潜水艦とソナー

■アクティブソナーとパッシブソナーの違い
音を発信し、その音が対象物に跳ね返ってくることで対象を探知するソナーのことをアクティブ・ソナーと呼びます。
護衛艦などで「ピ~ン、ピ~ン」と音を出しながら航走しているのはこれです。
病院でお腹の中を診る超音波診断装置と同じ原理です。
その他にパッシブ・ソナーもあります。
これは潜水艦や水上艦艇の出す音を探知、受信します。
水測員が直接に音源の方向と音色を聴くことが出来ます。
潜水艦は自分から音を出すと敵に見付かるので、アクティブ・ソナーを使うことは殆どなく、もっぱらパッシブ・ソナーを用います。
アクティブ・ソナーに比べて倍以上の遠くから目標を探知できます。
目標の方向は容易に分かりますが、距離を知るには特殊な技術が必要です。
■音の識別
昔は音を耳で聴くだけでしたが、今では分析して目で見るようになりました。
個々の潜水艦の各機器によって発生する音が微妙に異なりますので、その音紋を解析して事前に収集してあるカタログ・データと比較すれば個艦名まで分かります。
また、艦船の出す音は外洋では非常に遠くまで伝わるので、別々の場所に置かれた複数のハイドロフォン(水中マイクロフォン)で受信すれば、到達時間差から音源の位置を計算できます。
ハイドロフォンには艦艇に搭載されたもの、航空機からブイで撒くもの、海底に設置されているもの、等があります。
先日のロシア潜水艇に絡まったケーブルはこの水中固定機器と思われます。
さきに「事前に収集してあるデータ」と書きましたが、この収集がたいへんです。
各国は相手国の新造潜水艦の公試の段階から、原潜をその海面下に潜ませて音紋を盗み聴く努力をしています。
昨年中国原潜の領海侵犯事件がありましたが、原潜の相手国領海の侵犯は日常茶飯事で、探知できない方が間抜け、というのが各国のホンネの常識です。
帰国した中国原潜の艦長は、侵犯したこと故ではなく、探知されたこと故に大目玉を喰らったに違いありません。
潜水艦の側でも雑音を外に出さないように、いろいろな対策が施されています。
一番難しいのはモーターのような回転体の震動を消すことです。
■対潜攻撃~爆雷はもうないの?
爆雷とは・・・話が古いですね。(^-^;)
爆雷は、爆発深度を調定してから敵潜水艦の真上に落とす必要があるのですが、危害半径が20m程度しかないので、命中精度が悪くて実用的ではありません。
(心理的威嚇効果は大ですが……)
海自ではもう使用していません。
現代の武器はホーミング魚雷という自分で潜水艦を見付けて追いかける「お利口魚雷」を空から落とします。
哨戒機やヘリから投下する場合や、アスロックというロケット・ブースターで飛ばす方法が普通ですが、敵潜水艦が護衛艦の近距離にいる場合は映画「亡国のイージス」に出てきたように、舷側の短魚雷発射管から直接に打ち出します。
なお、自艦にはあたらないような仕掛けになっています。
潜水艦の探知にはソナーの他にMADという磁気探知機もあります。
P-3C哨戒機の尾翼の後に突き出た棒の先端に付いていますし、対潜ヘリにも装備されています。
海中に鉄の塊(潜水艦)がいると反応するので、そこで上記の魚雷を落とすわけです。
■潜水艦は、自らに迫る危険をどう探知するの?
音はソナーで、電波はESM(電波逆探分析装置)で探知します。
ごく短時間ですが潜望鏡を水面に出しているときは目視や赤外線も貴重な情報です。
–「軍事情報」号外050903–