商婦と正しく呼べば日韓が名誉回復 (大礒正美)

国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.163
    by 大礒正美(国際政治学者、シンクタンク大礒事務所代表)
平成24年10月21日
          商婦と正しく呼べば日韓が名誉回復
 日韓合併時代の朝鮮民族は「日本の奴隷」だった、と中国が公式に確認した。国連総会の一般演説で、揚けっち中国外相が事実上、そう想起させたのである(9/27)。
 この演説で中国は初めて、日本が尖閣諸島を「盗んだ(stole)」と非難して世界に衝撃を与えたが、これはポツダム宣言が追認した「カイロ宣言」(1943年8月1日)にある文言を、突然持ち出したものだ。
 いわゆるカイロ文書は英米中の三首脳(中は蒋介石・中華民国総統)が合意して発表したが、署名した原本がなく、英国は後に存在を否定したという経緯もある曰く付きの歴史的文書だ(平成17年7月30日コラムに詳述)。
 この文書では「日本国が清国人より盗取したる一切の地域 (all the territories Japan has stolen from the Chinese) を中華民国が回復すること」とあり、現在の中国首脳がこの表現を世界に思い出させると同時に、自分たちが英米側すなわち国連を創設した連合国の一員であることを、強く印象づけようとしたことは明らかだ。
 しかしカイロ宣言には、続けて朝鮮に関する一項があり、そこでは「三大国は朝鮮の人民の奴隷状態に留意し(mindful of the enslavement of the people of Korea) 朝鮮を自由かつ独立のものたらしむるの決意を有す」と書かれている。
 この文書を日本が受け入れて降伏したことにより、歴史上の事実として、朝鮮人民は日本の「奴隷だった」と確定しているのである。後に独立した大韓民国と北朝鮮が、改めて異議を唱えたという形跡はない。
 これは、面白い展開になったものだ。中国は日本の尖閣領有権を否定する根拠に困り、誰かの淺知恵で戦勝国の論理を持ち出したのだろうが、それが同時に韓国を日本の奴隷とした歴史を思い出させる効果を生んでしまった。
 この失敗に中国は気づいているだろうか。
 韓国政府は青くなっただろうが、もちろん知らないふりを続けるだろう。日本政府やメディアは、まだ気づいていないようだ。
 韓国民(北朝鮮を含む)が日本の奴隷制の下にあったこと、すなわちアメリカの歴史にあったような奴隷(スレイブ)だったと米英中が断定していたということを、現在の韓国民は決して受け入れないであろう。
 しかし韓国民にとって都合の悪いことに、日本を糾弾し侮辱する材料としていわゆる「慰安婦」問題を世界に売り込み、その英訳を「comfort women」から軍の性奴隷「military sex slaves」に悪化させることに、ほぼ成功したところだったのだ。
 奴隷という言葉に敏感な米国議会や国務省では、sex slaves がもはや普通に使われ、知日派の代表として知られるアーミテージ元国務副長官ですら、何の疑問もなく「従軍慰安婦=強制的に日本兵の慰みものにされた朝鮮少女」という情報工作にはまっていることが明らかになった(日経インタビュー、8/25)。
 そういうタイミングに中国の情報工作で、朝鮮人民が日本の奴隷だったとする戦勝国側の認定がよみがえると、「そうか、やっぱり婦女子だけでなく全部が奴隷だったんだな」という認識がいっぺんに世界に拡がることになるだろう。
 これは、はたして韓国民が望んだことだろうか?
 中国がカイロ宣言に言及すればするほど、朝鮮民族は奴隷民族だったと浮き彫りにされることになる。中国も無傷では済まされない。戦勝国とは現在も存在する中華民国であり、共産党独裁の大陸政権ではないこと、またその両政権とも清国の後継者ではないという事実が表面化する。
 中韓ともに「天に向かって唾する」という警句が現実になったと知るべきである。
 そこでまず日韓の間で、慰安婦という日本で作られた婉曲表現をやめ、新たに「商婦」と呼ぶことを提唱したい。
 これは当コラムの新造語だが、説明の必要はないくらい一目瞭然であろう。
 かつて英国のチャールズ皇太子がスピーチで、自分のことを「世界で2番目に古い職業の一員」と紹介して笑いを取った。いうまでもなく「世界で最も古い職業が何か」は常識であることを前提にしている。
 西欧の一部では個人の職業として誇りを持ち、組合まであるという話を聞くが、世界的には客に対して「親に売られた」とか「騙されて連れてこられた」と、自分を被害者に仕立てるのが一般的だろう。
 客もそれに話を合わせることになっている。古典落語や明治文学、江戸文学などではおなじみの世界である。
 個々の商婦の事情は千差万別だから、同情する人は心に寄り添う努力をするしかない。それを政治的に利用しようとすれば自分に跳ね返ってくる。
 なぜ日本人で元日本軍相手の商婦がひとりも名乗り出ないのか、なぜ韓国側でそういう日本女性を探して共闘を呼びかけないのか。李明博大統領にぜひ訊いてみたいものだ。
 韓国政府は国連の場で、人道問題として日本を厳しく糾弾しているが、韓国軍兵士がベトナムに残した数千人の混血児が、韓国自体の人道問題として浮上してきている。
 そういう問題を回避するために、予め業者を手配して管理した旧日本軍と比べて、どちらがより「人道的」か、国際社会に広く知らしめる機会が巡ってきた。
 世界最古の職業は、現在過去未来、人類と共に存在し続けるだろう。そういう常識を無視した韓国は、性奴隷という虚構と、民族が奴隷だったという虚構の板挟みとなった。
 どちらをとるかではなく、両方を否定するしかないのである。歴史を捏造し続けた結果、天罰が下ったのだと謙虚に受け止めてほしい。
 未来の韓民族のために、商婦を正しく評価しようではないか。
(おおいそ・まさよし 2012/10/22)
「国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.163」より
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/5562/column/latest163.html

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