戸島国雄 「似顔絵捜査官001号」


「おい、お前。いつも俺たちの後ろに立っているけど、後ろに立たれると描きにくいんだよ。ジャマだ。どこかほかに行ってくれ!」
「すみません。俺も似顔絵が大好きで、ここで絵の勉強をしたい。そうだ、俺の顔を一枚描いてくれませんか」
そう私が言うと、絵師は手を止めるとツバを吐き、野良犬を追い払うように、「お前のようなプー太郎を描いてもしようがない。仕事がなくて俺たちみたいな絵を描く仕事をしたいのか。でも、それは無理だな。早くどこかに消えな」
彼らに邪険にされても私は諦めなかった。その日から、当直明けの日は、雨が降らない限り、必ず上野公園に通った。・・・・(P55~56)

科学万能の錯覚にまみれた時代。
似顔絵なる、アナログもアナログ、江戸時代の人相書に相当する捜査技能が再評価され、正式に復活しました。
あなたはこのことをどう感じますか?
モンタージュという言葉を聞いたことがあると思います。
科学捜査の粋のような、犯人の顔を再現する装置でした。
しかし結局、モンタージュは似顔絵にその座を奪われたのです。
「警視庁似顔絵捜査官001号」は、似顔絵捜査という分野の魁として突っ走ってこられた頭号似顔絵捜査官・戸島国雄さんの手になる書です。似顔絵捜査で解決した事案を中核に、戸島さんの警官人生を振り返るとともに、氏がかかわった歴史的大事件の裏に隠されたエピソードもあれこれ紹介されてます。
「似顔絵」と聞くと、なんとなく暇つぶしがてらの手なぐさみイメージがあります。ところが本著を読むと、そのイメージは粉々に粉砕されます。実は奥深いもので、生涯を捧げる甲斐のある仕事であることがよくわかります。
また、非日常のできごとに遭遇した人間の記憶や発する言葉が、いかに不安定なものか。とか、ひどい目にあったはずの女性が示すとても不思議な心理など、対人コミュニケーションに活かせるヒントが満載です。
本著69ページから70ページにかけて書いてある「戸島国雄 似顔絵描きの11か条」のうち最初の五か条をご紹介します。
1.証言者の言うことをよく聞く
2.証言者に勝手な犯人像を植え付けない
3.絵を描くときは相手と正対せず、少し斜めの位置で描く
4.雑念を払い、「無」の気持ちで描く
5.最初に犯人の全体像をつかむ
6.時間をおいて・・・
おっと。6まで書いちゃいました(途中ですが)。笑
6.以降は本の中で確認なさってください。
私が感じるに、似顔絵捜査のキモは、「似顔絵捜査官が、目撃者、被害者とのコミュニケーションをいかに上手にはかるか」ということなんでしょう。絵を描く技術よりこちらのほうが重いのかもしれません。ひとの心を深く理解し、交流できる人間でなければ、似顔絵捜査官として不適格なのかもしれませんね。
一警官の単なる自伝ではなく、人の深い心理を探り、それに対処することが求められる「事件捜査」の一端をつかめます。あわせて、ひとの心の不可思議さを現実の事例を通じて学べる、非常に興味深く、面白珍しい人間学の教材でもあります。昨日ご紹介した「タイに渡った鑑識捜査官」とともに、たくさんの人に目を通していただきたい作品です。
では、「似顔絵捜査官001号」の内容をご紹介しましょう。
★もくじ
はじめに
1 蒲田警察署勤務
 「七人の刑事」にあこがれて
 新米巡査の初検挙
 金庫破りの常習犯逮捕
 列車踏切事故に初めて出動
 刑事課の忘年会
 青森まで指名手配犯を護送
 雪の日の指紋採取
2 似顔絵との出会い
 初めての即興似顔絵
 似顔絵の特訓
 陛下と署長のツーショット
 上野公園の似顔絵師たち
 「イラン人が食えて日本人が食えないわけがない」
3 独学で似顔絵を始める
 似顔絵描きの11か条
 身元不明の遺体を復元する
 防犯カメラの映像から似顔絵描き
 奥多摩の山中で見つかった腐乱死体
 似顔絵で初の逮捕
 人の記憶はどれだけ信用できるか?
 自分の似顔絵が描けない
 似顔絵に追い詰められた犯人
 すぐにバレた狂言強盗
 大先輩から似顔絵の依頼
 機動性を発揮した似顔絵捜査
4 似顔絵捜査官
 老人の目撃証言
 四歳の小さな目撃者
 「刑事さんよりもいい男」
 熟女の見栄とプライド
 似顔絵作成中に犯人逮捕
 霊が教えてくれた犯人
 娘に乗り移った母の霊
 伊豆の島で描いた似顔絵
5 昭和の事件簿
 三島由紀夫割腹事件
 三菱重工業連続爆破事件
 ホテルニュージャパンの火災
 羽田沖飛行機墜落事故
 日航ジャンボ機墜落事故
6 タイ警察派遣
 英語がまったく通じない
 山の民と迎えた最初の正月
 日本人はカモになる
 いかさま賭博に泣いた日本女性
 日本のおばちゃん三人組も騙された
 目撃証言なしの似顔絵
 敬愛する将軍閣下
 無責任な若者
 カオサンロード
 オウム逃亡犯を追う
 事件は続く
 歓楽街の大捕り物
 一枚の契約書に泣く
 接待が事件となった
 似顔絵の女
「あとがき」に代えて
 似顔絵捜査官001号
などなど、現場での実際のできごとを中心に、戦後日本の似顔絵捜査の歴史の概要が一冊で手に入るといってよい、盛りだくさんの内容です。
この本を読み終わるころには、あなたは似顔絵という捜査手法を通じ、事件の当事者という極限の状況下で、人間はどういう心理状態になるか、そういう状況で相手とコミュニケーションをとって成果を出さねばならない似顔絵捜査官の姿を知ることで、人と人のコミュニケーションの何たるかがわかるようになるでしょう。
それでもあなたはこう思うかもしれません。
そもそも自分にとって警察の捜査話など何の関係もないし使えないんじゃないの? と。
実際のところ使えるか使えないかはあなた次第でしょう・・・
もしあなたがどうせ何も手に入らないだろうと、最初から諦めていれば何をやっても上手くいかないでしょう。
しかし、あなたが似顔絵捜査の歴史を身につけ、ニュースでよく見る事件を見る目が変わり、自分の人生に応用して成果を出し、プライベートも満足あるものにしたいと思うなら、この本の中に書いてある戸島さんの経験・テクニックは宝の山に見えるでしょう。なぜなら人間というのは毎日がコミュニケーションの連続で、ビジネスでの営業や商談、会社の面接、異性との付き合いなど人生の全ては相手とのコミュニケーションの連続だからです。
ですので、コミュニケーションの何たるかがつかめた人は仕事でもプライベートでも臨む人生を手に入れることができます。逆につかめない人はいつも人から避けられ、妥協を強いられ毎回不利な条件を飲んでしまって余計な仕事をたくさん抱えたり、取らなくてもいいリスクを背負わされたりして、不満の人生を送ることになります。
しかし、極限下でのコミュニケーションを当事者と図り、成果を残してきたプロのノウハウを身につけることができればそういった問題はなくなります。
似顔絵捜査のエキスを身につければビジネスや人間関係が上手くいきます。
似顔絵捜査のエキスを身につければ不利な交渉から身を守ることができます。
似顔絵捜査のエキスを身につければ全ての局面で自信を持つことができます。
そして、似顔絵捜査のエキスを身につければ人生が変わります。
そしてこの本はそういう似顔絵捜査のエキスの全てが書かれた極めて中身の濃い一冊です。
(エンリケ)
追伸
オウムの特別手配犯の一人が逮捕されましたね。著者は、オウム事件の捜査にもかかわった方ですよ。
★著者略歴
戸島国雄(とじま・くにお)
1941/1/1 誕生
1960 自衛隊入隊(19歳)。習志野第一空挺団(24期)に配属
1967/6/27 警官になる。中学生時代、冤罪に苦しんだ経験があり、テレビ「七人の刑事」を見て警官を志す。
1965 警視庁巡査、蒲田署勤務。
1970 警視庁刑事部鑑識課現場写真係。三島由紀夫割腹事件(1970年)、三菱重工爆破事件(1974年)、ホテルニュージャパン火災(1982年)、羽田沖日航機墜落事件(1982年)、日航123便墜落事故(1985年)、宮崎勤幼女連続殺人事件(1989年)、オウム真理教関連事件(1995年)など数々の大事件を担当。警視総監賞部長賞等107回受賞。
非番や休日を利用して上野公園の街頭にいる似顔絵師のところに通い似顔絵の書き方を学ぶ。講道館柔道(6段)。
1994/2 4歳の幼女の証言で容疑者の似顔絵を作成し、強制わいせつ事件を解決。
1994/3 病院の看護婦長だった妻を白血病で亡くす。
1995/3 警察庁海外派遣の試験。全国の警官の中から刑事捜査鑑識専門官としてタイ国派遣選抜試験に合格。当時はフィリピンに2名。タイに1名派遣された。
1995/11/6 タイのドーンムアン国際空港に到着。警視庁刑事部に在籍しながらJICA(国際協力機構。当時は国際協力事業団)の専門官として、タイ内務省警察局科学捜査部に配属され、犯罪捜査および現場鑑識の指導にあたる。警察幹部を対象にした科学捜査技術セミナー(月2回)も実施。タイ政府と国家警察局の要請依頼で2年の任期を1年延長。タイ語による犯罪鑑識の教科書も出版。
1998 帰国。警視庁似顔絵捜査官が設立され、犯人手配用の似顔絵専門捜査官001号の任命証を警視総監より受理。
2001 警視庁警部を定年退職。似顔絵捜査官を指導する嘱託員として5年間の勤務を打診される。
2002/3 タイ国家警察から「もう一度指導してほしい」との申し出があり、その要請に応えて、JICAのシニアボランティアとしてふたたびタイに渡る。警察大佐を拝命。セミナーなどで指導した若い警官らが鑑識活動要領を引き継いでくれていて、日本の鑑識技術が根付き始めているのを確認。最赴任後も鑑識捜査官らとともに事件現場を飛び回り、若い士官、尉官たちを指導している。
2004/12/26 現地時間午前8時過ぎ、インドネシア・スマトラ島沖地震が発生。それによる大津波で南タイのバンガー、クラビー、プーケット各県に甚大な被害。津波発生時の翌27日から10名の部下とともに一番被害の大きかったバンガー県の被災地に直行し、約3ヶ月間で約4000体の遺体から指紋を採取し、遺体処理をする。日本に一時帰国したときに、吹上御所で天皇皇后両陛下に現地の状況をご説明し、両陛下からねぎらいのお言葉をいただく。
2006/3 邦人2名殺害された事件で鑑識活動により殺害現場を特定し、証拠採取により犯人を逮捕する。
2006/8/24 タクシン首相暗殺未遂事件で爆弾処理。
2006/9/19 軍クーデターに遭遇
2011/7 帰国


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