日の丸父さん(23)「防衛産業」 石原ヒロアキ

日の丸父さん

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はじめに

防衛産業はとても重要な産業分野だと思うのですが、実態がほとんど知られていませんし、武器を扱うということで負のイメージがあるようです。
ある防衛に関するTV番組で、女性タレントが「日本も武器をつくっているんですか?」としかめ面をしながらコメントしていたのを見たことがあります。
そうかと思うと、ある大手防衛産業の研究所を訪問した時、新卒の女性技術者がいたので、「なぜ防衛部門にいるの?」と聞いたら「大学生の時、魚雷に興味を持ち研究したいと思ったから」と回答されて驚いたことがあります。
彼女のような兵器マニア並みの知識は必要ないと思いますが、防衛関連ニュースの内容がある程度理解できるくらいの常識は必要ではないでしょうか。

防衛産業

 
 防衛産業とは、わかりやすく言えば自衛隊が購入する装備品などをつくり、納めている産業分野です。一般的には日本国内の会社を指し、大手でいえば三菱重工、川崎重工、IHI、三菱電機などがあります。
 防衛産業の著作に関しては、桜林美佐著「誰も語らなかった防衛産業」(並木書房)があり、最近の防衛産業の実情に関しては「防衛産業に関する取組」(防衛装備庁 装備政策部 平成28年6月15日)がネット上で閲覧できますので、興味のある方はこちらを見ていただくと、防衛産業は安全保障上いかに重要でかつ危機的状態にあるかがよくわかります。
 私は補給統制本部という調達を実施する機関に化学部長として3年勤務して、装備行政実態を身近に見てきましたので、そこで感じたことを少し紹介したいと思います。
 装備品は買って終わりではありません。なかには十数年以上使用するものもあり、壊れた部品を交換したり、整備する必要があります。そのためには維持費という名目で予算をとり、調達をする必要があるのですが、その額が毎年足りません。そうなると何年もかけて少しずつ整備することになり、企業側に負担をかけることになります。
 つまり専門の技術者にかかる人件費に比べて、調達額が低いので、防需依存度の低い会社(防衛装備品よりも民生品の売り上げが高い会社)は撤退しかねないということです。
 最悪の場合、装備品は特殊な器材なので、どこもやり手がなくなり、装備品がさびて使えなくなるというケースもありえます。こういう話は部長のときに何度もありました。ここは社長さんの防衛に対する強い心意気に期待するしかありません。じゃあ輸入すればいいじゃないかという話もありますが、ことはそう簡単ではありません。
 輸入品は単価にしても、維持費にしても、ものすごく高いのです。AH64アパッチ攻撃ヘリコプターのコストが戦闘機以上にかかりすぎて、62機整備予定が13機で終わったのは有名な話です。
 戦車の場合、日本の90式戦車は10億円近くしますが、アメリカのM1A1エイブラムスは4~5億円で米軍が調達しています。しかし、もしM1A1を日本が輸入するとしたらおそらく10億円は軽く突破するでしょう。日本向けに仕様を変えたり、改造費を上乗せしたりといろいろあるからです。
 とにかく輸入は、こちらの足元を見られて高額なものをつかまされる可能性があります。しかしどうしても国内にモノがなくて輸入せざるを得ないものがあります。化学では、化学・生物剤検知器などがそうです。国内需要が自衛隊や警察、消防など限られていて採算が合わないからです。輸出できればまた違ってくるでしょうが……。
 また、防衛産業が振るわない理由の一つに、武器輸出三原則に加えて防衛装備品に対する風評被害という問題もあります。あるとき、あるメーカーに「あなたのところの技術があれば、検知器をつくることができるのではないですか?」と聞いたら、「化学兵器や生物兵器という名称がついた製品を扱っているというだけで、会社にマイナスイメージがついて売り上げに影響が出ます」と返ってきました。
 これに似たような話があります。最近の日本学術会議総会で、科学者は軍事研究を行なわないという声明を出しましたが、まさしくこれは軍事研究イコール悪というイメージが今でも払拭できないからでしょう。自衛隊は必要だが、彼らが使う装備研究に関しては協力しないとは、現在の安全保障の実態をまったく理解していないと言わざるを得ません。
 防衛産業は安全保障を支える大きな柱の一つです。ある防衛産業の工場を研修に行ったときのことです。年配の方が、手作業で装備品をつくっているのを見ました。後継者のメドは立っていないということでした。現場の技術は保全上の問題もあり、多くのものが共有できません。その技術は細々と受け継がれていきます。彼らがいなくなったとき、日本の安全保障はどうなるのだろうとやや背筋が寒くなるのを覚えています。
(いしはら・ひろあき)
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『日の丸父さん(1)』(1~12話)
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【著者紹介】
石原ヒロアキ(ペンネーム)
1958年、宮城県石巻市生まれ。青山学院大学卒業後、陸上自衛隊入隊。第7化学防護隊長、第101化学防護隊長を歴任。その間地下鉄サリン事件、福島第1原発災害に出動。2014年退職。学生時代赤塚賞準入選の経験を活かし、戦争シミュレーション漫画『ブラックプリンセス魔鬼 全10巻』(電子書籍版)を発売中。『漫画で学ぶサイバー犯罪から身を守る30の知恵』(ラック サイバー・グリッド・ジャパン・並木書房)の漫画を担当。家族3人(一女)。本名:米倉宏晃。
『ブラックプリンセス魔鬼』
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※最近「石原ヒロアキまんが館」(URL:http://okigunnji.com/url/97/)
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ここには、化学学校ホームページで掲載中の4コマ漫画『CBRNロボタマ子さんが行く!!』を毎週1話ずつアップしていきます。
このホームページは部内用なので普通閲覧できませんが、CBRN(シーバーン)の啓蒙も兼ねて化学学校の許可を得て掲載しています。ぜひご覧ください。

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