【第70講】スペイン語文法入門―兵法的外国語学習への誘い―(その48)

あなたが前回から直面している「接続法」とは・・・スペイン語の文法での最後の
山場です。この接続法ですが・・・英語でなら仮定法、フランス語やドイツ語でも接続
法という名前で文法では最後に習うところです。

この接続法を、後、二~三回ぐらいで終わることになっています。その時には、柳の
淡い緑色が目に冴えて、桜の花も待ち遠しくなる頃でありましょう・・・
次回(接続法の用法の後半を含む)あたりには、あなたがスペイン語の文法では英語
と違ってともて”ややこしい”と感じた「動詞の活用語尾」について・・・その本質を
もう一度観察し、”原典”から直接理解できる手助けを講じておきたいと思います。
では・・・今回は・・・前回で学んだ接続法の”基本的発想”と”接続法の活用の
やり方”に続いて「接続法の用法」(前半)について学んで行きましょう。
接続法の意味を汲み取るためにゆっくりと進みますから、じっくりと味わってくだ
さい。
あなたは、前回で接続法の戦略的な側面を習った後で、今回で戦術的な側面を習い、
もう一度、次回あたりで”おさらい”をすることで、同時に両面のバランス(調和)が
身につくのです。
一見、難しそうな印象を受ける接続法ですが、次に提示する主なる”4つの用法”が
基本となっています。即ち:
ア)名詞節
 前回の例で提示したものですが、仮想世界で起こっていることを述べます。
イ)形容詞節
 関係詞と共に用いて、先行詞についての断言を避けます。
ウ)副詞節
 主に熟語や時や条件などを表す接続詞と共に用います。
エ)独立用法
 命令、願望、疑惑など複文ではなく単文で使用されます。
以上です。
それぞれの短い説明は、今、ここを読んでいる時点では分からなくてもかまいませ
ん。最後までじっくりと読んだら、その後に・・・もう一度”ここ”を再読して見直し
てみると・・・ひとつの「まとめ」になっています!
その中でも、最も時間をかけて理解しておくと”後の3つとも”がとても楽に理解で
きる用法があります。それが即ち、「名詞節」の用法です。
何故なら、(動詞が)直説法(の活用をしていたら・・・)が3次元のリアルな世界
で起こる事象を述べるのに対して、(動詞が)接続法(の活用をしていたら・・・)
は、脳内での仮想のヴァーチャルな世界で起こる事象を述べるものである・・・
よって、動詞が接続法の活用をしていたら、その行為そのものの実体が無い、要する
に発言者の脳内で起こっている話しなので・・・「~したら」、「~かも」などの日本
語に相当するニュアンスが含まれていて、それは、「曖昧」、「無自信」、「非真
実」、「断言回避」、「期待」、「願望」などの言葉が並ぶ・・・凡そストラテジー&
インテリジェンスでは戒める個人的憶測や我欲に基づく”物言い”になっていると思っ
てください。
では、接続法の基本を知るために・・・先ずは、「名詞節」から順番に見て行きま
しょう。
1)名詞節
直訳では「甲ハ、乙ガ~スルコトヲ…スル」の日本語になります。
(公式) 主節 + 従属節
※注意→主節の動詞が他動詞で想いを意味する動詞なら→従属節の動詞は必ず接続法!
    これは、印欧語を話す人たちの論理なのです。
この主節の動詞ですが・・・次のような”想い”の種類で分類ができます。幾つか
代表的な動詞を例示しておきますので、例文も合わせて解読してみましょう。
従属節の中にある接続法の活用の所は[ ]でかこんでおきます。
また、主節の動詞の種類、他動詞で意味が想いを表していたり、話者の判断を述べる
表現の際、接続詞”que”の右側に展開される接続法の活用に注意してご覧下さい。
ア)願 望
desear(願望する), esperar(期待する), querer(欲する),
hacer falta(必要である)
ex. Deseo que [venga] usted al hospital a las cinco.
  ([ ]部が”venir”の接続法です)
(私は、あなたが五時に病院に来ることを望んでいます。=あなた様に五時に来院い
ただきたいのでございます。)
また、英語でのIt is necessary that you should die now.のような無人称でありな
がらも話者の主観を述べる表現もあります。スペイン語では、ser deseable(望まし
い)、ser necesario(必要である), ser preferible(好ましい)などです。
ex. Es necesario que [te suicides] ahora.
(今、君が自殺することが必要なんだよ。)
イ)命 令(=話者の願望を相手に伝えるのが命令です)
decir(・・・が~するように言う)、escribir(・・・が~するように書く)、
hacer(・・・が~することを強いてさせる)、obligar a~ (・・・が~することを
強制する)、rogar(懇願する)、 solicitar(請願する)、mandar(命じる)、
ordenar(命令する)
ex. Te digo que no [vengas] a las cinco.
  (君には二時に来ないように言っているんだよ。)
ウ)許 可・禁 止
perdonar(許す)、prohibir(禁じる)、
oponerse a (・・・が~することを反対する)、
autorizar(・・・が~することを認可する)、aceptar(・・・が~することを認める)、
dejar(・・・が~することを放任でさせる)
ex. El doctor te prohibe que [fumes] muchos cigarros.
  (お医者さんは、君が沢山の葉巻を吸うことを禁じている。)
エ)忠 告・提 案
aconsejar(・・・が~するよう助言する)、plantear(・・・が~するよう提案する)、
recomendar(・・・が~するよう勧める)
ex. Te recomiendo que [dispares] mas de cinco balas.
 (君が五発以上の弾丸を発射することをお勧めするよ。)
オ)感 情
admirarse de(・・・が~することを賞賛する)、sentir(・・・が~で残念に思う)、
estar contento de(・・・が~で満足している)、estar harto de(・・・が~で飽き
ている)、ser extrano(・・・が~のが不思議である)、ser raro(・・・が~で奇妙
である)
ex. Siento mucho que [no puedas venir] a las dos.
 (君が二時に来ることができないので残念だ。)
カ)価 値 判 断
※動詞は第三人称・単数のみで活用します
bastar(・・・が~で十分である)、convenir(・・・が~することが都合がよい)、
estar bien(・・・が~することが良い)、 ser importante(・・・が~することが
重要だ)、ser interesante(・・・が~することが興味深い)、
ser logico(・・・が~することはもっともだ)、ser mejor(・・・が~する方がよ
い)、ser malo(・・・が~する方が悪い)
ex. Basta que [digas] la verdad. (君は、本当のことを言うだけで十分だよ。)
Es mejor que [vuelvas] a casa pronto (すぐにおうちに帰った方がいいよ。)
キ)疑 惑
dudar(・・・が~することを疑う)、ser dudoso(・・・が~することは疑わし
い)、ser posible(・・・が~するかもしれない→起こる/起こらないの確率二分の
一を述べる:可能性)、ser probable(・・・が~することがありうる→最初から起こ
ることを前提として述べる:蓋然性)
ex. Es posible que [hayan muerto] ya Julio y Ana en no se que lugar.
※haya(haber)+過去分詞(morir) =”接続法現在完了”、ya もう、
no se que lugar どこか知らないところ
(フリオとアナはどこか知らないところで死んじまっているかも知れないよ。)
ク)否 定
no creer(・・・が~であるとは思わない)、no decir(・・・が~とは言っていな
い)、no estar de acuerdo con(・・・が~であることと同意しない)、
no saber(・・・が~であることを知らない)、no parecer(・・・が~であるに
思えない)、no ser cierto(・・・が~であることは確かでない)
ex. No creo que [digas] la verdad.(君が真実を口にするとは思っていないよ。)
※しかし・・・もし、”肯定”ならば・・・直説法で言うのが「スペイン語の論理」
なので従ってください。何故なら、かくあることを3次元の世界で実現することを信じ
ているのが根底にあるからです。
ex. Creo que [dices] la verdad. (君が真実を口にすると思うよ。)
2)形容詞節
名詞(先行詞と言います!)の情報を増やす働きをする関係代名詞・関係副詞・関係
形容詞等の「関係詞」と共に使用します。大きく次のようなパターンに分類することが
可能です。
ア)先行詞が不定(架空、未だ実現していない)
ex. …un coche que [busques]…(君が探し求めているヨウナ自動車)
イ)先行詞が否定(否定=主観を述べるのです)
ex. No tengo ningun hermano que [sea] medico.
(医者をしているような兄弟は誰もいないですよ。)
ウ)先行詞が最上の表現(最上=話者の一者択一の主観を述べるのです)
ex. El mejor vestido que [haya] en la tienda…(店にある最高のドレス)
ここでは、接続法を関係詞と共に用います。接続法の本質は・・・仮想の世界で生起
する事象を述べるのですから、実体が無い・・・というものでした。故に、「某ガ~ス
ルヨウナ名詞」という物言いになります。
即ち、”名詞=先行詞”について話者の「想」を入れて名詞に関する情報を増やして
行くことなのです。
“先行詞”の前には「不定冠詞」が置かれ、接続法と共に用いられることで、先行詞
に関する情報は増えるものの、その確実性、自信、真実度、可能性などにおいて曖昧な
意味を含んでいます。
よって・・・先行詞についての断言や確定をしない、あるいは回避する際に用いるの
です。
ex. Busco una secretaria que [hable] ingles.
(英語を話すような女性秘書を求めています。→女性秘書の条件付けがゆるく設定さ
れています。)
※もし、直説法で言うと、きちんと英語の話せる秘書を求めていることになります。
ex. Busco la secretaria que habla ingles.
(英語を話せる女性秘書を求めています。)
→女性秘書の条件がハッキリしています。
今回は、名詞節、形容詞節の前半二つを終了します。
次回は、後半、副詞節(これがいろいろと一杯あるのです)、独立用法、そして
「まとめ」を学んで行きます。お楽しみに!