【第79講】スペイン語文法入門―兵法的外国語学習への誘い―(その57)

今回は、一見ややこしいと思ったでありましょう”比較(基礎編)”について学んで
いきましょう。実は、スペイン語の比較の表現は、英語のmore~than~と同じ表現に
なっていたりしますので、本当は難しくはありません。

では、始めましょう。
☆比較(comparacion)とは?
先ず・・・二つ以上のものがあります。
そして・・・どちらか一方のことについて、その量、質等に「付加的な意味」を
“増”・”減”して「変容」(modificacion)する表現・・・これが比較の表現の根本で
す。
比較するからには、その際・・・必ず「対照」(コントラスト contraste)という言葉
とは違うものであることを認識しておきましょう。
例)”色”のコントラスト→青: 空と海について(同じ青であるが違う青が存在する)
比較とは、上述の”対照”とは異なり、量・質について話者が判断することになりま
す。
即ち・・・
「一方が他方ヨリ~である」
ということで”同じ”ではなく、どちらか一方を”選り(好み)”することがその正体
となっているのです。
日本語では、「~より」(名詞ヨリ→君より、大阪より)、「より~」(ヨリ名詞→よ
り美しい、より速い)という言い方をしています。
☆基本的な考え方
繰り返しますが・・・「比較」ということは、常に二つ以上のものが話者にとって対象
とされているということです。
そして、これら二つ以上のものを・・・共通の基盤で「その多少、大小、善悪などどち
らかを選ぶ」ということをするのです。
☆スペイン語での比較表現の種類
スペイン語では:
優等比較(甲は乙より~です)
劣等比較(甲は乙よりヨリ少ナク~です)
同等比較(甲は、乙と同じぐらい~です)
の三つに分類しています。
比較の表現は、広義に解釈すれば、その他に「~倍ある」、「~と似ている」、
「~を選ぶ・選択する」、「大変~である」、「好んで~する」というような表現も
あります。
☆スペイン語の比較表現
スペイン語では、名詞、形容詞、副詞にそれぞれ「比較」の表現(より~です)があり
ます。
その特徴としては、英語では”比較級”という語尾変化を用いた”加増的”な表現のみ
の比較でした(less~than ~という減劣の表現もありますが、ここでは、形容詞や
副詞が語尾変化をすることに注目しておいてください)。
しかし・・・スペイン語では、次の二種類がペアになっています。
優等比較:意味がプラス的になる → masを形容詞・副詞の前に置く
(英語の ”more~than~”と同じ語順)
(優等比較は、頻度の上で圧倒的に多く用いられる)
ex. Carman es mas bonita que Isabel.
(カルメンは、イサベルよりもかわいい。)
これは、元々、Carmen es mas bonita que Isabel es bonita.という複文(二つの文か
ら構成される一つの文)であったのでした。
即ち、que(“than”=名詞節の接続詞”that”と同じもの!)は・・・といえば、
Yo espero que comprendas pronto.(君がすぐに理解するコトヲ期待しているよ)とい
う接続法の表現のところで学んだqueと同じ・・・名詞節を導く接続詞のqueなのです!
よって、Carmen es mas bonita que Isabel es bonita.は、左から右に解釈すると理解
しやすいのです。
カルメンは、よりかわいいです。イサベルがかわいいトイウコト二対シテ。
となります。
よって、queの後ろには主格が来ますので、もし、「私よりかわいい」のならば・・・
Carmen es mas bonita que yo.
となるのです。(英語でも、ex. Elizabeth is more beautiful than “I”.でした
ね。)
劣等比較:その意味がマイナス的になる → menosを形容詞・副詞の前に置く
(英語なら”less~than~”が相当します)
(頻度の上では、優等比較の使用に比べて約一割程度となっている)
ex. Carmen es menos bonita que Isabel.
(カルメンは、イサベルほどかわいくない。)
これも複文で考えてみると理解しやすいのです。
Carmen es menos bonita que Isabel es bonita.
カルメンは、より少なくかわいいです。 イサベルはかわいいトイウコト二対シテ。
直訳→カルメンはイサベルより少なくかわいいです。(この言い方ではケンがあります
ね)よって、「~程~でない」と訳し直してください。
和訳→カルメンは、イサベルほどかわいくない
ちなみに・・・
英語では、単音節の形容詞や副詞(ゲルマン語起源が多い)に「比較級・最上級」と
いった「級」という言葉を使用して、それらの語尾に接尾辞 -er, -estを付けて形成さ
れることがありました。
そして・・・英語では、三音節以上の形容詞や副詞(ラテン語起源が多い)には一切、
語尾変化を行わず・・・その代わりに比較するために意味を強調したい形容詞の前には
“more~”,”the most~”を付けていました。
スペイン語の比較には、「級」という変化語尾を付けることはなく、むしろ英語のよう
に三音節以上の比較表現である、more~, the most~と同じ様式が見られます。
A)Tokio es mas grande que Manila.
(英語で表現するなら→ Tokyo is bigger than Manila.という言い方)
B)En Tokio hace mas frio que en Manila.
(英語で表現するなら→ In Tokyo it is colder than in Manila.という言い方)
一般的には、日本人ならば、日本語の発想がありますから・・・
下のB)の方をTokio es mas frio…としたくなるところです。が、これは間違いで
す。
何故なら、Aでは、「二つの都市そのもの」を比べているのに、Bでは、「二つの都市
において気候がどうなっているのか?」という「気候について」比べているから・・・
なのです。
言語によって、このように着眼点が異なるので意味をよく見つめて、作文等においては
注意しましょう。
次回は、同等の表現、最上の表現へと進みます!
残りわずかです!がんばりましょう!
今日はここまで。
Hasta luego.