新COP建設:フランス外人部隊・日本人衛生兵のアフガニスタン戦争 Vol.23

2019年8月3日

From:野田力
件名:新COP建設
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軍事情報特別連載
 フランス外人部隊・日本人衛生兵のアフガニスタン戦争 Vol.23
陸上自衛官を志すも挫折。自分が立派な兵士になれることを証明するため
渡仏し、外人部隊への入隊を果たした衛生兵が、最前線で体験した
アフガニスタン戦争の実像をお伝えします。
2012年(平成24年)8月13日(月)
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□はじめに
 8月7日のことです。
アフガニスタンのカピサ州で、フランス兵が1名戦死しました。
仏軍のアフガン戦争における戦死者はこれで88名となりました。
なお同じとき、1名の看護官も負傷しました。
 仏軍戦闘部隊の撤収が始まり、FOBトラから完全に仏軍部隊が
いなくなった矢先の出来事でした。撤収は徐々に進んでいますが、
戦争は終わったわけではありません。まだ仏軍はアフガニスタン
で戦っています。
 さて、連載にまいりましょう。今回は新たにCOPを建設するための
作戦に出発します。「COP」や「FOB」や「ADU」など、略語が増えて
きて申し訳ないのですが、ここで少し用語説明を加えます。
COP=Combat Outpost 前哨砦
FOB=Forward Operating Base 前方作戦基地
ADU=Adjudant d’Unite 中隊曹長、最先任下士官
VAB=Vehicule de l’Avant Blinde 前面装甲車(フランス軍の主力兵員輸送車)
それではどうぞ。
▼新COP建設
 村に車両で近づき敵の反応を見る作戦から1週間が過ぎたころ、
再び同じ形で村に近づく作戦に出動することとなった。
今回は、我々第3中隊の後方を工兵部隊や輸送部隊の装甲車、
トラック、ブルドーザーなどの車両が横切る。
 作戦の目的はタガブ谷の東端に新たなCOPを建設することだ。
工兵・輸送部隊が攻撃を受けることなく、谷を北上し、建設工事を
実施できるように、第3中隊が盾となるのだ。COPロコから第2中隊
も参加する。
 前回の作戦と同じように、未明に我々の車列はFOBトラを出た。
途中から暗視装置を使い、無灯火で車両を操縦し、配置についた。
配置は前回とほぼ同じで、戦闘小隊や中隊長、副中隊長のVABが
谷の西側にある村に面して、横一列で潜む敵と対峙し、我々衛生班は
ADU班や車両整備班と少し後ろで待機だ。
 明るくなるころには配置につき、次の動きを待った。敵が撃って
くるのが先か、COP建設隊が通るのが先か。今は、とにかく待つこと
しかできない。実戦というのは、何もしない待ち時間が本当に多い。
 数時間後、動きがあった。建設隊の通過だ。私のいる位置から、
数百メートル東側の道路上を、トラックや装甲車が走っているのが
見える。オリーブグリーン色のブルドーザーもトラックに運ばれる
ことなく、自力で走っている。キャタピラが「トラックの速度に
負けるな」と言わんばかりに忙しく回転しているのを見て、心のなか
で声援を送った。
 建設隊の車列が走っている道路はタガブ谷の南東から北へ向かって
延び、途中で西へと曲がり、谷の真ん中あたりで再び北へ向かって
延びている。そのまま、ずっと北上すれば、別のフランス軍部隊
「タスクフォース・ブラックロック」のいるFOBタガブにたどり着く
だろう。
 私の位置からは見えなかったが、建設隊はその道路が西へと曲がる
ところで道路から外れ、荒野を北東方向へ数百メートル進み、
東端の山のふもとまで移動した。どうやら、その辺りには第2中隊が
いるようで、彼らが建設現場の警護を担うらしい。
「ブラック3、コンタクト!」
 敵が撃ってきた。
遠くで乾いた連射音が響き、第3小隊小隊長の声が無線から流れた。
ブラック3は第3小隊を表す。ブラック1なら第1小隊だ。
 建設隊車列が目的地に到着してから撃ってきたということは、
きっと敵はCOP建設の計画を知らないに違いない。
 第3小隊の連中が応戦する銃声が聞こえる。そんななか、私は
彼らの後ろのVABのなかでじっとしている。もどかしい。どんな
戦闘になっているのだろうか?
 後で第3小隊の仲間に聞いたところ、興味深いエピソードを話して
くれた。
 土壁に囲まれたアフガンの伝統的な家屋を「コンパウンド」と
国際部隊は呼んでいるのだが、村の端に位置するコンパウンドから
敵は発砲していた。第3小隊のVAB群は村から約600mまで距離を
縮めている。
 何人かがコンパウンドに向けて発砲した。
敵を狙い撃つというより、敵をコンパウンドのなかに封じ込め、
撃ってこられなくするための牽制だ。FAMASやMINIMIの5.56mm弾から
ブローニングM2の12.7mm弾まで、派手に撃ち込まれた。
 第3小隊の狙撃兵、ベラルーシ人のヴェラメユー伍長とスロバキア人の
ドルニック一等兵はFRF2狙撃銃とともにVABを降り、少し離れた
ところの、荒野がやや隆起した地点にスリーピングマットを敷いて、
伏せた状態からFRF2に装着された8倍スコープで敵を捜した。
 ドルニックが村の端の低い土壁越しに銃を構える敵を見つけ、
ヴェラメユーに伝え、発砲した。外れた。ヴェラメユーが続いて
発砲する。外れた。再びドルニックが撃つ。外れた。
 やがてその敵は2人に気づき、2人に向けてセミオートで発砲を
始めた。フルオートではない。敵はAKを連射する傾向にある。
ドラグノフ狙撃銃を使用していたのだろうか。
 敵弾も2人に当たらなかった。引き続き2対1での撃ちあいが続いた。
ドルニックたちは2人で合計30発ほど撃ったが、結局互いに1発も
当たらないまま、敵は壁の陰に入り、姿をくらました。
狙撃手というと「One Shot, One Kill」とか「One Round, One Kill」
という一発必中のイメージがあるが、今回はイメージダウンとなって
しまった。そういうときもある。2人は引きつづき、村を監視をつづけた。
 銃撃戦がやみ、ミラン班を指揮する軍曹が無線で中隊長に言った。
「敵グループの潜むコンパウンドを視認。ミサイル発射の許可をください。」
中隊長が言う。
「敵が武器を持っているのが視認できるか?」
「ネガティフ(いいえ)。」
「撃つな。」
 敵が数名、そのコンパウンドに隠れているのは確実なのだが、
武器までは見えないのだ。敵が武器を持って入るのが視認されたと
しても、ミサイルを発射する時点で、武器の有無が確認できなければ、
発射許可がおりないようだ。
 もしかしたら敵はすでに銃をどこかに隠し、今は非武装かも
しれない。そうなると、民間人と区別がつかない。別の言いかたを
すれば、非武装なら民間人と見なさなければならない。この原則を
無視すれば、民間人誤射を招き、タガブ谷の住民たちを敵に回して
しまうかもしれない。非常に難しいところだ。
 少しして、ふたたびミラン班の軍曹が無線で言った。
「敵の武器を視認。発射許可をください。」
 よし!今度こそ撃て!私は心のなかでそう叫んだが、中隊長は慎重だった。
「周囲に一般人はいないか?」
中隊長の質問に、ミラン班ではなく、35RAPの観測班が答えた。
「3人の子供が見える。」
「撃つな。」 
 またしても撃つことができない。しかし当然だ。子供を巻き添えに
することは絶対にできない。敵はそういう事情を知ったうえで、
子供たちをコンパウンドの周辺に立たせているにちがいない。
そうでなければ、村人は老若男女、戦闘中に屋外にいるはずがない。
「人間の盾」だ。
 無線を聞いて私がくやしがっていると、上空に米空軍のF15が現れた。
まさか空爆はしないだろう。私は実のところ、航空機の火力について
よく知らないが、この村みたいに家屋が集中している環境で、空から
投下するような爆弾は威力があり過ぎるのではないかと思う。民間人
が巻き添えになってしまう。
 やがて、F15は300mほど上空を、谷の西から東へと飛行した。
そして村の上空にさしかかったとき、“ポポポ・・・”とフレアを
何発か発射した。明るい火の玉が白い煙の尾をひいて降下し、やがて
空中で消滅した。
 フレアに殺傷力はないが、敵は恐怖を感じたはずだ。ミラン班から
無線が入る。
「コンパウンド周辺から子供たちが立ち去った。発射許可をください。」
子供たちもフレアに驚いたようで、うまい具合にコンパウンドの敵は
「人間の盾」を失った。さて、中隊長はなんと言う?
 しばらく間があいたあと、中隊長の指示が無線から聞こえた。
「発射を許可する。」
(つづく)
(野田 力)
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● 著者略歴
野田力(のだ りき)
1979年9月 近畿地方生まれ。
阪神大震災における自衛隊の活躍を描いた書籍を読み、陸上自衛官を志すも挫折。
自分が立派な兵士になれることを証明するため渡仏し、外人部隊への入隊を果たす。
2005年3月 基本訓練ののち、希望していた第2外人パラシュート連隊に配属され、コル
シカ島に駐屯。
2005年4月 パラシュート課程修了。
2005年5月 第3中隊(水路潜入専門)第3小隊配属。歩兵訓練修了。ミニミ軽機関銃射
手を担当。
2005年10月 対戦車ミサイルERYX(エリックス)課程修了。同ミサイル射手を担当。
2005年12月 水路潜入課程レベル1修了。
2006年2月~6月 アフリカ・コートジボワールに派遣され、治安維持作戦に従事。
2006年12月 衛生兵課程修了。小隊の衛生兵となる。
2007年3月 水路潜入課程レベル2修了。
2007年4月 装甲車VAB(ヴァブ)免許取得。
2007年6月~10月 アフリカ・ジブチに派遣され、砂漠訓練等を受ける。
2008年2月 伍長昇進。
2008年9月~2009年1月 アフリカ・ガボンに派遣され、ジャングル訓練等を受ける。
2009年7月14日(フランス革命記念日) パリのシャンゼリゼ大通りの軍事パレードに参
加。
2009年12月 上級伍長昇進。
2010年1月~7月 アフガニスタン派遣。国際治安支援部隊活動。
2011年4月 除隊。
2011年6月 帰国。2012年春から看護学校に入学。経験・特技を活かし、国際医療・災
害医療の看護師を目指す。
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■兵頭二十八さんの問題意識
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広く皆様のお知恵をあつめたいものと念じております。>
(兵頭二十八さん)
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