外人部隊の裏が見える警務課での経験————外人部隊の真実(10)

2019年2月6日

著者・合田洋樹さんのデビュー作はコチラ↓

『外人部隊125の真実―戦士たちの知られざる世界―』
http://okigunnji.com/url/77/
※これまで見たことない、斬新な外人部隊本です
さてきょうの「外人部隊の真実」。
合田さんならではの話を伺える
警務課での勤務についてです。
くわしくは本文でどうぞ
著者へのメッセージはこちらから。
http://okigunnji.com/1tan/lc/toiawase.html
※メッセージの宛先著者名を選べます。
エンリケ
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【短期連載】 外人部隊の真実 
外人部隊の裏が見える警務課での経験————外人部隊の真実(10)
 元上級伍長 合田洋樹
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「軍事情報」読者の皆様へ
拙著「外人部隊125の真実」に多数のご注文をいただき、
まことにありがとうございました。
事前の反応も上々で、精魂込めた甲斐がありました。
なお、初版の印税は、外人部隊の養護院「ピュルビエ」に全額寄付する
つもりです。ご購入していただいた皆様には、本書に出てくる「元外人部隊兵
のための養護院」の運営に間接的に関わったと思っていただけたら幸いです。
養護院「ピュルビエ」のことは、こんごメルマガでも紹介するつもりです。
(合田洋樹)
 今回は私が5年半在籍した警務課(いわゆるミリタリーポリス)に
ついて書きます。自衛隊の「警務隊」に近い部署ですが、逮捕権は
ありません。しかし部隊内で起きた問題の解決のために、独自で
内部調査をしたり、入隊以前に問題を起こした部隊兵が、同じような
問題を起こさないように監視し、未然に防ぐ努力をしています。
 また部隊兵に対し、規律を順守させる重要な役割を担っています。
規律のない外人部隊は「危険な暴力集団」となってしまうからです。
 警務課や警務部(通称“ゲシュタポ”)は、一般の部隊兵が決して
知ることのない各部隊兵の「本当の過去」を知れる特殊な部署でも
あります。警務課は、オバーニュの警務部を上級部署としています。
お互いに緊密に連絡を取りあい、部隊兵が起こした問題の解決に
あたるのです。
 一部の部隊兵にとり、過去の知られたくない事情を知っている
警務課の存在はきっと疎(うと)ましかったでしょう。
 警務課の仕事は長い在隊期間中、最もストレスを感じる部署でした。
部隊兵に規律を遵守させる部署なので、部隊兵からは嫌われます。
それがわかっていながらも、彼らの抱えているトラブルを解決する仕事
をしなければならなかったのです。相手からは嫌われても、こちらは
彼らの知らないところで、彼らのために働いていたのです。
「アラ探しをしている」と思われているミリタリーポリスは、どこの国の
軍隊でもよく思われてはいないでしょうが、いまではこの部署に勤務
できたことに、非常に感謝しています。警務課で約5年半勤務したから
こそ、より深く外人部隊のことを理解できるようになったのですから。
▼外人部隊の裏が見える警務課での経験
 私は11年ほど裏方の事務職を務めた。そこで外人部隊がいかに
懐の深い組織であるか、身をもって知ることができた。とくにそのうち
の5年半を過ごしたOPSR(連隊付き警務課)で得られた経験は、
部隊を深く理解するうえで非常に得がたいものであった。
 この警務課は各連隊に存在し、第1連隊の警務部が上部組織と
なる。連隊内で起きた問題は逐一、警務部に報告し、互いに情報を
共有しながら解決策を練っていく。
 各連隊の警務課は、叩き上げの中尉または大尉が責任者で、
それを補佐する古株の曹長以上の下士官1名、彼らが作成した書類等
を仕分ける上級伍長2名で構成されている。名目上は副連隊長が
警務課のトップであるが、ほとんどの事案は実質上の責任者である
中尉または大尉によって処理される。
 落下傘連隊では、この警務課を畏怖を込めてB2(ベードゥ)と呼ぶ。
私がここでやっていたのは個人情報の管理である。
 さらに警務課の責任者から直接命令を受けて行動する
PLE(Patrouille de la Légion Etrangère:外人部隊パトロール隊)
がある。過去にはPM(Police Militaire:ポリスミリテール)と呼ばれ
ていたが、「ポリスという言葉が強すぎる」という意見が一部にあり
(外人部隊が嫌いな人たちだろう)、現在では「パトロール(Patrouille)」
というように改名された。
 このPLEは曹長または上級軍曹をリーダーに、5、6名の上級伍長
がパトロールリーダーを務め、常時4、5名の伍長が彼らをサポート
するため詰め所に待機している。状況に応じてPLEは増員される。
 第2落下傘連隊では、事務方を担当する部署と行動部隊のPLEは
同じ警務課であるが、厳密には別の組織である。事務方は個人情報を
扱うので、PLEのリーダー以外は基本的にアクセスできないことに
なっている。このあたりは各連隊によって規則が異なる。
 部隊兵の中にいる身元が不確かな者、問題を抱えている者、
素行の怪しい者などに目を光らせるのも警務課の仕事だ。
 また海外休暇申請をはじめ、フランス国籍への帰化、機密情報
取り扱い資格、CBC、特技課程申し込み等々の申請が各中隊付き
事務所から送られてくる。それらを個人ごとに入隊以前に起こした
問題、現在の勤務評定をチェックし、オバーニュの警務部に最終決定
を仰ぎ、申請書に対して「ウイかノン」を出すのも大きな役割だ。
(つづく)
(ごうだ・ひろき)
■著者へのメッセージはこちらから。
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【著者紹介】
合田洋樹(ごうだ・ひろき)
1978年神奈川県生まれ。都内の高校卒業後18歳で渡仏。
1997年フランス外人部隊に入隊。計17年半勤務し2014年11月除隊。
最終階級は上級伍長。在隊中は主に第2外人落下傘連隊に在隊し、
ジブチの第13外人准旅団にも計3年在隊。長い在隊期間中の約11年間
を後方支援中隊にて事務員として勤め、そのうちの5年半を警務課で
勤務。外人部隊を深く理解するうえでこの部署での経験が非常に役立つ。
『外人部隊125の真実』を近く出版予定(*)。ほかに第2外人落下傘連隊に
ついての電子書籍版を執筆中。
(*)http://okigunnji.com/url/77/
《長期派遣歴》
1997年01998年ジブチ、2009年02011年ジブチ
《短期派遣歴》
1999年ボスニア、2000年ガボン、2001年ジブチ、2002年ギアナ、
2004年ジブチ、2006年ジブチ、2010年カタール、2011年ウガンダ