【第77講】スペイン語文法入門―兵法的外国語学習への誘い―(その55)

いよいよ、文法でも初級というよりは・・・いささか中級になって来るものですが、
スペイン語における”語形成”(La formacion de palabras。英語ではWord formation
といいます)について学んで行きましょう。

実は・・・語形成の知識は、語彙の知識(=単語力)を増やすためには必須項目なのです
が、あまり文法の中では取り上げられることがありません。
今回は、この語形成の基礎(理論面)を習得して行きたいと思います。
語形成の知識・・・これは、”原典”に接する場合、特に時事文などでは新しい事象の
オンパレードになりますので・・・全く辞書にも記載されていない新しい単語(”新
語”)や記者が特定の意図を持って創出した”造語”に出会った時に・・・一体どう解
釈したらいいのか?といった事態の解決法になります。
語形成の理解とは、その言語における「単語の構造」、そして「単語の体系」を知るこ
とにつながっており、さらにその言語についてより深く分析し理解することになるもの
です。
☆スペイン語の単語とは?
先ず・・・スペイン語の単語というのは・・・その起源がラテン語からのものが約90%
以上であり、アラビア語起源のものが約3%、古典ギリシア語起源のものが約1.5%、イ
ベリア半島に古代に土着していた先住民の話していたイベリア語(碑文があり系統不明
とされる)起源のものが約0.6%・・・という説があります。
さらに・・・このラテン語起源の約90%の中には興味深いことですが、昔のゲルマン語
からラテン語に翻訳されて定着した一連の単語(軍事関連の単語です)があるのです。
スペイン語の単語の起源とは・・・文化史というよりは、”軍事史”が主たる原因に
なって構成されて来ている点は誠に興味深いところであります。
☆語形成とは?
人とは、瞬間瞬間、自然時間(後戻り出来ない時間)を以て”生”を送っており・・・
そして、その”生”と共に・・・
環境や条件たる様々な事象も一見不変であって絶対的なものと見えるものの・・・
本当は、様々な事象の底に隠れている”真実”の姿とは、そうではありません。
自分も、自分以外の全ても、共に常に変化をして行くものなのである・・・
このようなことは、戦略、情報、兵法といったことを考える場合には必要不可欠である
のと同じく、言語を考える際にも全く同じことなのであります。
自分以外の世界・・・要するに、環境やら条件やらの変化の中には、今までに見たこと
も聞いたこともないような「ものごと」や「概念」が現れて来て、それらと出会い、
付き合って行かねばなりません。
そして、このようなお初にお目にかかるものごと、あるいは無から有を生じさせたもの
ごと(何も受動的に考えなくても、これは、自分が創造する場合にも当てはまります)
に対し、やはり名前(名称)を付けなければならないのです。
このように”新たなものごと”、”新たな概念”に新しい名前を付けることとは、新し
い言葉の創造をすること=初めて「言語化」ということを行う訳です。
では、この「言語化」ですが・・・
即ち、新しい単語を造り上げて行くことをする=新語を造ることに他なりません。
では、どのような法則に従い展開されているのか?
そして、どのような構造と体系を有しているのか?
これらを知れば、既有の知識(体験と記憶)で新しい知識(未知と無知の克服)を得て
自らの脳の容量と可能性を広げることができるのです。
まさに新しいこととは、古きことを温めて展開されるのです。
☆新しい言語化とは?
新しいものごとや概念が出て来たと言っても・・・
各言語が持っている発音のルール・・・「音韻規則」とか言いますが・・・それに従っ
て新たな単語を”創り上げる”ことは、普通、めったに行なわれるものではありませ
ん。
例えば、仮定としてですが・・・
全く新しいコンセプトで造った小型・軽量・安価で、さほどの訓練も要せず、通常の装
備と共に使用するに労力も無く、時と場所を選ばず、一回の使用で、ある程度の障害物
があっても半径20メートル以内の敵ならば必ず無傷で殺傷することのできる電磁波を
用いる白兵戦用の携帯兵器ができたとしたら・・・
一々、日本語の音韻規則に則り、全く新たに・・・例えばですが・・・「さろひ」とか
「ゆそみま」とかそんな「命名」は行いません。
(→「さろひ」も「ゆそみま」も日本語の音韻規則に従っています。が、これらの単語
の意味は、ありませんね)
では、武器なので、一応、当該分野での慣習的命名である「○○式~」とか・・・
これは普通に考えられることです。が、そういう方法に由らない場合・・・
ア)「既存の語に新たな概念を付け加えて新たな使い方をする」か・・・
イ)「既存の語に”接辞”を加えたり、二つの語を組み合わせたりする」・・・
以上のような方式が取られるのです。
上記ア)の場合なら、所謂、既存の語に新たな意味を加えて用いることです
から・・・
もし、この新兵器が・・・それが投擲兵器の部類で電磁波がランダムに”飛び散る”よ
うなイメージを与えるものならば、例えば「ホウセンカ」(タネが飛び散るところか
ら)とか・・・考えられるかも知れません。
上記イ)の場合なら、所謂、接辞や語と語の組み合わせによる造語ですから・・・
例えば、「ほるべー」→放る+兵衛(人を表す接尾辞)とか、「電榴」(名詞+名詞
の組み合わせ)とか・・・考えられるかも知れません。
もしくは・・・わざと外国語を用いて当てはめる場合もあります。(これは、当該の単
語が自国語で”忌む”場合には、よく起こる現象です。例えば、”便所”→”トイ
レ”、”パウダールーム”)
☆翻訳借入(カルク)と外来語
また、自分のところの言語にない外国の文物を取り入れる際には・・・
ア)自国語に翻訳して取り入れる(翻訳借入。カルクと言われます)
イ)外来語(当該の外国語を自国語の音韻規則に従い取り入れます)
のような二つの方法があります。
明治時代、欧米の文物を取り入れた際には、”漢籍”の蓄積のある幕末維新期の方々が
ドイツ語やフランス語などからかなりの語を翻訳して日本語と化したことはよく知られ
た事実であります。
例えば、”白兵戦”など、旧来の日本語のような感覚ですが、元々は、明治時代に国軍
が健軍され、お手本としたフランス軍の歩兵操典中の”arme blanche”(これはフラン
ス語。スペイン語ではarma blanca →直訳:”白の戦い”→要するに”ひかりもの”を
“白い”という形容詞で表現。blancoという語は、原義的には”キラキラする”という
意味があったと考えられています)から翻訳されたものです。
元々、日本人は、外国の文物を自国語へときちんと翻訳していたのでした(当時の官僚
たちがそのはじめとして・・・)。輸入武器についてもかなり詳細な翻訳がなされてい
ます。
しかし、時代が下るにつれて、翻訳しないで外国語をそのまま”外来語”として定着さ
せて来るようになってしまいました。戦後日本ではかなり広まりを見せ、例えば、情報
処理用語など英語からのオンパレードになっています。これでは、「母国語能力の貧弱
さ」を表すものである・・・とのコメントもなされています。
☆単語の種類
これは、大きく分けて「単純語」と「複合語」があります。
ア.単純語
それ一語で意味が理解できる。また、それ以上、小さな単位に分割できない単語。
(通常、品詞として独立しているものが相当します)
イ.非単純語
要するに・・・”合成語”というものになります。
(該当する品詞は動詞、名詞、形容詞、副詞が主です)
そして合成語は、大きく分けて”派生語”と”複合語”の二種類に下位分類されます。
要するに・・・元ネタになる単語に特定要素を付加することで、新たな単語を作り出し
たり、ある品詞から別の品詞を作ったりするもの・・・と思って下さい。
“新語”というものは、通常、「イ」に相当するものです。
これで理論面は終わりです。次回は、この各個の事例を見て行くことになります。
スペイン語の単語習得が加速しますのでお楽しみに!
今日はここまで。
Hasta luego.