千歳管制隊(7)

先週、2008年夏に開催された洞爺湖サミットについて触れましたが、読者の方からメッセージを頂戴したので、その一部をご紹介させていただきます。

<サミット時のミッションの大変さについて>
何が大変かというと、各国首脳はVIP Code NO1となり、最優先で離着陸させます。したがってその間、自衛隊機はもちろん、民間定期便でも優先順位は後回しです。しかし民航機も速やかに離着陸させなければなりませんから、間隔の取り方には相当苦労したでしょう。特にVIP 機が重なった場合は、その優先順位にも配慮しなければならず、普段経験していない事態だけに、それは大変だったでしょう。

パイロットのK様、ありがとうございました。
ここからが今週のお話です。
管制隊長に続いて各部署の隊員にも話を聞きました。
まずは多様な業務をこなす総括班長。

「総括班では総務、人事、補給、服務指導、給料、秘密保全、個人情報保護など、要は隊の雑用すべてを担当しています。施設が分散しているために隊員同士が顔を合わせる機会が少なく、意識してコミュニケーションを取る必要があるのが千歳の特色です」

航空管制官の2曹は、目の前の画面で広範囲に状況を確認できるラプコンが好きだそうです。

「ハードな仕事には慣れました。慣れる以前のつらい日々のことを思い出すと気持ち悪くなるので、思い出さないようにしています(笑)。忘れられないのは、タワーにいるときに体験した2003年の十勝沖地震。ちょうど阪神淡路大震災を体験した隊員と一緒にいたんですが、その人が“阪神のときの比じゃない揺れだった”と言うほど揺れました」

航空管制器材整備員の2曹は、千歳ならではの苦労を教えてくれました。

「点在している器材を保守点検するために車で移動するのですが、冬の積雪時は道路、器材とも除雪が大変です。それから柵を越えて動物が入って来ちゃうんですよ。以前、サイトからサイトへ車で移動中に危うく鹿をひきそうになって、かなり焦りました。ウサギやキツネは当たり前、白鳥も見かけますよ」

飛行管理班の運用主任として現場を統括している飛行管理員の3曹は、管制官になりたくて自衛隊に入隊したそうですが、現在は飛行管理にやりがいを感じているといいます。

「サミットのときはイレギュラーの作業でラプコンに詰めることになり、管制官と同じ部屋で仕事するという貴重な経験もできました。飛行管理班と飛行管制班の両方がある管制隊は千歳だけなので、ここならではの体験ですね」

ちょうど取材時、日米共同訓練のため、嘉手納基地から戦闘機が千歳基地へ飛来してきました。この戦闘機はパイロットなくして飛ぶことはありえませんが、そのパイロットは管制のサポートなしに飛ぶことはありえません。
細かなピースを一片の誤りもなくあるべき場所へあてはめていくような緻密な管制業務が、千歳では今日も絶え間なく続けられています。
(千歳管制隊 おわり)
(わたなべ・ようこ)
(令和二年(西暦2020年)6月18日配信)