【Q&A】リーダーシップとフォロアーシップ

指導力についてはさまざまな論がありますが、指導される側の力「指導され力」に関する話を聞くことはまずありません。リーダーシップなるものは、この両者が相俟ってはじめて成立しうるものと感じます。その点に着目したQ&Aを紹介します。
(エンリケ)
【質問】
軍教育が持つ他とは異なる最大の特徴は「統率の力を養う」点にあると思います。
ここでよくいわれるのが「リーダーシップ」「指導力」といわれるものですが、ずっと思っていたのが「指導者についていこうという気持ちを、どうやって起こさせるの?」という視点に着目した論がないことでした。片手落ちだよなと思っています。
そうしたところ先日、ある経営者の方から
「指導力は指導される力があってはじめて意味を持つんだよ」
「指導される力が高いこと=へつらい、ではないんだよね」
「指導される力が高い人は指導する力も高いよ」
という話を聞き、はたと手を打った次第です。
多くの場合、「人格を養う」といった抽象的な形で個人ベースで行われてきた分野だろうと思います。ただ、指揮官を養成する軍は、この種の研究が組織的にもっとも進んでいるように感じます。おそらく「指導され力」養成の科学的手法ももっているだろうと思っています。しかし、これに関する論は私の見る限りでは見当たりません。
「指導され力」について、海自、海軍でいかなる指導、教育が行われているのか、もし差し支えなければご教授いただきたいと思い、メール差し上げました。よろしければご指導いただければ幸いです。
【お返事(ヨーソロ)】
積極的に指揮下に入る
指導され力というのは初耳ですが、海上自衛隊では「積極的に指揮下に入る」ということをとても強調しています。指揮官先頭であることは当然ですが、それに部下が積極的についていくことも同じように重要です。「良き上司であるためにはまず良き部下であれ」ということです。
もちろん人間関係ですから理性だけではありません。生理的な好き嫌いとか性格的・人格的な力も大きく作用しますが、信念や物の見方・考え方は理性であって、それは教育によって形作られ、やがては人格形成にも及ぶ、と考えられていて、大きな時間をかけて教育しています。「やせ我慢で作る笑顔も生涯続ければ性格になる」という言葉もあります。
よき部下とは?
では、「良き部下とは何か?」ですが・・・
海上自衛隊では「自分が上司ならどうするか?」を常に考えて行動するように指導されています。
・上司はそのまた上司から何を期待されているか?
・上司のために役立つ成果とは何か?
・それはどのようにすれば実現できるか?
「良き部下」はいつもこれらを自問しながら仕事することを期待されるわけで、その核心は「使命感」です。「使命」=「目的」+「任務」で、平たく言えば「何のため(目的)にこの仕事(与えられた任務)をするのか」ということです。
使命への深い理解
上司は部下に指示や命令を与えるとき、毎回5W1Hを細かく説明してくれるとは限りません。しかし、それらを正しく理解しなければ上司の期待に沿う(ツーといえばカーの)良い仕事はできません。日常の仕事でも「使命の分析」は大切ですが、人が生命を懸る軍事作戦では更に重要です。
「人は大きな目標実現の中に自分の仕事の意義を見出したときにこそ本当の力が出せる」、即ち「確固たる使命感」をもって初めて「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め」(自衛官宣誓)ることが出来るわけです。これは一般論の綺麗事ではなく、具体的な一つ一つの行動の際に勇気の源として生きてきます。
また、軍事作戦のように状況が千変万化するなかでは「言われたことを馬鹿正直に行う」だけでは目的達成に寄与できない場合もしばしば有り得ます。
あえて命令に反した行動の方が上司の作戦意図に合う、そのような状況のとき「独断専行」に踏み切るにも、「使命の深い理解」が大きく意味を持ちます。
深い理解のない行動はいわゆる「子供のお使い」で、良い部下とは言えません。ナポレオン軍のグルーシー元帥がその例ですね。(余談ですが、彼はいつもこの例に引き出されて気の毒ですね。本人には反論もあるだろうに、と同情します。)
以上、ヨーソロの管見でした。
(ヨーソロ)

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