737MAX 160

生まれながらのリーダー/レーガン大統領の規制緩和/問答無用で3Mを改革/全米企業第六位のロビー活動/アウトソーシング戦略の失敗/労働組合の影響力低下を目論んだ製造拠点の移転/安物製品を販売する企業/エアバスの改良機登場/コスト削減の象徴──737MAX

第7章 FAAの監督不行き届き 190

メーカーとFAAの暗黙の了解/矛盾するFAAの任務──航空業界の育成と安全の確保/業界寄りの航空立法諮問委員会/「FAAは企業のように運営されます」/「長期的には安全が失われる」/FAAの監督責任をメーカーに譲り渡す/FAAの隠蔽体質と秘密主義/防げなかったバッテリー事故

第8章 止まらないカウントダウン 212

新型機737MAXの開発/シミュレーター訓練の回避/採用されなかった電子チェックリスト/風洞試験で明らかになった欠陥/却下された安全対策/真実を話してはならない/巨額な役員の成功報酬/マレンバーグCEO/「製品に問題はない。次に進め!」

第9章 737MAXの欠陥 238

パイロットの序列/パイロット訓練の外部委託/会社は混乱し、社内は分断/主導権はボーイングにあった/737MAXの初飛行/失速試験で明らかになった欠陥/さらなる欠陥/「会社は誤った方向に進んでいる」/「誰も残っちゃいない」/そして何かが壊れる……

第10章 ライオンエア機の墜落 261

急成長のライオンエア/問題山積のシミュレーター開発/限界を超える生産機数/記録的な収益/権限を失ったFAA/失敗に終わったボンバルディア吸収/トランプ大統領との蜜月/手抜きの整備/ソフトウェアの欠陥/「勝手に墜落する危険性」/不安の声を上げ始めたパイロット/「事故はまもなく解決する」/「事故では終わらない気がする」/危機管理センターで暗躍する代理人/設計に問題があった/「操縦桿が動くんだぞ。わかっているのか?」/「さらに一五機のMAXが墜落する」

第11章 エチオピア航空機の墜落 304

ボーイングの説明を信じていなかった/忘れ去られたライオンエア機の事故/エチオピア航空302便墜落事故/遅れる政府の対応/事故から三日後の飛行禁止命令/高速で地面に激突/理不尽な別れ/「殺人機」と命名/遅すぎたアップデート/「我々は過ちを認めます」/MAXの「再就役」

第12章 血の代償 331

社会運動家ラルフ・ネーダー/結束する遺族たち/FAAは「魔法と科学の違いがわからない」/FAAによる飛行試験の実態/議会の追及/怒りをあらわにする航空会社/「動かぬ証拠だ」

第13章 「田舎へ帰れ!」349

「遺族は踊らされている」/上院委員会公聴会での追及/追い詰められるマレンバーグCEO/「謝るなら、目を見て話しなさい」/マレンバーグの解任

第14章 ボーイング存亡の危機 365

新型コロナウイルスの猛威/ウェルチに最もよく似た男/一周年追悼式でのボーイングの対応/「会社のトラブルは前CEOに起因する」/新型コロナウイルスで存亡の危機/カルフーンCEO率いるボーイングの将来

終章 ボーイング史上最大の汚点 385

737MAXの再就役/「不測の事態がまた発生するかもしれない」/活かされなかった教訓/「ボーイングは殺人罪に問われず」

主な参考文献 395
著者のことば 397
訳者あとがき 399

訳者あとがき(一部)

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いかがでしょうか?

『迷走するボーイング─魂を奪われた技術屋集団』は、単なる企業の失敗事例ではありません。

現代のビジネスが「安全より利益」を重んじるとき、我々が目を向けるべき危険を示しています。もしあなたが企業経営に関心を持っているなら、この物語から学べることは非常に多いはずです。

ご注文はこちらから

『迷走するボーイング─魂を奪われた技術屋集団』
(原題(FLYING BLIND The 737 Max Tragedy and the Fall of Boeing)
ピーター・ロビソン著(ブルムバーグ記者)/茂木作太郎訳
判型:四六判404ページ
発行日:2024/11/6
価格:¥2200+税
発行:並木書房
https://amzn.to/3C9Cpsx

エンリケ

追伸

本書には、次のような興味深いエピソードが盛り込まれています:

・かつてのボーイングでは、技術者が心から安全を追求し、エンジニアリングを最優先にしていましたが、ある出来事を境にその文化は崩れ去ります。

・コスト削減と利益追求が優先され、エンジニアが「黙らされ」、言うべきことも言えなくなってしまった社内の実態。

・マクドネル・ダグラスとの合併がもたらした文化の衝突と「利益至上主義」へのシフト。

・技術の妥協がもたらした737MAXの欠陥、そしてその欠陥がなぜ修正されることなく製品化に至ったのか。

The New York Times、The Economist、Publishers Weeklyなどの一流メディアが絶賛し、多くの経営者や企業分析家からも高く評価されている本です。この一冊を通じて、私たちは「何を見落としてはならないのか」を学べるでしょう。

本書を手に取り、今こそ真実に向き合ませんか?

『迷走するボーイング─魂を奪われた技術屋集団』
(原題(FLYING BLIND The 737 Max Tragedy and the Fall of Boeing)
ピーター・ロビソン著(ブルムバーグ記者)/茂木作太郎訳
判型:四六判404ページ
発行日:2024/11/6
価格:¥2200+税
発行:並木書房
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