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【第31講】 スペイン語文法入門―兵法的外国語学習への誘い―(その9)

time 2009/08/13

孫子塾副塾長・孫子塾関西支部長
同志社大学/京都外国語大学・スペイン語非常勤講師
米田 富彦
http://espania.okigunnji.com/2008/06/post-1.html
大河ドラマで「天地人」とか放映されています。が、みなさんは、人がいるか
らこそ、天と地がある・・・ことぐらいはおわかりであると思います。この
天・地・人の中で最も分かりにくいのが”人”であります。
この”人”のところを徹底的に学ぶには、『孫子塾オンライン通信講座』
http://sonshi.jp/sub10.html )をお申し込みになってください!ここで
本格的に「思想」としての『孫子』をマスターして「要するに人の生き様とは、
即ち、別の言葉で言うならば”兵法”と言うのだ!」、そして、それは「己を
知ることにあるのだ」ということを自覚して行ってください。


“人”を除く他の二つについては・・・”天”とは、大まかに気象・気候・四
季の循環・寒暖などのことであり、地とは、簡略に言えば、地理・地勢・地
形・地質などの言葉にまとめられるもの・・・これら二つは、自分の外にある
もの・・・です(よって、”人”とは自分の内にあるものを見るのが難しいの
です)。が、みなさんは、関連の気象やら地理やらの著作やサイトを閲覧して
行って、実際に自分自身が「ある時、ある所、ある条件下」で経験を積むに
越したことはありません。
しかし、このような中で、漫然としていて当たるようで当たらない、変化が時
間と正比例するところからウカウカしていられないのが「奴は、お天気者だ」
の表現に見られるような変化を基本とする天なのであります。『孫子』には、
「天とは、陰陽・寒暑・時制なり。順逆にして兵は勝なり」と第一篇〈計〉に
記載されています。天に示される事象を理解して、それの応用に知恵を出せと
いうところです。
日本武道では、特に柔術など古流武術でもきちんとした流派や師匠は、一年の
陰/陽を活用してターゲットを攻略したりする興味深い内容が伝授されたりし
ています。が、みなさんは、人生そのもの、生き様そのものが「柔術的」
(要するにルールの無い勝負・・・これが柔術のルールなのである)といった
ものに変化されることを期待しております。
この天に関わる気象ですが、もし、本格的にプロの気象予報士の資格取得など
勉強してみたり、あるいは、資格を云々するよりも気象についてじっくりと
学んでみたい・・・と言う方には、「藤田真司の気象予報士塾」
http://rojiura.jp/weather.htm )という興味深いサイトがありますので、
一度ご覧になってみてください。藤田真司氏は、同志社大学で筆者の”間接的
な”受講生(?)でありました。
では・・・本講座において、前回あたりまでですが、発音(音声面)に関わる
ところをしばらくネチネチとやってきました。
本来ならば、もっと”音素”について、より深く音声学の用語を用いて、その
“個々の特徴”に基づき、音の出される位置から、両唇音、歯茎音、軟口蓋
音・・・、音の出される様態・方法から、破裂音、破擦音、摩擦音とか・・・
分類して、例えば”pの音”や”bの音”などは、「両唇破裂音」・・・とい
うように細分化して整理し、構造と体系という言葉をじっくり考えて行くと面
白かろう・・・なのです。が、ここまでやると音声のみでもかなり専門的にな
ってしまいますし、実際のスペイン語の習得とはいささかかけ離れて来ます。
故に、音声面でさらに奥深く学びたい方には、前回紹介した小泉保著『音声学
入門』という参考文献や英語サイトですがThe International Phonetic Assoc
iation( http://www.langsci.ucl.ac.uk/ipa/ )などをご覧になってみて下さ
い。後者の方は、IPAという「発音記号」を制定している元祖の権威機関です。
音素や音韻論(音声学と区別)についてより深く知識を得ると、「対立と中和」
という興味深い概念に出会います。これは、構造主義言語学の基礎にもなって
いますし、戦略や戦術、情報などにおいて転用したいと思う方は、参考にされ
ると、大変興味深い「方法論」として活用できることでありましょう。
みなさんは、今回の名詞の学習から、何故、スペイン人はこのように世界を
切り取って、何故、このような表現の形式を取るのか・・・心に留めるように
してください。そして、日本語と比較しつつ類推してみましょう。
では、いよいよ名詞に関して解説を進めて行きます。
(31)スペイン語文法入門―兵法的外国語学習への誘い―(その9)
今回より、名詞についての説明から入って行きますが、「将来の外国語長文解
読作業の基礎とは、先ずは、ここにあり!」なのです。最初は、少し煩雑な感
じがします。が、後しばらくして(二~三ヶ月後?)習う動詞とともに、印欧
語の文法では、非常に重要なところになっていますので、一足飛びではなく
ボチボチと始めて行きましょう。
☆名詞とは?
それは、何か?と尋ねたら・・・
○具体的に手に取ってつかめる”もの”(現実世界に存在)
○頭の中で抽象的に想う”こと”(仮想世界に存在)
以上二つの異なった世界に存在しているのを合わせて、日本語では「ものごと」
と言いますが、この「ものごと」に付けられている名前です。
この「ものごと」の名前のことを文法では、「名詞(nombre ノーンブレ)」
といいます。そして、スペイン語の名詞には日本語にはない観点があり、必ず
区別され、また言葉に出て来ます。
それは、スペイン語の名詞を見ると:
a’ngel(アーンヘル)とは単に”天使”とだけ捉えるのではなく、同時に「男
性名詞・単数」という概念がついて来ます。
a’ngeles(アーンヘレス)になると、”天使”とだけ捉えるのではなく、「男
性名詞・複数」という概念がついて来ます。
vega(ベーガ)とは、”肥沃な土地”ですが、同時に「女性名詞・単数」とい
う概念がついて来ます。
vegas(ベーガス)になると”肥沃な土地”ですが「女性名詞・複数」という
概念がついて来ます。
この男性名詞・単数とか女性名詞・複数とかを示すのが、冠詞(arti’culo:ア
ルティークロ。定冠詞と不定冠詞がある)というもので、名詞に前に置かれて、
次に来る名詞の男性名詞/女性名詞、単数/複数を示します。
みなさんには、ここで、定冠詞(英語の”the”:その~)を用いて、米国の
地名にお馴染みのものを例示します。(とりあえず、発音してみましょう。)
例)
男性名詞・単数 el a’ngel(エル アーンヘル→エラーンヘルと読む)
男性名詞・複数 los a’ngeles(ロス アンヘレス→ロサーンヘレスと読む)
女性名詞・単数 la vega(ラ ベーガ)
女性名詞・複数 las vegas(ラス ベーガス)
※スペイン語の定冠詞には、男性名詞・単数(el)、男性名詞・複数(los)、
女性名詞・単数(la)、女性名詞・複数(las)があります。(英語は、”the”
一つだけで済みましたけれども・・・)
スペイン語の名詞は、必ず男性名詞/女性名詞のように「性」を、単数/複数
のように「数」を、そして、あとで詳しく述べますが「格」を持っています。
「性・数・格」この三つの”決まり事”をいまここで憶えてください。
特に「性・数」は、日本語の名詞にはない考え方です。名詞は、自分の考えを
相手に伝える最小の単位とされる「文」の中で使われます。そして、要するに、
「文」とは、日本語で言うと、『○○は、(テン)~をスル・~にナル。(マ
ル)』という”。”(マル)で区切ることのできる「一つの考えのまとまり」
のことです。
スペイン語の場合には、日本語と異なり、この「文」の中で使われている名詞
とは、いつも、「性・数・格」の三つの概念が同時に存在しています。即ち、
スペイン語には、英語で習ったような、単数/複数という「数(nu’mero ヌー
メロ)」の概念のみならず、無生物を表す名詞(もの)や”自由”だとか”平和”
とかいった抽象名詞(こと)にまで男性名詞か女性名詞かという「性(ge’nero
 ヘーネロ)」の概念が付いて回ります。
そして、英語ではあまりにも無意識でしたが、「文」の中で主語になるのか、
そうでないのか、日本語では、その名詞にハ・ガを付けて主語を表すのか、
ノ・ニ・ヲ・デ・カラを付けて目的語やその他の機能を表す・・・いわゆる
「格助詞」の働きをする「格(caso カーソ)」の概念も「語形」には現れませ
んが、いつも合わせて考えなければなりません。
この「性」や「数」や「格」は、スペイン語では、いつも名詞になくてはなら
ない「きまりごと」です。この「文法」の上で、名詞や動詞の持っている決り
ごとのことを「文法範疇」=”カテゴリー” (categori’a カテゴリーア)とい
います。
そのなかでも”名詞”に関する範疇を”名詞範疇”といいます。ちなみに日本
語の名詞には性も数もありません。これは、日本語では「性」や「数」は、
“日本語の名詞範疇”では考えられていないということです。しかし、”スペ
イン語の名詞範疇”では考えなければなりません。
日本語の格は、テニヲハのように”格助詞”が担っています。格を示すには、
名詞の直ぐ後ろにテニヲハを付けて主語(~ハ)であるとか、目的語(~ヲ)
であるとかを示しました。が、スペイン語や英語などは、この格を決定付ける
のが現在では”語順”や”前置詞”になっています。ここで、日本語の世界と
外国語の世界の違いを感じ取って行って下さい。観点を意識して言語化するこ
とは、人の集団それぞれで変異があるということですし、実際には、その集団
内においても個人個人では、また微妙に異なっているものなのです。
(英語での名詞範疇では、「性」の方は、昔に喪失してしまいました。しかし、
「数」の方は語尾に-sをつけたり、単語の中の母音が変化したりしています。
そして、「格」の方は、「5文型」でやったような”語順”やあとは前置詞が
担っていますので、今一度確認すると英語にも親しみがわいてくるでありまし
ょう。)
☆スペイン語名詞の性
スペイン語の名詞の性は、”ge’nero”(ヘーネロ)といわれます。”ge’nero”は、
「自然性(要するに生殖活動に関係する雌雄のこと)」を表す”sexo”(セーク
ソ)とは、異なり、「文法性」といいます。
この”ge’nero”は、英語の、”ジェンダー”(”gender”)という言葉と語源も意
味も同じものであり、sex(セックス:性別→オス/メスの違いは、パスポート
に明記されていますね)という言葉と区別しています。「自然性」=”sexo”とは、
肉体器官の差異=異性による生殖行為に関係するもので、オスとメスの対立が
あり、生殖(種の保存)にその目的があります。
しかし、文法性”ge’nero”の方は、そのような有機的・物質的、生物学的なもの
ではなく、名詞の中にある、役割上の種類というような「類」のことを示すも
のです。この役割上の種類とは、例えば、会社組織で「社長と専務」の関係、
軍組織での「将軍と参謀」の関係に見られるように男性的機能(父親的・主導
的・能動的)役割と女性的機能(母親的・補佐的・受動的)という職務上・機
能上の「役割分担」のことです。
警察を例にとれば、銀行強盗などの立てこもり犯や人質事件などで犯人を制圧
するために突入して、危険な戦闘行為を展開し、問題を解決する者(男性的役
割)とそれを円滑に成功させるために情報を担当したり、救急体制を整えたり、
必要機材・部品などの供給を行ったりする者(女性的役割)がいて、お互いに
一つになって、任務を遂行する”役割の違い”を云うものです。このことがジ
ェンダーです。
(よって、和製英語である”ジェンダー・フリー”とは、ジェンダーという
言葉を利用しながら、その本意として”セックス”の区別を曖昧にするような
ことです。)
ジェンダー(”gender”)のことを仏語ではジャンル(“genre”) といいます。
こちらの方は、日本語にも入っています。では、音楽の「ジャンル」という時
の「ジャンル」を考えてみてください。「あなたの好きな音楽のジャンル=音
楽の種類は何ですか?」と聞かれれば、クラッシック、ラテン、演歌、トラン
ス、民謡、ポップ、軍歌、ラップ等がでてきます。
よって、この文法性=ジェンダーのお話ですが、ここでは、「性」というより
は、むしろ「類」と考え、「名詞そのものが持つ分類上の種類」と考えておき
ましょう。
インドヨーロッパ語族の言語とは、このように名詞には必ず「性」の”分類”
があることが特徴となっています。スペイン語の場合には、男性名詞と女性名
詞の二つしかありませんが、ドイツ語やロシア語、ラテン語(スペイン語やフ
ランス語等の祖先になるもの)は、男性/中性/女性の三つの性を持っています。
英語は、昔に簡略してしまい現在に至っています。
☆自然性と文法性の違いのまとめ
○sexoは、macho (male) オス/hembra(female) メス → 生殖活動で合一
○ge’neroは、masculino 男性名詞/femenino 女性名詞 → 両者はいつも区別
ドリル-1)次の名詞に定冠詞をつけて発音してみましょう。
(1)esperanza(エスペラーンサ:”希望”・女性名詞) → 
(2)tanque(ターンケ:”戦車”・男性名詞) → 
(3)coche(コーチェ:”自動車”・男性名詞) → 
(4)can~o’n(カニョーン:”大砲”・男性名詞) → 
(5)poli’tica(ポリーティカ:”政治”・女性名詞) → 
(6)geopoli’tica(ヘオポリーティカ:”地政学”・女性名詞) → 
(7)bala(バーラ:”弾丸”・女性名詞) → 
(8)granada(グラナーダ:”榴弾”、”手榴弾”・女性名詞) → 
(9)mina(ミーナ:”地雷”・女性名詞) → 
※発音の際には、定冠詞と名詞を続けて一語のように読んで下さい。(まとま
った一つの概念を相手に伝えるので当然です。これが慣れると流暢さにつなが
るのです。)
ドリル-2)
El pasaporte, por favor. (エル・パサポールテ、ポル・ファボール)
 旅券をお願いします。(旅券を見せてください。)
El carnet, por favor. (エル・カルネート、ポル・ファボール)
 免許証をお願いします。(免許証を見せてください。)
El vino tinto, por favor. (エル・ビーノ・ティント、ポル・ファボール)
 その赤ワインをお願いします。
次回は、「数」、「格」の解説が続きます。英語とも比較してみます。お楽し
みに!
(つづく)
次回は、いよいよスペイン語の名詞についての解説が始まります。スペイン
語の名詞とは日本語の名詞とはどのような観点の相違性を有し、どのような
表現で世界を切り取るのか・・・詳しく基礎から展開して行きますので、
御期待くださいませ!


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