自衛隊海外派遣の歩み (11)

先週はPKOの歴史について触れました。では、国民のPKO業務に対する意識と自衛隊への関心は、どのように変化していったのでしょう。内閣府による「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」で、その推移をたどってみます。
1993年度は、自衛隊が初めて国連平和維持活動に参加した翌年に当たります。
自衛隊・防衛問題に対する関心は、半数を超える人が「関心がある」と答え、自衛隊に対する全般的な印象は、「良い印象を持っている」「悪い印象は持っていない」が77%と、前回調査の1990年度の調査に比べ9%増加しました。「今後の国連平和維持活動への参加」については、「賛成」「どちらかといえば賛成」が48%だったのに対し、「反対」「どちらかといえば反対」が31%でした。
2002年度はテロ対策特措法に基づき、インド洋で海上自衛隊による燃料・水の補給支援活動が引き続き行われていた年です。
自衛隊の全般的な印象は「良い印象を持っている」「悪い印象はもっていない」が80%と、自衛隊に対する肯定的な評価が着実に定着してきています。「今後の国連平和維持活動への参加」については、「賛成」「どちらかといえば賛成」が70%と大きな割合を占めたのに対し、「反対」「どちらかといえば反対」は13%にとどまり、賛成派が大幅に増えました。
このような国民の意識変化は、カンボジアPKOへの参加から10年以上を経て、国民の国際平和協力に対する理解が深まったためと考えられますが、同時に、自衛隊の業務に対する真摯な態度と能力の高さが認められた結果でもあります。国際貢献のために汗を流す隊員たちの姿を見ているのは、海外だけではないのです。
では、最新のものである2014年度の自衛隊・防衛問題に関する世論調査ではどうなっているでしょう。
自衛隊に対する全般的な印象は、「良い印象を持っている」「悪い印象は持っていない」が92.2%です。
首相から「日陰者」と言われ、国民から「税金泥棒」と責められ、異動先では住民票の登録を断られ、大学への入学を拒否された時代があったことを思うと、今や国民の9割以上が自衛隊を支持しているという事実は、なんだか泣けます。広報下手、アピールも苦手な自衛隊は、黙々と任務を遂行する姿を積み重ねることで、ここまで国民の信頼を得たのです。
ほかの回答も見てみましょう。
自衛隊・防衛問題に対する関心は「関心がある」 71.5%
これまでの自衛隊の海外での活動について「評価する」 89.8%
災害派遣活動について「評価する」 98.0%
自衛隊による国連PKOへの参加や国際緊急援助活動などの『国際平和協力活動』については、
「これまで以上に積極的に取り組むべきである」 25.9%
「現状の取り組みを維持すべきである」65.4%
「これまでの取り組みから縮小すべきである」 4.6%
「取り組むべきでない」 1.0%
「現状の取り組みを維持すべきである」は、前回の61.3%より増加しています。
自衛隊が存在する目的は何だと思うかという問いには
災害派遣 81.9%
国の安全の確保 74.3%
国内の治安維持 52.8%
国際平和協力活動への取組 42.1%
という順になりました。
ちなみに、「自衛隊はどのような面に力を入れていったらよいか」という問いも、「自衛隊が存在する目的」の回答と同じ順序となっています。ただし前回の調査結果との比較では、「国際平和協力活動への取組」を挙げた者の割合が低下(43.5%→35.7%)、「国内の治安維持」は上昇しました(41.7%→48.8%)。この傾向は、おそらく今後も続くのではないでしょうか。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成28年(西暦2016年)2月11日配信)