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佐藤守 自衛隊の「犯罪」 雫石事件の真相!青林堂

time 2012/07/22

本著の版元・青林堂の社長さんは著者の申し出に対し、

<空自の汚名を晴らしましょう>

と出版を快く引き受けたそうです。

取締役さんは
<字数にこだわらず、思いのたけを書いてください>とおっしゃったそうです。

不覚ですが、これを書きながら視野がぼやけています。

いわれなき誹謗中傷が加えられても沈黙を守っていると、それが真実として歴史に定着しかねません。追伸で紹介しているヨーソロさんも、2005年に書かれた一文で、同様の言葉を残されています。

本著の原稿は、著者が自衛隊退官後すぐに出来上がっていたそうです。しかし、古い件を扱ったものだから売れない、という判断からこれまで出版できなかったそうなんです。まあ無理もないことです。

そんななか、<空自の汚名を晴らしましょう>とおっしゃった青林堂の社長さんはご立派です。

本著を世に出し、読み手にやさしい作品に仕上げた著者と青林堂さんに拍手を送ります。

平成23年5月11日
横浜地裁は、「あたご」事故(H20/2/19のイージス艦「あたご」とまぐろ延縄漁船の衝突事故)につき、被告となった海上自衛官二名に対し無罪の判決を言い渡しました。

裁判長は判決理由で「検察提出の漁船航跡図のずさんさ」「漁船側の証言を検察は恣意的に用いている」「あたごに回避義務なし」「事故原因は漁船にある」とし、検察の捜査そのものに疑問を投げかけました。

無罪となった二人の海上自衛官は次のような言葉を残しています。

<真実に向き合わず、われわれを断罪しようとした横浜地検を許すことは出来ない>

<検事は法律と捜査のプロ。(航跡図などで)平気で嘘をついており、許せない>

<地検は有罪ゲームに勝つだけの組織なのか?公益の代表者とは何か、判決を読み返して考えてほしい>

この判決を見た著者は<雫石事件もこうあるべきだった。と感慨深いものがありました>(P8)と述懐します。

このとき裁判長が批判した「検察による恣意的な証言採用」はそっくりそのまま、雫石事故における事故調査委員会、検察、裁判所に対する批判に当てはまるからです・・・

雫石事故

あなたは、雫石事故のことをご存知でしょうか?

よほど関心があるひとは別ですが、一般的には、「何の落ち度もない全日空機に自衛隊機が衝突し、全日空機の乗員乗客全員が死亡した”事件”」と捉えられています。

結果パイロットは無罪になったのですが、指導教官が有罪となりました・・・

しかし、真実は違うものでした。「刑事事件」と「民事事件」で原告と被告が百八十度違ったこと。これが、本事故処理の本質をつかむキモだったんです。

本著を読むと、自衛隊の無罪を改めて確信し、安心できます。豊富で具体的な知識を通じ、誰に対しても雫石事故の真相を胸を張って伝えることができます。

本著の目標は、航空機事故の未然防止に資するため「雫石事故の真実」を国民の前に明らかにすることです。

目的は、この奇妙な「犯罪」が冤罪であることを証明し、人身御供として犯罪者にさせられた故・隈1尉の無念を晴らすことです。

著者からいただいたメッセージには、

<事故調査報告書と裁判記録の難解な表現を極力平易にして事故の経過を浮き彫りにしてみましたが、私は”当事者の一人”ですから愚痴の羅列だと取られないよう、公刊資料を中心に解説する形を取りました。>

とあります。

言葉にたがわぬ、冷静で、正直で、読みやすい書です。
空中行動の何たるかを熟知するプロが、雫石事故という題材を通じ、空中行動の現実・意味を読者に啓蒙する内容ともなっています。

今後同様の事故がおきた場合、事実をどう判断したらよいか?そして、同種の事故を起こさないためにはどうすればいいか?に応えるヒント満載の資料集ともいえます。

資料性、信頼性が高く、手に届きそうで手に入らなかった雫石事故の真相を提供してくれ、謎解きよみものとしてもおもしろい。
ありそうでなかった本です。

資料性・信頼性・具体性・有機性いずれをとってもトップクラスです。

戦後日本における対情報戦の一つの勝利といって差し支えない成果とも考えます。

http://tinyurl.com/cgdau4c

オススメポイント

馴染みのない法廷論議や空中行動に関する内容なのですが、とてもとっつきやすいです。この本。

なぜかといえば、冷静沈着で明るい著者の姿勢を通じ、謎解きを一緒に愉しもうという雰囲気が全編を通じて漂ってくるからです。

不謹慎かもしれないですが、ミステリー小説を読むワクワク感を覚えます。

なかでも、「ここだけは落として欲しくない」オススメポイントは次のとおりです。

●再審請求も一つの手だとは思います。しかし、隈1尉の思いを無には出来ません。なぜでしょうか?
理由を知りたい方はP285をご覧ください。

●有罪判決を受けた隈1尉の同期・管3佐は、家庭も、時間も、プライベートの全てを投げ打って1尉を支援しつづけました。空中行動への無理解にもどかしい思いをしつづけてきた3佐が第一審判決後に同僚と後輩に配った檄文があります。エンリケも号泣した「菅3佐の檄文」の全文を読みたくないですか?P287~292で読めます。

●訓練中の航空学生レベルでは、これらのことは水平直線飛行中にしかできないんです。「これらのこと」が何か知りたいですか?P112をお読みください。

●常識はずれの航空専門家・・・・P118でご確認ください。

●全日空58便は、アウトバウンド・トラッキングをしていなかったそうです。詳細はP122~128でどうぞ。

●雫石事故の裁判で各級の裁判官が示した卑劣な態度・・・P136~137

●記者会見の席上で事故調査報告書を改ざんした委員長とは?P138~141でご確認ください。

その他の中身も見てみましょう

目次

はじめにー「雫石事件」を知っていますか?・・・6
 一、イージス艦「あたご」事件の裁判で被告は”無罪”
 二、露呈した運輸安全委員会を抱える国交省の体質
 三、「航空機事故『補償』の今昔後日談」(週刊新潮:昭和60年3月14日号)
 四、冤罪はなぜ起きた?・・・足利事件などの教訓

プロローグ 不思議な決着・・・29

序章 事故発生同時刻、わたしは『エマージェンシー』コールを聞いた・・・39
 一、築城基地へ出張
 二、原隊に復帰
 三、富士市対策本部で勤務
 四、大いなる不満
 五、飛行訓練再開
 六、雫石事件直後の部内の反響
 

第1章 事故に至る経緯・・・67
 一、千歳基地に着いたB727
 二、松島基地の「第一航空団松島派遣隊」

第2章 空域の状況・・・81
 一、問題が多い日本の空
 二、松島派遣隊と臨時訓練空域の設定
 三、朝日新聞記者の冷静な分析
 四、航空路及びジェット・ルートとは

第3章 運命の離陸・・・105
 一、千歳発・全日空58便
 二、松島基地離陸・86F編隊

第4章 全日空58便の飛行状況・・・121
 一、進路の選定は?
 二、三沢基地北部方面隊・BADGEの軌跡との比較
 三、遅れたクルーの昼食

第5章 全日空機操縦者の「見張り」について・・・143
 一、視認していてなぜ回避操作を取らなかったか?
 二、読売新聞の”再現記事”
 三、「視認」に関する双方の意見
 四、”接触”その時何が?
 五、機長はヘッドセットをつけていたのか?
 六、全日空機側の操縦勤務の実態

第6章 58便の飛行コースの検証・・・197
 一、飛行計画書
 二、根拠が崩れた「接触地点の逆算」方式
 三、目撃者の証言
 四、全日空側が提出してきた「8ミリフィルム」の怪
 五、責任の比率「6(防衛庁)対4(全日空)」が高裁では「2対1」への怪!

第7章 事故の真因・・・235
 一、全日空機側の見張り義務違反
 二、全日空機の航路逸脱
 三、全日空機側の航空法違反
 四、「結論=100%全日空機側の過失」

第8章 政府高官の奇妙な発言と最高裁「自判」の怪・・・239
 一、政治とメディア
 二、田中議員の指示?
 三、噴出したロッキード事件と国策調査?
 四、事故調査総括責任者の怪!
 五、笠松好太郎氏と若狭得治会長
 六、全日空社の社長人事(若狭得治氏の別評価)

第9章 情報戦に弱い航空自衛隊・・・269
 一、不運な航空事故多発と脇の甘さ
 二、巧妙な朝日の連係プレイ
 三、空自の人的変遷と世代交代
 四、心を打った管三佐の檄文

エピローグ・・・295
あとがき・・・306

執筆者紹介

佐藤守(さとう まもる)
軍事評論家の退役軍人。元南西航空混成団司令、元空将。
樺太生まれ福岡育ち。防大卒(航空工学 7期)。
学生時代から「サムライ」の評価を受けていた。

空自に入隊し、戦闘機乗りとしてスクランブル任務に就く。総飛行時間は3800時間。外務省出向、7空団305飛行隊長(百里)、空幕広報室長、空自幹部学校戦略教官、3空団司令兼ねる三沢基地司令、4空団司令兼ねる松島基地司令、南西航空混成団司令兼ねる自衛隊沖縄連絡調整官を歴任し、1997/7退役。

退役後は軍事評論家として、岡崎研究所理事・特別研究員、平河総合戦略研究所専務理事、国家基本問題研究所評議員、日本兵法研究会顧問などを歴任。

現役時代から文筆面で高名。
退役後はじめたブログは、日本最大の国防啓蒙ブログとして、各界から高い評価を受けている。

著書
『国際軍事関係論─戦闘機パイロットの見つづけた日本の安全』(かや書房、1998年)
『図解 これが日本の戦争力だ!』(実業之日本社、2006年)
『金正日は日本人だった』(講談社、2009年)
『実録・自衛隊パイロットたちが接近遭遇したUFO』(講談社、2010年)
『日本の空を誰が守るのか』(草思社 2011年)
『ジェットパイロットが体験した超科学現象』(青林堂 2012年)

雫石事件の真実を、多数の資料・事実を積み上げる中で掴み取るという読み方だけでは、正直、本著を半分しか味わえていないと感じます。

対情報戦という観点から、いかに世論形成・謀略・アジ・情報工作に対処するか、という問いに「雫石事故」というケーススタディの中で応える書でもある、と私は思っています。

対情報戦のエキスを学ぶ。あなたにはぜひ、こういう読み方をしてほしいです。

(エンリケ)

『自衛隊の「犯罪」 雫石事件の真相!』

著:佐藤守
単行本: 312ページ
出版社: 青林堂 (2012/7/18)
言語 日本語
ISBN-10: 4792604516
ISBN-13: 978-4792604516
発売日: 2012/7/18
商品の寸法: 19 x 13.2 x 2.8 cm

http://tinyurl.com/cgdau4c

【参考】

雫石事故への対応については2005年に、ヨーソロ様のご意見を配信したことがあります。参考までに、一部ご紹介します。

——————————————-
「日本列島波高し(9)」2005/11/11配信
”政府の国際広報活動 ~「それは違う!と言える日本」への脱皮を!~”より

・・・・

(前略)

「雫石事件」と「なだしお事件」の苦い経験

 これに関連して思い出される自衛隊在職中の苦い記憶があります。1971年の「雫石事件」と1988年の「潜水艦なだしお事件」です。

 雫石事件は「全日空の旅客機と航空自衛隊の戦闘機が空中衝突」した事件で、「民間航空路を飛行中の全日空機に戦闘機が侵入して衝突」、「両者は墜落して旅客機の乗員乗客は全員死亡」したのに「戦闘機のパイロットが射出座席で脱出して助かったのはケシカラン」、という論調の報道が全国に流されました。

 また潜水艦なだしお事件は「遊漁船第一富士丸と潜水艦なだしおが衝突」した事件で、「航路航行中の遊漁船に航路横断中の潜水艦が衝突」、「遊漁船は沈められ乗客30名が死亡した」のに「潜水艦側が助けなかったのはケシカラン」、という論調の報道でした。

 両方の事件とも長期の裁判や海難審判があり、初期の不正確で偏った報道の誤りはその後に相当に明らかになりましたが、当初の報道の誤った情報は未だに多くの国民のイメージに残っています。誤報の判明した実例を夫々一つだけ挙げれば、「旅客機のスピードの方が速くて戦闘機(古い型を練習機として使用していた)の背面に衝突したこと」、「遊漁船客女性の一人がマスコミに再三語って大きく取り上げられた内容の殆どが真っ赤なウソだったこと」などです。

日本のマスコミはアジテータ

 話が横道に逸れますが、同様の過熱報道は1974年の原子力船「むつ」の放射線漏れ事故の時にも生じました。

 このとき洩れた「放射線」の強度は胃のレントゲン撮影時の被曝量の約1/500と少なく、原子炉上部の甲板に「ここでは立ち止まらぬこと」とでも書いておけば充分に安全な程度であったのです。それにも拘わらず、マスコミは「放射能が洩れた」と誇大に騒ぎ立てて漁民を煽り、「むつ」を60日以上洋上を漂流させたうえに、技術立国の貴重な先進産業として有望な知的財産になったかも知れない核動力技術を潰してしまいました。この時の国民のトラウマが今度の原子力空母の横須賀母港化反対にも出ているように思われます。

 日本のマスコミの軍事的あるいは技術的な専門知識の欠如は目を覆うものがあります。特に事件が発生したときに担当する「社会部」記者の人達の発想や態度は、およそ専門的正確さや客観的中立的立場とは程遠く、センセーショナルさを競うアジテータのそれであるように思えます。

防衛庁・自衛隊が得た広報に関する教訓

 話を元に戻して、防衛庁・自衛隊が関わった上述の二つの事件の場合、それ以前の不祥事とは異なる事情がありました。それまでの事件や事故の多くは事実関係や因果関係が比較的に単純明白で、相手関係者も少なかったのです。自衛隊は毎度のようにマスコミの偏向報道と罵詈雑言の非難を浴び、ひたすら黙してそれに耐えることで事態の沈静化を図ってきました。警察予備隊発足以来の「もの言えば唇寒し秋の風」が染みついていたのです。

 ところが「雫石事故」や「なだしお事件」は自衛隊以外の民間被害者やその関係者が多数に上り、過熱したマスコミの取材は口の重い防衛庁側よりも、気軽にインタビューに応じるその人達の方に殺到したのでした。そして連日、数々の虚言、誤報がさも事実のごとく報道されましたが、自衛隊はそれらに耐えて殆ど反論もせず、一方的に悪者にされました。そしてそれは更に悪い結果を生み、裁判にも影響を与えたのです。

 海空自衛隊はこの両事件から永年信じてきたものが間違っていたことを悟りました。「黙っていても分かる人は分かってくれる」男の美学も、「何れ裁判になれば真実が明らかになる」公明正大も、今ではもはや通用しない。「主張すべきはキチンと主張し、嘘や誤解はすぐに反論しなければ、相手の嘘も真実と見なされて流布してしまう」ことを痛いほど思い知らされたのです。改めて思い起こすのは、第二次大戦中の米海兵隊の戦訓の一つ「指揮官達は敵を恐れるよりもプレスの連中を恐れた」ことでした。

(後略)
——————————————-

本著で佐藤さんは、あたご事故の自衛官無罪確定について、

<今までの”愛される自衛隊”は、メディアにたたかれると卑屈にも沈黙して、身内を人身御供に供して一時しのぎ的にその場を逃れる傾向がありましたが、これからはそうはいかなくなるでしょう。

一国の”軍隊”が軍事的常識に欠けた組織によって調査され、メディアの意図的?な反自衛隊報道で一方的に”犯人扱い”されてきた自衛隊側が、今回初めて”勝った”のですから・・・>(P9)

と記されてます。


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