【第37講】 スペイン語文法入門―兵法的外国語学習への誘い―(その15)

孫子塾副塾長・孫子塾関西支部長
同志社大学/京都外国語大学・スペイン語非常勤講師
米田 富彦
http://espania.okigunnji.com/2008/06/post-1.html
みなさん!孫子塾の”メルマガ”に、塾長の佐野寿龍先生が発行されている
「孫子塾通信」( http://heiho.sakura.ne.jp/easymailing/easymailing.cgi
があります。特に、時事問題に関する兵法的な切り口は、大変鋭くも興味深い
ものであります。この機会に是非とも登録され、自己の兵法、戦略、情報の
「眼力」即ち、脳力の開発のための参考になさってください。
「兵法を現世で行じている」のは、他ならぬ自分自身であります。兵法とは、
『孫子』という書物や解説者にあるのではなく、みなさんの”心の奥底”にあ
るのです。心が『孫子』になる、即ち、『孫子』の思想を身につけて”生を行
く”こと、「常在戦場」ならぬ「常在孫子」という風になって行くことを心が
けましょう。

是非、”兵法”に関する基礎(思考、行動から生き方そのもの)を充実させた
いと願う方々はこの機会に「孫子塾通信」をご登録くださいませ!
今回は、前置きはあまり語らずに文法の本題へと入って行きたいと思います。
前回の再履修となっています。が、日本語にはない”品詞”(例:冠詞、関係
詞など)、あるいは日本語にはない”品詞のカテゴリー”(例:名詞の性・数・
格など)について、”研究”することは、それだけ私たちの「慣習(思考と行
動の因果律を示す形の現れですが・・・)」にはないところ、あるいは違った
ところを学ぶことになります。
即ち、慣習というものの本質を学び、その慣習から打破や変革(チェンジやレ
ヴォリューションの類ですよ!)の抽出を可能とさせる基礎を考えるのです。
これこそ、大きくは軍事革命とか、小さくは奇襲攻撃、あるいは規模の大小は
ありますが、ゲリラやテロなどに通奏低音として流れる「現状打破」の因とな
るものであります。
外国語の文法を学習することは、兵法、戦略、情報を学ぶことと同じことであ
るのだ・・・ということです。この本講座の一石二鳥のところをじっくりと
学んでいってください。
(37)スペイン語文法入門―兵法的外国語学習への誘い―(その15)
前回は、日本人にとってはあまりなじみのない品詞である冠詞について学んで
行きましたが、今回は、もう一度!さらに冠詞についての復習を重ね理解を
深めて行きたいと思います。前回と同じような内容が続きますが、理解の深度
を発展させるのにとても効果がありますよ。
☆スペイン語の定冠詞について
本来、「この、その、あの」といったものを話す相手に具体的にハッキリと
指し示すコトバ=”詞”を「指示詞」と言います。この指示詞が、自分の表現
する名詞を文の中で話す相手にハッキリさせるために、いつも名詞の前に付け
られるようになりました。
これが定冠詞の始まりです。(比較→英語のtheは、thatから由来)
スペイン語の定冠詞は、ラテン語指示詞ille(その)より由来しています。
定冠詞は、いつも名詞の前に置かれ、本来の意味は「その」という意味であり、
指し示す名詞を特定して、話の中で焦点を定める働きをします。また、冠詞と
いう品詞は、いつも名詞に連っているので、その指し示す名詞の持っている
「性と数」(格については文中の位置で判断します)によってスペイン語では
次の4種類が出て来ます。
男性名詞の場合
 単数の時: el をつける
 複数の時: los をつける
女性名詞の場合 
 単数の時: la をつける
 複数の時: las をつける
例)
        単数形      複数形
男性名詞    el a’ngel    los a’ngeles
女性名詞    la vega      las vegas
上記の例の中の複数形は、アメリカ合衆国の”ロサンゼルス”と”ラスベガス”
という地名になっています。これを機会に憶えやすいように、定冠詞(並びに
名詞の複数形の作り方も合わせて)の単数形と複数形を覚えておいてください。
このアメリカ合衆国の中のスペイン語地名の興味深い由来は、かの別宮暖朗先
生の第一次大戦のサイト内にある「米墨戦争」のところ
( http://ww1.m78.com/topix-2/ame-mexican%20war.html )をご覧ください。
凡そ、60年周期くらいで、米墨戦争の約60年前には独立戦争が、米墨戦争の
約60年後に米西戦争があり、その次に真珠湾が・・・そして、WTCテロが巡って
います。いづれも、アメリカ人が一体となっている事件なのが興味深いところ
です。
・ドリル
次の名詞の前にある括弧内に相応しい定冠詞と不定冠詞をつけなさい。
( ) casa negra 黒い家
( ) problemas interesantes 興味深い問題
( ) mesa verde 緑のテーブル・机
( ) libro fa’cil やさしい本
( ) revistas espan~olas スペインの雑誌
( ) coche blanco 白い車
☆スペイン語の不定冠詞について
元々、数詞(基数)の「1=一つの」から出てきた単語です。
スペイン語では、単数形と複数形の不定冠詞があります。単数は、「一つの」・
「ある」を意味するところから、不定冠詞とは、話し相手には、名詞について
漠然とした、特定しないで、焦点をぼかす働きをしています。
不定冠詞は、元々「1つ」という意味が漠然として不特定のものを指し示す
ところから、今度は、”数の感覚”が”曖昧”になって来て、ついに「ある~」
という意味に変化してきたものです。
ここから、不定冠詞の複数形(?→後で解説)であるunos,unas(幾つかの~)が
出てきました。
☆定冠詞と不定冠詞の違いについて
先ずは・・・定冠詞と不定冠詞の意味上の違いは次のとおりです:
例) 定冠詞 ;   el coche ? その自動車;例えば君の乗ってきたベンツ
                  (既知、具体的、特定化)
    不定冠詞;  un coche ? 一台の/ある自動車;自動車ならなんで
     もよい
                   (不知、抽象的、不特定化)
☆スペイン語不定冠詞の”複数形”について
このスペイン語の不定冠詞には、この他に、意外に思うかも知れませんが、
何と不定冠詞に「複数形」というものがあります!
これは、不定冠詞の特徴である「不特定の~」=「ある~」というあいまいな
意味から単数の感覚がなくなってきて、そこからある程度のまとまった数のも
の=複数の発想がでてきました。それ故に、「いくつかの~」という意味にな
りました。
ちなみに、英語の “some” は、印欧祖語の “*oi-no-s”, “*sem-“(=共に
「一」を意味する数詞)からでてきました。よって、発想はスペイン語と全く
同じなのです。
この複数形の不定冠詞にも性と数の一致がありますので注意してください。
(※”*”はアスタリスクと読み、印欧祖語の復元再構形のことです。)
男性名詞の場合
 単数の時:unをつける
 複数の時:unosをつける
女性名詞の場合
 単数の時:una をつける
 複数の時:unasをつける
例)
         単 数 形   複 数 形
   男性名詞   un angel    unos a’ngeles
   女性名詞   una vega    unas vegas
☆名詞と冠詞のまとめ(再確認!)
冠詞と名詞の一致=”天使”と”沃野”で憶えてしまいましょう。
例)
      単 数           複 数
   el / un a’ngel      los / unos a’ngeles
   la / una vega         las / unas vegas
☆冠詞の意味のまとめ(もう一度!)
・定冠詞は、既知のものごとを話者の間で「特定化」して焦点を合わせてより
ハッキリとさせる働きがあります。(その~)
・不定冠詞は、未知のものごとを話者の間で「不特定化」して焦点をハッキリ
とさせません。また、未知のものごとですから、始めて対話のまな板にあげて、
示すものごとを自分が最初に認識したり、相手に紹介してあげる働きがありま
す。(ひとつの~、ある~)
・そもそも、冠詞とは、名詞の性・数、即ち横の線(左から右へと進める語順)
に一致(文法の規則通りに展開)させてゆく最初の言葉です。即ち、スペイン
語をはじめとする印欧語とは、横の線に品詞のカテゴリー(名詞の性・数・格
など)に従って、一致(これを語尾変化で行う慣習)がある・・・ということ
です。これが印欧語の特徴ですから、ここで覚えておきましょう。
☆冠詞の語順のまとめ
   冠 詞    +    名   詞
(定冠詞/不定冠詞)     (性・数)
要するに名詞のカテゴリー(性・数)に合わせて一致!と覚えましょう。
文の左端が決まれば、自ずとその右にくる言葉が決まって来るのが印欧語の
面白いところでもあります。
“el”といったら、次にくるのは、男性・単数形の名詞です。
“las”といったら、次にくるのは、女性・複数形の名詞です。
英語の方は:
  ○定冠詞    ・  ”the”は指示詞の”that”から
  ○不定冠詞   ・  ”a(an)”は”one”から由来しています。
スペイン語は:
  ○定冠詞がラテン語の指示詞 “ille” より男性・女性/単数・複数で4種類
  ○不定冠詞は、”1”= “uno”から男性・女性/単数・複数で同じく4種類
全ては、スペイン語の原文が読めるように解説を積み重ねていますので、今ま
で、冠詞というものにあまり興味も持たず、無視して来たのなら、この際、
外国人が考える思考法で冠詞を捉え直して、意識して行ってください。
(つづく)

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