自衛隊海外派遣の歩み (12)

先週は国民のPKO業務に対する意識と自衛隊への関心の変化を振り返ってみました。今回は自衛隊がいつ、どこで、どんな支援を行なってきたのか、その海外派遣の具体的な記録を見てみます。
 自衛隊の海外派遣を一覧にすると、どれだけ実績を重ねてきたのかよくわかります。PKO法案成立時に社会党が牛歩で時間を稼ぎ廃案に持って行こうとしていたのが、遠い昔のようです。いえ、実際に四半世紀経っているのですから、時代が変わるには十分な時間です。
 自衛隊の海外派遣の内訳は
・国際平和協力法(PKO法)に基づく国際平和協力業務
・各種特別措置法に基づく活動
・国際緊急援助法に基づく国際緊急救援活動
にわけられるので、それぞれの実績を見てみましょう。
 ただ、かなりのボリュームなので、今週はそのうちPKO活動のみのご紹介とし、続きは来週に。箇条書きの記録になるので退屈かもしれませんが、「自衛隊はこれだけ実績を重ねてきたのか」と思っていただければ幸いです。なお、いくつかの活動については、その内容についても触れておきます。
 PKO法は1992年6月に制定されました。以来、自衛隊は国際平和協力活動を付随的な業務としてきましたが、2007年、わが国の防衛や公共の秩序の維持といった任務と並ぶ、自衛隊の本来任務に位置づけました。実績は以下のとおりです。
 活動名称、活動期間、派遣された人数の順で記載しています。
●国連カンボジア暫定機構(UNTAC)施設部隊 1992年9月~1993年9月 1200名
●国連モザンビーク活動(ONUMOZ)輸送調整部隊 1993年5月~1995年1月 144名
●国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)輸送部隊 1996年2月~2013年1月 約1500名
※ゴラン高原の国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)に対し自衛隊の輸送隊などを派遣、約6カ月交代で部隊を派遣してきました。おもな業務は、UNDOFの活動に必要な日常生活物資などをイスラエル、シリア、レバノンの港湾や空港、市場などから各宿営地まで輸送すること、道路の補修や標高2800mを超える山岳地帯での除雪作業などの後方支援業務です。走行距離はのべ約340万km、地球約85周分におよびました。また、航空自衛隊は派遣輸送隊に対する物資輸送のため、C-130H輸送機を半年に1度の割合で派遣してきました。さらにUNDOFの司令部要員として派遣されている自衛官2名は、輸送などの後方支援分野に関する企画・調整などの業務を担当しました。UNDOFへの派遣期間は当初2年をめどとされていましたが、国連からの強い要請などもあり、逐次延長されてきました。しかしシリア・アラブ共和国の情勢悪化により、2012年12月に現地からの撤収が決定。当時は民主党政権でしたが、防衛大臣が安全保障のスペシャリストである森本敏氏だったことは、撤収の決断やその後の迅速な撤収作業、そして情勢が悪化する現地からひとりの犠牲者を出すこともなく全員が無事に帰国する結果に、大いに関係したと思います。
●国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)施設部隊 2002年2月~2004年6月 ※2002年5月以降は国連東ティモール支援団(UNMISET)に継続参加 2287名
※国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)が行なう国連平和維持活動への参加要請を受け、2002年2月から自衛隊の派遣。第1、2次派遣施設群それぞれ680名は6~7カ月間、道路・橋などの維持補修など後方支援分野の業務を実施しました。自衛隊の行なう国連平和維持活動における過去最大の人員派遣で、初めて女性自衛官も派遣された活動です。派遣施設群は現地住民との交流も活発に行ないました。なお、海上自衛隊の輸送艦や航空自衛隊の輸送機などが、人員・資器材の輸送と補給支援を実施。その後はUNTAETの後継である国連東ティモール支援団(UNMISET)で活動を展開しました。
●国連ネパール政治ミッション(UNMIN)軍事監視要員 2007年3月~2011年1月 24名
※国連からUNMINへの軍事監視要員派遣の要請を受け、軍事監視任務を実施したものです。国連の規定に従い、武器は携行していません。
●国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)施設部隊  2010年2月~2013年2月 約2200名
※ハイチ大地震災害に対する緊急の復旧、復興、安定化に向けた努力を支援するため、ハイチ派遣国際救援隊を編成してMINUSTAHへ派遣。施設部隊は重機類を含む多数の車両を装備し、地震によって発生した大量の瓦礫の除去、難民キャンプの造成・補修作業、ドミニカ共和国との国境へ通じる道路の補修作業、市内道路や倒壊した行政庁舎の瓦礫の片付け、孤児院施設の建設などを実施しました。
●国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)軍事連絡要員 2010年9月~2012年9月 8名
●国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)施設部隊 2012年1月~現在
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成28年(西暦2016年)2月18日配信)