【第60講】スペイン語文法入門―兵法的外国語学習への誘い―(その38)

前回、「如何にも日本語の発想とは違う・・・スペイン語は難しい」と思ったことで
ありましょう”他律化構文”(ex. Me gusta el cine. )について学習しました。
今回は、この他律化構文の整理をしておきたいと思います。
 あなたは、ここで学ぶスペイン語の発想→ものの見方と考え方・・・そして、表現す
る際に取る手段(使用する単語の種類と文における単語の並べ方)を押さえればよいの
です。

結局、「外国語は、難しい」とか思うのは、文でどの単語を使い、どう並べるのか
(印欧語の仲間なら単語の左から右への並べ方です)がよく把握できていないからなの
です。
また、いろいろな事柄について最初に「難しい、困難だ・・・」などと考えていると
自分で簡単なものでも難しくしてしまうものです!「スペイン語は、簡単です。みんな
出来ます!この私も!」と確信すると無理も可能になって来るのです。
では、「やさしいスペイン語の他律化構文」について日本語と英語とを比較しつつ
「まとめ」について始めて行きましょう。
☆他律化構文の整理
1)行為の主体は?
・日本語:主体的に「私ハ」という主語を最初に言ってから、以下、”私ハ(主体は
自分である)”を基準として”もの・こと”の感情・心理・感覚(→好き嫌い等)を
表現します。(ex. 私は、音楽が好きです。)
・英語:あくまで、SVOの構文(他動詞を使用しています)で処理します。よって、
行為の主体は全て私にあるのです。(ex. I like music.)
・スペイン語:行為の主体は、自分にではなく、自分の外にあるものが自分に対して
感情・心理・感覚などを決定したり・・・影響したり・・・要するにコントロールの
主導権を持っています。(ex. Me gusta la musica.) 要するに・・・「私ハ」どうこう
するというのではなく、「私の感情、心理、感覚の対象となる”もの・こと”が私に~
する」という表現を行うのがスペイン語の特徴となっています。
 スペイン語の場合には、行為を主体的に=自分から仕掛けるのではなく、あくまでも
向こう側が自分に向かって行為をするというように”向きが違う”感覚で表現するもの
です。即ち、「向こうがこちらを気に入っているのだ」という感覚で表現するのです。
2)自律的/他律的
 これを理解するには、急に足が痒くなったり、お腹や頭が痛くなったりするときの
表現を観察すると、自らの意志や要求に関係なく、痒みや痛みが「私ニ(向かって・対
して)」襲ってくるのであって、自分では痒みを止めることも出来ませんし、痛みを
消すことも出来ません。痛い、痒いといったことは、自分が自由にコントロール出来る
ものではないのであり、どうしようもありません。
 物事にはこのように自律的にコントロールが可能な種類とあくまで自律的なことが
不可能な種類、即ち、他律的な種類があることを認識しておいてください。スペイン語
は、他律的な種類の事柄を”表現する手段”をことさらな習慣として持っているの
だ・・・と理解しておきましょう。
 あなたは、戦略を考えるとき、この自律的/他律的という言葉の意味を踏まえて
策定すると・・・意外と今までに気が付かなかったところに気がつくようになるでしょ
う!
☆他律化構文で使われる動詞
 他律化構文で使われる動詞を分類すると・・・日本語では:
「甲ハ、乙ガ~デアル」
「甲ハ、乙ニ~デアル」
 というような表現が、大体、スペイン語のgustar型動詞によって行われる表現に相当
していました。
 では、次にこのgustar型動詞を使う表現=他律化構文の形式を取る他の動詞を幾つか
見て行きたいと思います。
 あなたは、スペイン語の構文を頭に入れて、それに対応する「和訳のパターン」を
注意するだけで十分に理解の基礎が出来上がることになります。
ア)与格をとる場合:与格人称代名詞 + gustar型動詞 + 主語
 これには:agradar(うれしい)、placer(好むところである)、interesar(興味があ
る)、doler(痛む)、picar(かゆい、ひりひりする)などがあります。
ex. Me interesan mucho las artes de guerra.
(私は、兵法に興味があります。)
イ)対格をとる動詞:対格人称代名詞 + gustar型動詞 + 主語
 これには、aburrir(退屈だ)、sorprender(驚く)、disgustar(不愉快である)、
encantar(魅了する)、enfadar(怒る)、molestar(煩わしい)などがあります。
ex. Me molesta el sol.
(私は、太陽がうっとしい→私は太陽がまぶしい)
注意)他律化構文の動詞は、過不足、適否、重要性・生起を意味する動詞に多いの
です:
例)quedar(残る)、faltar(足りない)、sobrar(余る)、convenir(都合がよい)、
  hacer falta(必要である)、importar(重要である)、surgir(現れる)、
  suceder(起こる)、pasar (起こる)
ex. No me importa la tardanza.
(私は遅延が重要ではない→遅延はかまわないよ)
 前回から「スペイン語臭~い表現」が出て来ていますが、思考習慣から来る違和感を
十分に吟味しておいてください。「物の見方考え方」に興味を持ちましょう!外国語
学習での違和感とは、本当は、戦略思考、情報思考を鍛えるとても良いツールになって
いるのです!
今日はここまで。
Hasta luego.