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創刊2000年10月のメールマガジン「軍事情報」です。

【第20講】スペイン語と印欧語世界について(その2)

time 2009/02/26

孫子塾副塾長・孫子塾関西支部長
同志社大学/京都外国語大学・スペイン語非常勤講師
米田 富彦
http://espania.okigunnji.com/2008/06/post-1.html
配信日である本日は、かの”二二六事件”の起こった日です。今を去る73年
程前の事件とはいえども、当時の日本も現在の日本も、共にその本質(格差
社会、政財界腐敗、内憂外患などなど・・・)については殆ど変わらないものが
ありましょう。
その当時・・・幕末から明治にかけての武士の遺風、即ち、ノーブレス・オブリー
ジュが消散し、賢そうで権威臭い政治経済用語を振り回す政治屋や官僚や
私益優先企業人など、公的に与えられている立場を悪用する”思い上がった
選民”が跳梁跋扈している点は共通している・・・というのは、何たる皮肉であ
りましょうか。当時も今も・・・”なりすまし武士”や”ぱちもんサムライ”の横行、
即ち、ノン・ノーブレス・オブリージュの見本市の如き様相こそ、みなさんは、
改めて眺め直してみると興味深いことでありましょう。


“二二六事件”とは・・・今風に言えば、”改革(CHANGE)”を掲げての青年将校
らによる”決起”でした。が、その実行者たちの置かれたる”立場”や”権限”を
超えたところに生ずる「反作用」から、結局、国益に叶う成果を結ぶことはでき
ませんでした。
「淀んだ水を動かす原理=改革」の孕む「矛盾」とは?
それは、非常識を常識とする現状打破の戦略であります。故に、どうしても
“実行者の立場”については”越権”的事象が求められ・・・そして、”実行者の
条件”としては”悪役”的責任を甘受しなければならない・・・所謂、「馬鹿を承
知でやる」、「お人好しを実践する」、「自らを省みない=”私”を無にする」と
いうような今の与野党の政治家、大多数の自治体首長、大多数の官僚や
地方公務員、安定的地位に甘んじている「勝ち組」を自認している方々には
絶対に無理な”仕事”であり”人生”なのです。
また、以上のようなことは、ぶっちゃけて言えば、世の親としての立場から、
自分のかわいい息子や娘の身の上には、決して起こって欲しくはないこと
でもありましょう。むしろ「誰かに代わってもらいなさい」と言いたいところは、
本音として噛みしめなければなりません。
しかし・・・、かの戦国時代や幕末維新など、あまたの公私にわたる難易度
の極めて高い複雑怪奇な問題を解決し、偉業を成し遂げ、英雄や偉人と認
められている方々の素性、本性、仕事、人生=「彼らの思考と行動」をよく
よくご覧あれ!なのです。そのどれもが常識と非常識の弁証法=”超識”の
実践者であり、また、当時の主流の立場の人々からは、悪鬼羅刹、越権常
習、非常識実践、破壊者、誠にけしからん奴ら・・・の如くに「判断され信じら
れた」人々でありましょう。
改革の実践者とは、善悪の”その全て”を受け入れ、苦痛に顔を歪めるの
ではなく、むしろ国宝第一号の法隆寺にある弥勒菩薩半跏思惟像
http://kajipon.sakura.ne.jp/kt/butuzou2.htm )のような微笑むもの
でありましょう。みなさん、思想の自由というのなら、「昭和維新、尊皇討奸」
ならぬ「平成維新、尊民討奸」を掲げて共に暮らし良い新日本を創造するの
は、政治屋や官僚に求めるのはお門違いであると考えてもよいのではない
でしょうか。
みなさんに提案します。
そろそろ、「平和憲法」とか、「民主主義」とか、あらゆる忌み言葉を超越した
新しい思考で、政治政党や胡散臭い民主主義によらない、本当の我々日本
人の日本人による日本人のための国民に実益のある政治を実現できるシス
テムの構築を実行することを・・・です!そして、それが世界平和のスタンダード
とも言えるくらいのものになるよう、そのような今まで思いもしなかったものを
創出しよう・・・ということをです!
現在、この平成の時点で「これからも続く日本史の上に活きている我々」は、
自らの「戦略眼」を養い、将に来たらんとする時の中で相応しき思考と行動の
ための「貴重な実例」として合掌し謹んで二二六事件の教訓を学ばなければ
なりません。
このような「日本戦略史」の上でも記念となろう日に『孫子塾・関西支部』の
開設について決まったことからみなさんにお知らせができることは、何かの
ご縁でもありましょう。当初の予定では、JR弁天町駅近辺(大阪市港区弁天町)
でしたが、最近ではかなり人気のある地域になっていて、予定会場の都合が
つかなかったところ・・・大変好条件のところが見つかりました。何と筆者の本
拠地である十三の隣にある南方(みなみがた)というところです。今回は、概要
について先ずお知らせいたします。
と き:平成21年4月16日(木)18:15~19:45(90分)(毎週木曜日定例開催)
    (毎回18:00に開場、20:00に施錠となります)
ところ:『イフ外語学院』(http://www.ifu.co.jp/map_osaka.html
    阪急電鉄・南方駅、大阪市営地下鉄御堂筋線・西中島南方駅から徒歩3分
(南方駅は、阪急梅田駅より各駅で6分、西中島南方駅は地下鉄
御堂筋線梅田駅より4分です。また、JR新大阪駅からは徒歩10分です)
コース:「基礎編」(兵法、戦略、情報についての思考法と方法論を身につけ
ます)
    第1回~第13回:戦略思考の方法論、孫子兵法の学び方(講義形式)
 ※なお、基礎編修了後のレベル向けに、受講者の各個的な問題解決を事例
としたハイレベルのゼミ形式講習を応用編として予定しています)
昨今、「兵法」という言葉がかなりビジネス書籍などを通じて定着しつつあり
ます。
が、提唱者の多くは、自らが生活安全圏に居ながら他人に言っているに過ぎな
い・・・であります。後方にいながら前線の戦闘員にはどしどし特攻作戦をや
れと言っているような感じがします。
みなさんは、あれこれ他人の成功談を聞かされても立場と条件を異にする以上、
なかなか実生活の問題処理には役に立たせることは難しいものであります。
みなさんもこの機会に”自分自身の中にある兵法の実践者”を見出すべきなの
です。
『孫子塾・関西支部』は、この点において、兵法、戦略、情報・・・の習得を
通じ、みなさんと苦しみ悲しみ嘆きを分かち合い、共に神ならぬ人たるところ
が有する欲望=煩悩の克服に挑みたいと思います。実際に、心から「兵法」を
自分で活用して”変(CHANGE)”を顕現することを考えている方には、大変興
味深い内容を伝授いたします。
関西圏ではなく、首都圏にお住まいのみなさんは、東京から約40分の武蔵野線・
東川口から徒歩約7分の『孫子塾』( http://sonshi.jp/index.html )の本部
での塾長・佐野寿龍先生の”直伝”を受けて下さい。ちなみに、佐野寿龍先生
の情勢判断の確かさは、昨今、物議を醸している小泉流政治がマスコミに絶賛
され、世間の支持も高かった時点で、その素性や正体=「小泉戦略」を見破っ
ているところからも受講される価値はあります。詳しくは、「孫子時評」
http://sonshi.jp/jihyo.html )のP11からお読みになって下さい。
では、いよいよ今回の講座を始めたいと思います。
前回から、スペイン語世界の沿革をよりよく知るために、先ずは、印欧語世界に
ついての解説から入っていっています。所謂、欧米系(ヨーロッパ全体とヨーロ
ッパの亜流としてのアメリカ全体)の人々の元祖である印欧人(アーリア人)の
言語、神話、戦争という三つのアイテムを知ることは、彼らの”根底”を知る
ことにつながっているからです。根底を知ることで相手と自分の違いが分かり、
そして、我を知り、彼を知ることになり、最終的に相手の出方を読むことが可
能となります。
この”ヨーロッパ”と言えば・・・ユーロの台頭もありますが、昨今の話題と
するならば、航空自衛隊の次期主力戦闘機の選定で”ユーロファイター・タイ
フーン”あたりでありましょう。これの開発には、スペインが参加しています。
開発国を見ると、ゲルマン系とラテン系で、この”ハイブリッド”というのも
興味深いところです。
また、パソコンの好きな方は、何かとうるさいWindowsよりも勝手が許される
Linuxを・・・比較されることでしょう。そして・・・、何と、かの田母神将軍は、
日本の航空戦略には、F22よりもこちらを押していらしたとか・・・です。
みなさん!一度、グーグルで”田母神 ユーロファイター”で検索して見て
下さい。
この機会に日本と欧州との興味深い関連性(本当は、日本人とアーリア人の関
連性)をより深く知るためにも最後までお読みになって下さい。(日本人とアー
リア人は、全く異質なもので、”交雑”不可能というよりも、意外にも共通性
があるのです。むしろ交雑不可能なのは、交雑可能と信じているところのもの
・・・であるのかも知れません。)
(20)スペイン語と印欧語世界について(その2)
この印欧語族なるものの存在の研究と”言語学”という学問分野そのものの
誕生になるきっかけは、フランス革命に先立つこと3年前の1786年、イン
ド・カルカッタに所在したイギリス東インド会社の高等法院裁判官ウィリアム
・ジョーンズ(1746-1794)というイギリス人によって創られたのです。
ウィリアム・ジョーンズは、インドの植民地化と同時に進められていた考古学
研究会の会長にも就任していました。彼は、「インド人について」という講演で、
自らがそれまでに習得していたサンスクリット(日本では梵語と言われていま
す)が、同じく習得済のペルシャ語、古典ギリシア語、ラテン語と非常に似てい
る・・・ということを指摘し、これらの言語は、共通の淵源を持つのではないか?
という仮説を提唱しました。
そして、これを学問的に展開し、「比較言語学」として確立したのは、フランツ・
ボップを始めとするドイツ人たちでした。その中でも”グリム童話”や”ドイツ・メル
ヘン街道”で有名なヤーコプ・グリム(法制史研究家でもありました)とヴィルヘ
ルム・グリムの「グリム兄弟」は、言語学者(ゲルマン語学者)であり、ゲルマン
語研究(有名な”グリムの法則”については
http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~kamata/pages/ux-ED.01.html
が判り易いと思います)の上で収集した資料がグリム童話なのです。
ちなみに、「比較言語学」ですが、この理論を援用して、日本語と朝鮮語を
比較し、『万葉集』が朝鮮語で解釈可能である・・・とかいう書籍が出回り、
日本語と朝鮮語が同根であるとか言われたことがありました。が、
「比較言語学から見た日本語と朝鮮語」
http://www2.odn.ne.jp/~had26900/topics_&_items2/nihongo_chosengo.htm
という興味深いサイトに詳しい解説があり、同根説が論破されていますので
ご覧ください。このような同根説は面白いところですが、日本人が戦後に見失
った「大和民族」という言葉の代わりに勘違いには何でもあり・・・になっている
実態も知るよい機会でありましょう。
この「比較言語学」から、”言語そのものの構造と体系を理論化して整理”
したのが「構造主義言語学」で有名なフランス系スイス人のフェルディナン・ド・
ソシュール(1857~1913)です。ソシュールの死後、1916年に『一般言語学講
義』が弟子たちにより出版されますが、実のところ、この約82~84年前には、
プロイセンのカール・フォン・クラウゼヴィッツがそれまでに展開されて来た戦争
術の研究から”戦争そのものの構造と体系を理論化して整理”しています。
 ソシュール、クラウゼヴィッツの両者は、遺稿や講義ノートが本人以外の
人達によって整理されて出版されていることも興味深い共通点ですが、両者
に流れる弁証法的思考や両面思考等は、攻防の理論と言語記号の理論等
をはじめ、何故か共通しているところがあり、興味深い事実を見せています。
ソシュールは、『戦争論』を読んだことがあったのでしょうか。面白いところです。
 この印欧語族の話者、即ち、「印欧語族民」あるいは「印欧人」については、
かつてドイツで国家社会主義が台頭した時代に、非印欧語話者の人々とを
明確に区別するため、広く「アーリア人」と言う政治的な専門用語で括られ
ていた時期がありました。しかし、今は違います。
そして、この印欧語族の生誕の地を巡っては、民族主義や国家主義を掲げ
る場合、宣揚に利用しやすいところから、特に”戦前”においてはヨーロッパ
では物議を醸したことはよく知られた事実でもあります。今でも、特にゲル
マン人の使用していたルーン文字(*)の研究ではうるさいところがあるそうです。
(*) 詳しくは http://www.runsten.info/runes/index.html をご覧ください
この印欧語族に属する言語の特徴とは、主に名詞や動詞等の品詞がそれ
ぞれ語尾変化をしつつ、最終的には総合的に一つの文の中で纏まる言語の
構造を有しており、タテ軸の要素たる”パラダイム”とヨコ軸の要素たる”シン
タクス”の総合(x軸とy軸の座標で具体的な意味が出てくる)により文が完成
されていることです。
それは、名詞においては性・数・格という範疇(”カテゴリー”と言います)に
基づき”曲用”という語尾変化を、動詞においては法・時制・相・態・人称・数
という範疇に基づき”活用”という語尾変化をします。これら曲用と活用を総称
して「屈折」と言います。
みなさんがここで注目されるべきは、”名詞”を例に取れば、性(男性名詞/
女性名詞/中性名詞など)・数(単数/双数/複数など)・格(日本語では、
テニヲハの格助詞に相当する語尾変化。種類では主格/斜格など)という
観点が必ず盛り込まれて使用されているのが印欧語の特徴である点です。
日本人には、複雑でややこしいように思えるのですが、日本語では特に
気にしない名詞の性・数など、比較して観察すると・・・印欧人とは、それだ
け一つの「記号」というものを多角度かつ多面的に類別して、その差異を
口に出して表すのです。言語の観察とは、このようなところを発見できる
ことが興味深いのです。
屈折とは、一つの”文”の中、即ち、まとまった思考を開陳する最小単位に
おいて、その構成要素たる名詞や動詞の語尾変化を一致させ、展開する
ものです。印欧語の文法の学習(要するにスペイン語にせよ、ドイツ語にせ
よ、ロシア語にせよ・・・)は、主にこの語尾変化と語順の規則をマスターする
ことに費やされているものでもあります。
この一見ややこしそうに見える、”屈折”という現象ですが、ここで面白い
戦闘との比較をしておきたいと思います。古代ギリシアの戦闘様式を例に
取ってみましょう。印欧語系の言語における文の構造、即ち、タテ軸の”パ
ラダイム”がヨコ軸の”シンタクス”と”総合”の形を取って展開することは、
同じく陣の組み方をタテ軸に相当する縦列をヨコ軸に相当する横列と組み
合わせて戦列を形成し、まさしく”方陣”として形成することによって、攻撃
と防御の両面を総合的に活用していたこと・・・を想起してみて下さい。
では、次に、この印欧人の有する精神的・心理的な”基層”(SUBSTR
ATUM)、即ち、「印欧神話」について見て行きたいと思います。基層とい
えば、常に、同時に”上層”(SUPERSTRATUM)を考えなければなりま
せん。が、みなさんは、ここでは、基層を知ると同時に、上層に相当する
ものが何であるのか・・・考えてみてください。このようなことが次に続く神
話の理解にもつながって行くのです。
・印欧人の神話とその構造・体系について
みなさん、「神話」とは、そもそも荒唐無稽なものではありません。その民
族を知る「記号」の体系として捉えてみれば、これほど興味深いものはな
いでしょう。「印欧神話」とは、アーリア系の神話のことですから、「ギリシ
ア神話」、「ローマ神話」、「ゲルマン神話」、「ケルト神話」、「スラヴ神話」、
「ペルシア神話」、「インド神話」などがあります。これら一連の神話にも
基層と上層に相当するところが考えられ、一つ一つの神話を構成してい
るのです。
この印欧人の有する精神的・心理的な土台としての神話の構造について
は、フランス人で比較言語学の研究者でもあったジョルジュ・デュメジルが
「比較神話学」として確立し数々の興味深い研究がなされています。
デュメジルによると、この印欧人が有する神話の構造に共通しているの
は、”トライアッド(三幅対)”と呼ばれている三つの機能が一つの”三角
構造”を構成しているものです。即ち、それぞれが「創造=知=戦略
(第一機能)」-「破壊=力=戦術(第二機能)」-「維持=体=兵站
(第三機能)」という三つの機能が構成する三角構造です。
みなさんも、驚くなかれ・・・なのですが、デュメジルの比較神話学によれば、
世界の神話を比較して、印欧人の神話の構造と全く同じのものが見つか
った・・・とのことです。一体、どこの神話と思われるでしょうか?それは、
「我らが大和民族」の有する『古事記』の神話の構造なのです。
日本神話とは、この印欧神話の有する三機能の構造を全く同じくしてい
ます。大和民族の不思議とは何か?それは、欧米の文物を導入して
自らの血肉にしているところでありましょう。(特に幕末維新あたりから
の”アジア史”を比較観察すれば興味深いものがあります。軍事など、
明治の間に日本風にしてしまい、かの軍事大国であったロシアと勝負
した点は欧米の人々からは如何なる様に写ったことでありましょうか?)
「創造-破壊―維持」という三機能に基づいて、そこから”王-武-文”
というような”機能的ヴァリエーション”を”派生”させ、その各々の機能を
神話の中に登場する様々な神々の担う役割に重ね合わせて”象徴”と
成している・・・これが印欧神話の特徴です。
(日本の神社の御祭神も機能別であり、統括神、軍神、縁結神、商業神
などなど、その祈りの目的別に参拝する神社も異なる点と比較してみる
と興味深いものがあります。)
例えば、「インド神話」での”ブラフマー”-”シヴァ”-”ヴィシュヌ”や
「ギリシア神話」の”ゼウス”-”アレス”-”ヘルメス”、「ローマ神話」で
の”ユピテル”-”マルス”-”クィリヌス”等の神々です。
そもそも”神名”とは、固有名詞であると同時に抽象名詞でもあって、
この抽象の概念において指示される機能については、代名詞的な役割を
果たしています。よって、神名は、その共同体内部のイデオロギーや社会的
な法則、秩序を根底とした構造と体系を表す代名詞にもなっている・・・とも
言えましょう。
このトライアッド(三幅対)の興味深いところは、三つがバラバラ・・・というの
では決してありません。そうではなくて、彼らの言語上の特徴と同じく、
所謂、「総合」というものを表しているのです。例えば、武を司る神は、自分が
勝手に独立して暴れまくる・・・というのではなく、王に相当する神の抽象化
され目に見えない意志を具体化・実現化するための過程としての行為を
担っているものであり、王に相当する神の策定する一定の「戦略」を元にし
て展開される形式をとっています。
古代ギリシアを例に取れば、元々、ポリスの政治の延長で他のポリスと
の間で行われる戦争(要するに問題解決)において、紛争処理の具体的
な知識たる原理原則を蓄積し、状況即応・臨機応変の抽象的な知恵を
出す働きをする者・・・これを総称して”ストラテゴン”と言い、その現場で
目に見える具体的働きを”タクティカ”と言って、それぞれ(抽象/具象、
原理/応用、戦略/戦術など)の機能を戦いという事象の中で纏め上げ
ているようなものです。
このトライアッド(三幅対)の神話の構造は、印欧人に共通して見られる
特徴で、他の民族には見られません(共通している・・・というのが日本神話の
構造です)。ここで注意を要するのは、トリニティー(三位一体)とは言って
いないところです。即ち、「父と子と精霊」が、そのままイエス・キリストで
ある・・・というものではなく、三つの要素が三角の構造を成して一つの体系
を成立させているところなのです。
・トライアッドについて
第一の特徴として、この印欧人の神話に見られる基本的形式が「正-反-合」
という三角図形で示される弁証法的な発想をその土台に持ちつつ、易でいう陰陽
の関係のように一つの神が”裏/表”の同時両面構造を持っています。
また、弁証法的思考と両面思考の図式を以て相手に対抗する以上、その知的
側面が考慮されることによって、自分たちとは違った思想信条や世界観を背景
とする共同体への対抗策が獲得され、これにより未来時点での優勢が取り易い
・・・という長所があります。そして・・・このようなことに加えて、実際に
成功したり、良いと判断されるものは見習って採用し、反対に失敗したり、
悪いと判断されるものは排除するという合理主義が加わります。
第二の特徴として、国家運営のやり方、即ち、「政治システム」とも共通する
ものがあり、「政治-軍事-経済」あるいは、「君主-軍隊-市民」という
三つの要素による相互補完的な構造と体系を形成しています。
第三の特徴として、この印欧人の神話の有する政治-軍事-経済のトライアッド
は、お互いに欠損すれば成立は不可能なところがあります。ここから、かのクラウ
ゼヴィッツが「戦争論」で述べている、「戦争とは、他の手段を持ってする政策の
継続にすぎない」という有名な定説を印欧人の神話構造から分析して読み替えれ
ば、「マルスの機能、即ち、第二機能(軍事)とは、他の手段を持ってするユピ
テルの機能、即ち、第一機能(政治)の継続にすぎない」ということであり、
政治が属するトライアッドには、同時にその別の面である軍事と経済が存在し
ています。
日本では、戦後、高度経済成長という右肩上がりの時代の名残として、いろいろ
な「政経塾」とか「政治経済研究会」に類するあまたの団体がありますが、ごそっ
と抜け落ちていて、そこが外国から格好の「虚」として付け入られているトライ
アッドの言葉があります。即ち、”軍事”です。みなさんも”本格派日本人”と
なるならば「政軍経塾」とか「政治軍事経済研究会」というような名称を心がけ
ねば”ワールド・スタンダード”にはなりにくいものがありましょう。
政治がなければ、軍事の必要もなく経済も成立はしないものですし、軍事がなけ
れば、その主人公の政治も守るべき対象としての経済も存在できません。経済
がなければ、それを保護してくれる政治もことさらに行う必要もなく、ましてや
金のかかる軍事は、それ自体が存在不可能と言えましょう。
よって、この19世紀の有名なクラウゼヴィッツによる定説は、はるか彼方の
神話の昔から、印欧人の神話の構造の通りに裏付けられていることになります。
ここから、言い過ぎになるかも知れませんが・・・印欧人の有する「戦略のイデ
オロギー」というようなものが看取されると思います。特に、スペインが世界で
覇を唱えた時、大成功を修めたラテンアメリカの征服事業においては、この三機
能が円滑に調和しておりました。それは、三つの”M”です。即ち、Majestad
(君:統治)- Militar(武:制圧)- Misionero(民:民生)という構造で以て
植民地支配を確立し、その効果たるや現在にまで至っています。
・印欧神話の比較として
現在日本の「格差社会」と言われるものは、よくよく見れば、インドの「カース
ト制度」を日本でも新たに創り上げたいのか・・・と言いたくなるような現象で
すが、インドのカースト制度は、印欧神話を社会システムにそのまま応用させた
ものです。
(「インド神話」では、創造の神にブラフマー、破壊の神にシヴァ、故に、オウ
ム事件で麻原の言った「シヴァ神にポアされてよかったね」という恐ろしいセリ
フの背景がお分かりになったと思います・・・、維持の神にヴィシュヌがいま
す。)
この印欧人の一派がインドに侵入し、土着の諸民族を平定し、彼らの神話構造を
そのまま社会階級に応用し、第一機能のバラモン、第二機能のクシャトリヤ、
第三機能のヴァイシャがあり、最下層とは、その下にある非征服民である先住民
の階層のことです。
日本では、重なる失政と私利私欲やら利権に走る政治屋、官僚、マスコミなどの
お陰で「格差社会」が生じつつありますが、今のままでは、おかしな和風カースト
制度が誕生し定着してしまうのも時間の問題でありましょう。
もはや永田町にも霞ヶ関にも国民のことを思いやってくれるという期待はしない
こと、即ち、国民各自が自分の頭で考えて行動すること=大きな意味での「国運
の向上」=自分自身に期待すること・・・これがこれからの日本と日本人を良い
方向へと変えるキッカケになってくると思われます。政党政治によらない、もっ
ともっと効率的な、国民みんなが幸せになれる政治システムがあるのか?それは
興味深いと思います。
次回は、イージス艦(アメリカ製ながらも、ぱっと見ると、何となくですが昔の
高雄型重巡洋艦のシルエットというかイメージと重なるようなところがあります
が・・・)の名前にもなっている「ギリシア神話」のアテナ神のイージス(「神
楯」:”しんじゅん”と言います)の由来なども含めて、スペイン語世界を形成
する”根”のところをさらに探って行きたいと思います。
(つづく)


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