【第78講】スペイン語文法入門―兵法的外国語学習への誘い―(その56)
今回は、引き続き”語形成”についてのお話しです。語形成の知識を仕入れると、
知らない単語に出くわしても「類推」が可能となり、それは、的から外れぬ範囲で解釈
が可能となって来ることを意味するのです。
また、”暗記”だけに頼らないで単語の習得を加速させることが可能です!
では、語形成された単語・・・所謂、”非単純語”について概観して行きましょう。
☆派生語(derivacion)
派生語とは何か?その公式があります。それは・・・
「”詞” + ”辞”」
あるいは・・・
「”辞” + ”詞”」
なのです。
「詞」とは、「ことば」と読んで、文中で自立している語のことです。
「辞」とは、同じく「ことば」と読みます。が、文中で自立しておらず、詞に加わる
ことで初めて意味が出て来ます。
例えば・・・
よくお目にかかる”in-“とか”des-“とかの単語の前に書かれている綴りですが、
これらは、スペイン語でも英語でも共通しているもので、ラテン語が起源の”否定”を
表す”辞”の一つです。
単語の頭に付加される”辞”ですから・・・「接頭辞」と言われます。
ちなみに、語末に付加される”辞”は、「接尾辞」といいます。また、語中のものは
「接中辞」といいます。
では、元に戻って・・・
この接頭辞の”in-“は、posibleに加えて、imposible(in-がim-になるのは次の”p”
の発音が”両唇音”なので”n”が”m”と変化します。これを”同化”・・・と言いま
す)にすると「可能」から「不可能」という語を造りあげました。(ex. la mision
imposible 不可能な任務)
漢字の概念では、「不」、「非」とかに相当します。
しかし・・・
もし、会話の中で、「そうではないよ」とか「さにあらず」と言いたい時に・・・この
否定を表す接頭辞の”in-“とか”des-“だけを相手に向かってしゃべってみても何が
言いたいのか一向に通じません。
英語でも”-er”という接尾辞は、”動詞の原形”に付けると「その動詞をする人」の
意味になります。が、「あいつは、それをやる奴なんですわ」とか言いたい時に、
“He is the er.”と(ヒー イズ ジ ア~)か言うと、たとえ前後関係があった
としても訳の分からない言葉になってしまいます。
この”辞”を単語の頭なり尻尾なりにくっつけることを膠着(こうちゃく)さ
せる・・・と言いますが、”辞”を膠着させることは接辞化(afijacion)と言われます。
この「接辞化」によって別の単語を新たに作ることが「派生」と呼ばれるのです。
例)
√語根 + 接尾辞 → √habl- + ado = hablado “話してある、話された”という形容
詞へと動詞から派生します。
あなたは、接頭辞、接尾辞にそれぞれある意味を押さえてから、一つの詞(名詞なり動
詞なりを憶えて)よりどれだけの数の語が派生しているのかチェックすると「語彙力」
がとても拡大されます。
また、辞書にない単語でもある程度の察しはつくようになるのです!
☆合成語(palabra compleja)
合成語には次の種類が見られます。
1)複合語(palabra compuesta)
これは、一つの独立した単語と他の独立した単語を「二個一(ニコイチ)」にして新た
な意味を創り出して、新たな単語として独立させて行くものです。
下の例でもありますが、二語が結合して綴られるもの、ワンスペース空けるもの、ハイ
フンでつなげるもの・・・のタイプが見られます。
特に・・・名詞と名詞を組み合わせる方法は、英語やドイツ語などのゲルマン語では普
通に見られます。が、スペイン語などのロマンス語では、通常、行われません。必ず、
前置詞の”de”(英語”of”)を介して展開されます。
品詞の組み合わせの主なパターン(他にも数例あり):
ア)V(他動詞の第三人称単数形) + N(名詞の対格)
sacacorchos (栓抜き) vendepatria (売国奴)
イ)Adj.(形容詞) + Adj.(形容詞)
agridulce (甘酸っぱい) ruso-japones (露日の ハイフンで結ぶ場合)
ウ)N(名詞の主格)+ N(名詞の主格)
cochecama (寝台車) ciudad dormitorio(ベッドタウン 語と語の間にワンスペー
ス空けるもの)
2)新古典複合語(語幹的接辞)
これは、古典語(ギリシア語)の曲用語尾を除いた部分 =”√名詞語根”で組み立てるもの
になっています。
そもそも、欧米では、日本人が漢籍を習うのと同じように、古典ギリシア語、ラテン語
を学びます。単語そのものは、日本人が”漢語”(漢字ばかりでの表現)を聴いたり
観たりする時に受けるイメージを連想してみてください。
例) crono- + metro (時間 + 計る) cronometro “ストップウォッチ”
crono- + logia (時間 + 理論) cronologia “年代学”
☆略語(acortamiento)
これは、末尾の構成要素の省略を行うものです。
例) bici = bicicleta tele = television disco = discoteca
foto = fotografia
☆かばん語(portmanteau word, blend)
“ポートマントー(旅行かばん)・ワード”→単語の前半の部分と後半の部分を組み合
わせるものです。
例) 英語ではよく見られます smog = smoke + fog
大阪駅ビルの “ACTY OSAKA” は、和製によるかばん語 ( active city)の造語になっ
ています。が、スペイン人は、この手の表現が大嫌いなので、スペイン語ではあまり
見られる新語創造の仕方ではありません。
☆頭文字語(acronimo)
制度や組織名を頭文字で簡略化して一つの単語のように読み上げる。
例) RENFE (Red Nacional de los Ferrocarriles Espanoles)
スペイン鉄道国営網=スペイン国有鉄道のことです
SIDA ( Sindrome de Inmunodeficiencia Adquirida )
→ 英語の Acquired inmune deficiency syndrome から訳されたもの。エイズのこと
です。)
☆略号・略字(SIGLA)
制度や組織名を頭文字で簡略化してますが、続けて読まないで、アルファベットで一つ
づつ読みます。
例) O.N.U (Organizacion de las Naciones Unidas)
発音は、”オヌ”ではなく、”オー・エネ・ウー”と読みます。
☆まとめ
スペイン語(ロマンス諸語に共通しています・・・)は、”分析的”に説明する方法、
即ち、前置の”de”等によって当該の単語をその右側で解説して行きます。
例)英語でよくある “Osaka Airport”とか”Imadegawa Station”とか言った表現方
法ですが、スペイン語では:
“~ de ~”を介するのです。即ち:
Aeropuerto de Osaka →× Osaka aeropuerto
Estacion de Imadegawa →× Imadegawa Estacion
この原則は、必ず守られており、語順では最初の方の単語に意味の重点が置かれている
のです。
英語・独語(ゲルマン諸語)や日本語(の漢語的表現において)は、統合的に横に並べ
る方法であって、それが複合語であれば、すぐに創り易く理解もし易いものです。
しかし、スペイン語(他のロマンス諸語も含めて)は、そうではないので表現と解釈に
おいて注意が必要なのです。
今日はここまで。
Hasta luego.