クリエイティブ・スイート(平藤清刀など)編 『ゼロ戦の秘密』


■第1章は、零戦の実戦記録です。
操縦士たちの「戦闘機乗り魂」が余すところなく表現されており、実に面白い
ですね。宇垣纏中将の特攻出撃で終わるこの章は、零戦・空戦方面から描いた
「コンパクト大東亜戦史」ともいえる内容です。
記述は詳細で、読み手の頭に現場の光景が浮かび上がるようです。
文庫本なのに、ここまで「微に入り細に入った」深い表現がなされていること
に少し驚いてます。


おそらくこれは、書き手の「深くて広いリサーチ」と「軍事啓蒙への想い」の賜物でしょう。さすがは平藤さんと思わせる内容です。
中でも面白かったのは、オーストラリア本土を攻撃した「ダーウィン上空での戦い」でした。マダガスカルとオーストラリアにわが帝国海軍の潜航艇が上陸したはなしを、ずいぶん以前にマガジンでご紹介しましたが、大東亜戦争時のオーストラリア方面作戦について、戦後日本が知るところは少ない気がします。
この項を通じてひとつ知識を増やしていただきたいですね。
戦争指導の誤りへの批判と、戦場で雄雄しく戦った先輩への誇りの念は立派に共存する。「両者をともに吸収し、昇華させ、教訓という果実を実らせて具体的に実践する」ことこそが大切なのだ、と改めて感じます。
本章を読んでいると、フィクションを見ているかのような錯覚を覚えますが、すべて事実であることをあわせて銘記しておきます。
■第2章は、零戦を中心とする戦闘機カタログです。
零戦各型、零戦と戦った敵戦闘機、一式陸攻、紫電改の図、スペック、簡単な説明が記されています。
■第3章は零戦の性能と開発にかかわる詳細な説明です。
「空戦性能」と「航続距離」の2つの性能に優れた零戦は、ある時期まで世界一の戦闘機でした。そのことを技術面から詳しく解説しています。
堀越さんを中核にした当時の開発陣のすばらしさも改めて感じます。
開発に至る経緯も非常に興味深いです。
「無茶な要求をする海軍」に応えた技術陣は、真の開発者魂を持っていたといえましょう。基本的に専門家というのは、「できない言い訳」をするものですからね。ブレイクスルーの事例としても非常に興味深いです。
軍事力は国力そのものであることもよくわかりますね。
■第4章は、零戦にかかわった人物列伝です。
次の各氏が紹介されています。
大空のサムライ・坂井中尉、天下の浪人・岩本中尉、若き名パイロット・杉田少尉、エースパイロット・笹井少佐、海軍屈指のエース・西澤中尉、豪傑・杉野兵曹長、名隊長・横山中佐、戦略家・源田大佐、設計チームの中心人物・堀越二郎
■第5章は、零戦をめぐるよもやま話を紹介しています。
Q&A的な位置づけですね。
一般の方でしたら、零戦に関してお持ちの疑問はすべて解決するのではないでしょうか。実寸大の零戦を見ることができる施設の所在地も紹介されています。
その後は、ブックガイド、映画ガイド、そして参考文献となっています。
■工芸品だった零戦
「零戦は量産に向かない一種の工芸品だった」という言葉が文中に出てきます。
これは実に意義深い言葉ですね。
どこまでも美を追求するわが国民性を示した言葉といえるかもしれません。
零戦は、そのすべてがあまりに美しすぎ、国家が戦に勝つための兵器としては失格だったのかもしれません。
大東亜戦争から国民が汲むべき教訓のひとつかもしれません。
■オススメです
文庫本なのに、零戦に関して事実上完結したこの本。
一冊持っているだけで普通の方なら十分な内容です。
費用対効果が極めて優れた本著を、オススメします。
(エンリケ航海王子)
目次
写真でみる零戦とライバル機
はじめに 零戦に秘められた日本人のドラマ
第1章 語りつがれる零戦の名勝負10
 今も語り継がれる名戦闘機
 初陣、重慶上空の戦い
 真珠湾奇襲攻撃
 「空の要塞」B17を撃墜せよ
 ミッドウェー海戦の明暗
 ガダルカナル島攻防戦
 ダーウィン上空での血闘
 山本五十六大将を守れず
 マリアナ沖海戦
 航空戦の場はついに本土上空へ
 神風特攻隊長の突撃
第2章 零戦とライバル機を徹底解剖
 零戦21型
 零戦32型
 零戦52型
 F4Fワイルドキャット(グラマン社)
 F6Fヘルキャット(グラマン社)
 F4Uコルセア(チャンスヴォート社)
 P51ムスタング(ノースアメリカン社)
 スピットファイア(スーパーマリン社)
 P40ウォーホーク(カーチス社)
 P38ライトニング(ロッキード社)
 B17フライングフォートレス(ボーイング社)
 1式陸上攻撃機
 紫電改
第3章 零戦の性能と開発秘話
 
性能
 卓越した空戦性能と航続距離は、当時の戦闘機の世界一
 空戦性能の決め手となった「翼面荷重」って何?
 主翼に隠された秘密「翼端ねじり下げ」
 軽量化を実現した新素材、「超々ジュラルミン」
 日本初、小型戦闘機で引き込み足の採用
 空気抵抗の軽減を追及し、「沈頭鋲」を採用
 軽量で小型の「栄エンジン」が空戦性能を支えた
 典型的な運動性能の秘密はキャブレターにあり
 破壊力抜群の20mm機銃。そのメリットとデメリット
 20mm機銃は、「初速」が遅いため命中率に劣る
 20年も先駆けた「マンマシン・システム」
 米軍が格闘戦を禁じた、その操縦テクニック
 世界最高の視界のよさを実現した「バブル・キャノビー」
 世界初!「落下式燃料タンク」の採用
 最高の運動性能の代償となった、脆弱な装甲
 ペイントやマーキングは、何のためのもの?
 操縦席の計器で、機体のコンディションを確認
 機内に積んだ無線電話は無用の長物!?
 空母への帰艦や夜間飛行はどうしていた?
 20種類も作られた改良型は、みな個性的
開発
 零戦はどうして「”零”式」と呼ばれたのか?
 飛行”器”を研究せよ! 日本航空史の幕開け
 初期の空中戦は、もちこみ拳銃だった?
 日本初の軍用機が完成し、初爆撃を行なう
 日本の海軍に航空機部隊が誕生する!
 幻の戦闘機!「7試艦上戦闘機」
 零戦の前身である名機、「96式艦上戦闘機」
 すべての性能がほしい!海軍の無茶ぶり
 「戦闘力」「速力」「航続力」、重要視すべきはどれ?
 機体に穴をあけてまで挑んだ、究極の軽量化
 「零式艦上戦闘機」第1号が誕生する
 試験飛行で空中分解!悲劇は起きていた
 零戦は超お買い得?戦闘機のお値段
 20mm機銃の採用は、山本五十六大将のゴリ押し?
 なぜ、零戦は終戦まで生産されつづけたか>
 量産しにくい設計で作られた戦闘機は、もはや「工芸品」!?
第4章 人物でたどる零戦
 20世紀の宮本武蔵と呼ばれたパイロット 坂井三郎
 終戦まで零戦と戦い抜いた「天下の浪人」 岩本徹三
 悲劇的な運命に散った、若き名パイロット 杉田庄一
 士官出身の中隊長にしてエースパイロット 笹井醇一
 最後までラバウルで戦った海軍屈指のエース 西澤廣義
 船乗りにして、太平洋各地を渡り歩いた豪傑 杉野計雄
 零戦の初陣から最後までを見届けた名隊長 横山保
 日本海軍を支えた、先見の才ある戦略家 源田実
 零戦を生んだ設計チームの中心人物 堀越二郎
第5章 零戦なるほど雑学
 零戦を「ゼロセン」と読むのは正しくない?
 陸軍に「零戦」がないワケ
 零戦のパイロットになるには(1)基礎編
 零戦のパイロットになるには(2)予科練編
 零戦のパイロットになるには(3)飛行練習生編
 零戦のパイロットになるには(4)士官編
 予科練習生の一日
 「超エリート」と「たたき上げ」の確執
 階級によって月給が米900kg分も変わる!?
 部隊編成の基本は3×3×3!
 水泳に格闘技!?パイロット訓練の実態
 零戦パイロットは何を食べていたか?(1)日常編
 零戦パイロットは何を食べていたか?(2)機上編
 零戦パイロットは何を食べていたか?(3)飲料編
 零戦パイロットは何を食べていたか?(4)食の苦労編
 零戦パイロットの自称は「私」?「俺」?
 じゃくる?チョンガー?海軍の日常語
 「マイナス頭」「六割頭」って何?
 ブッシュとジョンソンも零戦と戦っていた!
 実寸大の零戦が、現代でも見られる!?
 排泄物が顔面に?トイレの苦労話
 零戦のネックだった、元祖バイオエタノール燃料
 エースの告白。撃墜数は自己申告だった
 敵機よりも怖い!?ラバウルに潜む、地上の強敵
 黄色い零戦を作った第3のメーカー
 泣きっ面にハチ?生産施設の悲劇
 零戦は陸上基地で使っても「艦上戦闘機」?
 パイロットにふさわしい体格は?
 日米開戦時、零戦は何期配備されていたか?
 零戦は鍋にも使える?海軍家の食卓
 零戦パイロットの服装(1)飛行服
 零戦パイロットの服装(1)マフラー
 意外に難しい零戦の射撃のコツ
 ロケット排気管の思わぬワナ
 翼は口ほどに物をいう?
 空飛ぶミートボール
 千人針の腹巻きは、命のお守り
 パイロットとメカニックは一心同体!
 あぁ無情・・・敗戦後の零戦
 自動車のスバルは零戦の子孫?
 東南アジアで甦る零戦
 新幹線は陸地を走る零戦だった!
ブックガイド
シネマガイド
参考文献
本日ご紹介したのは、
『ゼロ戦の秘密』
編著:クリエイティブ・スイート
発行元:PHP
発行:2009/3
http://okigunnji.com/s/zero/
でした。

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