みぞろぎ梨穂(著)『約束の大地-想いも言葉も持っている―』

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芸術は魂の叫び、という言葉をよく耳にしますが、「名実ともに確
かにそうだなあ」と感じたのは、岡本太郎さんただ一人でした。
しかし、この人の詩を読んで人生二度目の「芸術」を感じました。
魂をわしづかみにされたのです。
彼女は超一流の詩人です。
著者のみぞろぎ梨穂さんは重度の脳障害をお持ちで、言葉を発する
ことができません。
たとえことばを発することができなくても、魂は確かに想い・言葉を発し
ている。本著はそのことに痛いほど気づかせてくれました。
言葉を発することのできない彼女の魂が発している想い・言葉を、一緒
になって丹念に紡ぎあげてきた研究者、それを支えたお母さんやご
家族、周りのすべての人々の愛の記録。それがこの本です。
みぞろぎ梨穂さんの詩は、魂をわしづかみにする「芸術」です。
透徹した深い思索から生まれる哲学、興味深いストーリー、想像も
できない視座、空気と色が伝わってくる言葉の組み合わせ・・・
版元の社長さんの言「魂を持っていかれた」は大げさでも何でもあ
りません。
当初は、彼女の詩をまとめた本なのかな、と思って読み始めましたが、
内容は、
「東大名誉教授矢作先生のまえがき」
「梨穂さんの言葉を紡ぎだした國學院大學柴田先生のことば」
「詩」
「梨穂さんの日記」
「梨穂さんのおしゃべりの記録」
「梨穂さんのと柴田先生の対談」
「きんこんの会(コミュニケーションに困難を抱える人たちが集ま
る会)に参加したときの記録」
「梨穂さんのお母さんからの言葉」
というもので、梨穂さんのことばで埋め尽くされた本という印象です。
全部で214ページ。
この種の本を初めて読む人にとって非常に読みやすい構成・ボリュー
ムと感じます。
キーマンの一人、國學院大學の柴田先生は梨穂さんの魂が発してい
る想い・ことばをこの世に紡ぎだしました。この方の存在の大きさ。
家族に与えた計り知れないほど大きな希望、は言葉ではいい尽くせ
ません。このメソッドがより広く世の中に普及してほしいものです。
梨穂さんからことばを紡ぎだす手伝いをした先生方は、彼女の魂が
のびのび成長してゆく過程をいっしょに楽しまれたのではないか?
と推察します。そういう良い雰囲気が伝わってきます。
掲載されている詩には、
ある施設で起きた大量殺人事件を受けて作られた
「やまゆりの涙」「やまゆりよ永遠に咲け」
枯葉が発するいろいろな音を感じさせてくれる「枯葉のダンス」
読む人すべての魂にエネルギーを注いでくれる「未来」
人生の十字路にいる人への応援メッセージ「私の生きる意味」
などがあり、魂をゆさぶる作品が粒ぞろいです。
私が一番好きな詩を紹介します。
<人間の尊厳
小さな希望がこの病院でうまれた
人はまだまだ美しい心を失っていないということが理解できて
私はおのれのふがいなさを恥じた
遠い山奥にひっそりとろうそくのあかりがともっていることを
世の中の人は誰も知らない
昔から私がわがままに考えてきたことは誤っていた
理想はすでにこんな山奥で叶えられていたのだ
山奥にがんばる人が何一つ求めることのない謙虚さで
忍耐強くがんばっていることに世間は気づいていないけれど
人間の尊厳をここに見た
(2016・01・07)>(P82-83)
柴田先生は本著で、
<言葉がないとされてきた人々にも深い思いがあるという事実を明
らかにすることによって梨穂さんは歴史を書き換え、この世界に理
想を育もうとしているのです。・・・私もいつか、梨穂さんととも
にその約束の大地に立つ日が来ることを夢見ています。>
と書かれています。
人生の岐路に立ったとき、どの道が正しい道かはすぐに判断できます。
しかし私たちの多くはその道を進みません。辛く苦しい困難な道だからです。
梨穂さんとご家族も岐路に直面しましたが、
正しい道を選びました。真の人間を形成する信念の道です。
梨穂さんたちの旅を続けさせてあげましょう。価値ある旅路です。
彼女の未来は、仲間の人々とご家族、そしてこの物語を知ったあなたの
手中にあります。
価値ある未来です。保証します。
彼女と仲間たちを守ってあげてください。愛情を持って。
いつかそのことを誇れる日がきます。
約束の大地-想いも言葉も持っている―
みぞろぎ梨穂(著)
青林堂
H29.3.10発行
http://amzn.to/2oFb0U6
エンリケ

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