【第49講】スペイン語文法入門―兵法的外国語学習への誘い―(その27)

(注:文中の疑問文冒頭にある「?」は正確には「?をさかさまにした文字」です
が、テキスト形式では変換できないため、「?」としています)
前回では、”tener”というAB型の不規則動詞を学びました。
今回は、この”tener”と同じAB型のパターンで活用する動詞を見て行きましょ
う。
ア) venir (来る)
第一人称・単数 vengo
第二人称・単数 vienes
第三人称・単数 viene
第一人称・複数 venimos
第二人称・複数 venis
第三人称・複数 vienen
※√語根のヴァリエーションは、√veng- √vien- √ven-の三種類です。

ここで念押しですが・・・「活用語尾」の方には”不規則”はありません。この
venirの場合なら、-irで終わる動詞なので、直説法現在なら、第一人称単数から
順番に、-o, -es, -e, -imos, -is, -enと「-ir動詞」(ex. vivir 生きる、
subir 上がる)と同じ語尾の変化=活用を行います。
不規則動詞というものは、活用語尾よりも√語根の方に注意してください。
活用語尾で特殊というのは、直説法現在・第一人称単数が”-oy”というのがあり
ますが、こちらは、よく使われる動詞でありながらも、それほど数は多くありま
せん。
もし・・・√語根も活用語尾も著しく変わる動詞というのがあったら・・・
それは、今回の講座の最後に出てくる、ser(~である)、haber(持つ)の二つ
ぐらいです。今のところは安心してください。
では、ここで少し”venir”を使った表現を覚えましょう。
例)
ア)Viene la tormenta.  (嵐が来るよ。)
イ)?De donde viene usted? (あなたは、どちらから来られましたか。)
ウ)Vengo de Espana.   (スペインから参りました。)
※ここで”しつこく”和訳を見ていると・・・「時制(テンス)」について、
特に、それが「現在時制」の時なのですが、何となく”疑問”が湧いてくるかも
知れません。それは・・・
上記の文例では、ア)の文の意味をじっくりと観察すると・・・英語と違って、
活用している動詞が前に来て、主語が後ろ・・・という語順がスペイン語には結
構お目にかかるということ、そして・・・この文には、実は、「嵐が今ここに来
る」の意味もあるのですが、また、「間もなく来る」という”近接未来”の意味
も担っています。眺めると山の方に真っ黒な雲があって、如何にも嵐になること
が分かっている・・・このようなシチュエーションでの発言が考えられます。
確か・・・映画『ターミネーター』(1984 ジェームズ・キャメロン監督作品)
で、将来、地球がコンピュータとロボットに支配され、人類が抹殺されそうにな
るけれども、そのような状況を逆転させ人類を生存への勝利に導く救世主的”政
治・軍事”リーダーであるジョン・コナーの母親サラ・コナーがジョンを妊娠し
て一人でメキシコ国境を超えて行くラストシーンがあります。そこでガソリンス
タンドのメキシコ人の男の子がポラロイドカメラでサラ・コナーの写真を撮って
お金をおねだりし、「 ア)」のセリフを告げるところがありました。
『ターミネーター』のラストシーン・・・遠い未来で人類より知識があって機転
がきいて人類以上に抜け目の無いコンピュータ24時間・全天候型・疲労知らずの
ロボットが相手の戦いで、人類は苦戦するものの最終的な勝利は確実なのは分か
っています・・・が、その過程たる近い未来は、それこそ波乱万丈で実際には何
億人かが死んで、生き残った人々もそれから戦いがあってまた死んで、さらに生
き残った人々も死ぬ程の目に遭う・・・しかし、最後は勝ち残る・・・という鍛
錬の時を嵐の風景がとてもよく表現していたと思います。
人生とは、最初から結果が判っていたら意外とやることもやらない、むしろ消極
的になってしまうものですが、先を見切ることができないが故、何かがひょっと
するかも知れないから・・・生きていても面白いのです。この映画のセリフで
は、”venir”の直説法現在は、”近接未来”の意味で使っています。
また、イ)とウ)の文では、「あなた様は、どちらからいらっしゃるのですか」
という近接未来的な意味もあれば、「あなた様は、どちらからおいでなさいまし
たか」(ある地点からやって来てここに今居る)の意味もあります。こうなると
“現在完了”の意味も担っていることになります。通常、イ)とウ)の場合で
は、現在完了の意味合いで使われています。要するに、話者は、スペインから
やって来て、その結果として今ここに居る・・・ことを言っているのです。
ここで分かることは、現在時制は、ピンポイントで「今の時」を示すのではな
く、むしろ、現在完了やら近接未来やらの「この今を中心として、今から見える
過ぎた時やこれから来る時」も含んでいる・・・即ち、現在時制は、ある程度、
“する時が現在とは不一致”であるという意味を持っていることが見られます。
これは、動詞が本来持っている動作を表す意味の中に「時(とき)」を表す意味
と「間(ま)」(その時=時点において進行しているのか、あるいはその時に完
了しているのか・・・ということ)を表す意味があって、それは、その動詞が元
々持っている「時と間に関する意味」の相関関係から生じて来るものです。
この動詞が表す「時」のところを”時制”(テンス)といい、「間」のところを
“相”(アスペクト)と言います。テンスとアスペクト・・・常に同時に考える
ようにしましょう!和訳する際には、今はあまり分からなくとも、このことは意
識の中に残しておいてください。今後、解読や作文などで役に立ってきます!
では、次に:
○直説法現在・第一人称・単数が-goで終わり
○第二人称以降、√語根の中の母音が”-e”が”-i-“に変化する「-ir動詞」
( http://espania.okigunnji.com/2010/03/25.html )になる
というパターンがあります。
ここでは、”decir”(言う)を例にとってみましょう:
第一人称・単数 digo
第二人称・単数 dices
第三人称・単数 dice
第一人称・複数 decimos
第二人称・複数 decis
第三人称・複数 dicen
※確認:√語根は、語根母音変化動詞の”pedir”と同じく、”-e-“が”-i-”
(単母音から単母音への変化)に変わるものです。”-ir”で終わる動詞は、不規
則動詞が多いものです。今後は-ir動詞を見たら意識するようにしてください。
表現)
●Siempre dices la verdad.
 ⇒ 君はいつも本当のことを言う。
  [siempre:いつも verdad:真実、本当のこと]
●?Como se dice esto en espanol?
 ⇒ これはスペイン語でどう言うのですか。
 [Como:如何に se:人は一般に dice:言う esto:これを(中性形なので
  対象とする物体が男性名詞か女性名詞か検討がつかないから使っている)
  en espanol:スペイン語で]
(英語では、How do they say this in Spanish?というような表現をしている。)
●Se dice “○○○○ “.
 ⇒”○○○○”と言うんですよ。
●?Como se dice esto en espanol? 
 ⇒(自分が知らない物体を指して) これはスペイン語で何と言うのですか?
●Se dice “mortero”.
 ⇒”迫撃砲”と言います。
O)特殊パターン
次の二つだけは、直説法現在で語形の変化が特殊です。これを”O型”として頭の
中に整理しておきましょう。
●SER(~である)
※英語のbe動詞では”つなぎ動詞”の方。be動詞で状態動詞(ある・いる)の方
は、スペイン語では”estar”を使います。
soy
eres
es
somos
sois
son
※ eres 母音間の”-s-” が “-r-“へ→発音する時の”位置”(舌先、前歯の後
ろの歯肉が固くて盛り上がっているところ)が同じです。自分でサを十回、その
後、ラを十回発音してみましょう。日本語には起こりませんが、外国語になると
起こる発音上の現象があります。冷静になって観察し、つくりやしくみが分かれ
ば、不思議や不規則は不思議や不規則ではなくなってしまうものです。
●HABER(持つ)
※現在、”持つ”は”tener”が担っています。”haber”は、現在完了、過去完
了、未来完了などの各時制=「時」に付随する「間」=相(アスペクト)を表す
“完了”の表現に用いられます。また、第三人称単数の”ha”に”そこ(英語で
はthere)”を意味する”i”が膠着(ひっつくこと)して、”hay”となり、存在
の有無の表現(英語では、there is~、 there are~)の表現があります。これ
らは、次回から学習して行くことになっています!
he
has
ha
hemos
habeis
han
※この”haber”の直説法現在と過去分詞を組み合わせて「直説法現在完了」とい
うのがありますが、今回の講座で出てきた「相(アスペクト)」という時の中に
ある間の表現では非常に重要になるので、今、この動詞の活用を記憶の中にうっ
すらとでも良いので残しておいてください。
次回は、いよいよ、”ser”(つなぎ動詞。「Aは、Bである」)と”estar”(状
態動詞。「Aは、Bの状態にある・いる」)を習います。ここでは、名詞のカテゴ
リーも重要になりますので、バックナンバー(*)を見直しつつ進んで行きましょ
う。
(*) http://espania.okigunnji.com/2009/08/319.html 
以降の名詞、冠詞、形容詞など
Hasta luego!
(以下次号)
(米田富彦)