メールマガジン「軍事情報」のホームページ

創刊2000年10月のメールマガジン「軍事情報」です。

非常事態宣言と戒厳令の違い

time 2007/11/24

「日本列島波高し」より
http://yosoro.okigunnji.com/?cid=19711
まず、非常事態宣言ですが・・・
これは予想を超える大きな災害や予期しない事件で、事前に想定されている程度の対策では充分でなく、かつ通常の「平時モード」法律によるだけでは有効な対処ができないような事態が続出した事態に至ったとき、臨機の処置をとる権限を行政府に認める「非常時モード」に切り換える制度ですね。


この制度はあくまで事前に「非常時モード」法体系で「出来ること、出来ないこと」等の許容範囲が定められているべきで、已むを得ず事前に許容した範囲を超える施策を行う場合には国会の議決を経る必要があります。
つまり、大前提として国家の三権が(一時的、局所的には欠けるとしても)全体としては機能していることが想定されているのではないでしょうか。
もちろん許容される範囲は様々で、ナチスドイツのように議会が政府に全権を委任すれば次に述べる戒厳令を含めて「何でもあり」状態にもなり得ます。
一方、戒厳令の発令ですが・・・
これは「本来は」国家の三権が機能できないような事態を、それが回復されるまで暫定的に、軍政によって乗り切る手段ですね。
もっと有り体に言えば「軍隊による国家権力の一時的占領」です。
例えば、(現在の日本国憲法にはありませんが)世界中の「普通の国」では元首なり議会なりが「戦を宣し」「和を講じる」ことを憲法等に定めています。
しかし、もし首都が核兵器で奇襲されればその両者とも一時的に存在しなくなるかもしれません。国土、国民は存在しても国家機能は壊滅しているような状態です。
このように「敵と戦え」という命令を出すべき政権中枢さえも消滅しているような場合、前述の「非常時モード」への切換もできないわけで、もし戒厳制度がなければ国家としてはなすすべがありません。
この例は極端ですが、ことほど左様に戒厳令とは「国家機能に重大な欠落が生じた場合に発動される、一時的、合法的なクーデターもどき」と言えるかもしれません。
以前に「自衛隊をめぐる不条理」の話で書きましたが、軍隊の本質は「国内法の機能し得ない場面で活動できる」ことにあります。
本来軍隊の行動を規定するものは最高指揮官の意志と確立された国際法だけです。
そのため軍事刑法等の軍規諸令達も法律ではなく、最高指揮官(国王や大統領)からの命令の形で出されているのが普通です。議会で議決された法律では指揮官の権限で臨機に変更することができないからです。
(ちょっと道草:英国海軍の軍人が「この無精髭は女王陛下が許可した」と威張っていますが、これも上記の海軍刑法などの記された
“Queen’s Regulations for the Royal Navy” (*)の中に書かれています。ビクトリア女王が艦内の真水節約のために許可したそうです。)
幸いにも軍隊には指揮官に事故あるときに指揮権を委譲・継承すべき順序が事前に、上は国家元首たる最高司令官から下は末端の兵士に至るまで、明確に定められて周知されています。如何なるときにも、部隊の所在や規模にかかわらず、誰が指揮官(意志決定者)であるかは常に明白です。
更に加えて、他に依存せず独自で任務を遂行できる能力(自己完結性)を具備しています。
これ等の特質を使って「やむを得ず、臨機の処置として、軍隊により国家機能を維持する」、これが戒厳令の発令になるわけです。
なおこの観点から見ると戦前の我が国の戒厳令は2.26事件のみが該当しますね。
日比谷事件や関東大震災は当時の警察力の補完(当時は機動隊がなかった)に過ぎず、現在の自衛隊の治安出動と同じ性質のものではなかったかと思います。
先の大戦中は、東京大空襲のような関東大震災を凌ぐ戦災下でも国家機能が正常に活動していたので、戒厳令は発令されませんでした。
以上、ヨーソロの管見です。繰り返しますが、明白な根拠は・・・ありません。
それにしても、世界中至るところで非常事態宣言や戒厳令が見境なく乱発されていますね。
(*)“Queen’s Regulations for the Royal Navy
(ヨーソロさま)
(2005.05.08配信 「軍事情報号外」より)


sponsored link

down

コメントする




CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

その他

英霊来世

メルマガ購読・解除
 

自己紹介

おき軍事

おき軍事

軍事に関する歴史から技術、戦略・指揮統率、こぼれ話、今の自衛隊事情、インテリジェンス、そして軍事英語まで。軍事に関わる全てのことがらをカバーしている日本唯一の無料総合軍事メルマガです。配信はほぼ毎日。 執筆者は、将軍、提督、元米軍士官、軍制史の権威、ベテランライター、インテリジェンスのプロ、防衛問題研究家など。20年の歴史を持つメルマガならではの、他では得られない粒ぞろいの陣容です。 冷戦構造の崩壊を契機に、千年に一度レベルの大激動時代に入った世界でわが国がサバイバルするには、国民レベルで「現代の武」をわきまえておく必要があります。 それに資する情報を無料で伝えています。

作戦司令部の意思決定ー米軍「統合ドクトリン」で勝利するー

日米中激突! 南沙戦争

情報戦と女性スパイーインテリジェンス秘史ー

猫でもわかる防衛論

『日の丸父さん』石原ヒロアキ


「日の丸父さん」(1)
「日の丸父さん」(2)

脚気と軍隊ー陸海軍医団の対立ー

検証 危機の25年ー日本の安全保障を真剣に考えるー

メルマガ登録

ガントリビア99―知られざる銃器と弾薬の秘密―

図解 孫子兵法ー完勝の原理・原則ー

中国戦略”悪”の教科書ー「兵法三十六計」で読み解く対日工作ー

オリンピックと自衛隊 1964-2020

中国が仕掛けるインテリジェンス戦争ー国家戦略に基づく分析ー

「地政学」は殺傷力のある武器である

戦略的インテリジェンス入門ー分析手法の手引きー

新史料による日露戦争陸戦史ー覆される通説ー

大東亜戦争と本土決戦の真実ー日本陸軍はなぜ水際撃滅に帰結したのかー

誰も語らなかった防衛産業

日本人はどのようにして軍隊を作ったのかー安全保障と技術の近代史ー

あなたの習った日本史はもう古い!ー昭和と平成の教科書読み比べー

兵法の天才 楠木正成を読むー河陽兵庫之記 現代語訳ー

インテリジェンス

アーカイブ

あわせて読みたい

あわせて読みたい

人気の検索キーワード

最近検索されたキーワード

カテゴリー

sponsored link

メルマガ購読・解除
軍事情報
   
バックナンバー
powered by まぐまぐトップページへ


「日の丸父さん」(1~12話)
高速バスの予約 icon