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創刊2000年10月のメールマガジン「軍事情報」です。

【第8講】 日欧の軍事の媒介者

time 2008/09/11

孫子塾副塾長・孫子塾関西支部長
同志社大学/京都外国語大学・スペイン語非常勤講師
米田 富彦
http://espania.okigunnji.com/2008/06/post-1.html
今回からは、夏休みも終わったので、分量を少ない目(通常)にしています。
ちなみに、夏休みの二本分である第6号、第7号は、特別長編になっています。
印刷して保存していただき時間をかけて読み返していただければ、それなりの
戦略と情報について、また、開けっぴろげに公開されることは少ない”謀略”
の方法論に関する指針となるようにしてあります。


本講座の特徴とは、大学院や大学、あるいは企業の総務、企画運営などの職種
においても明確に指摘されることの少ない話題、内容を扱っている点ですが、
あなたが方法論と応用・実践の合一を各個の特殊的状況において見事成就して
いただくよう心から願うものであります。
特に現在の状態(無職・有職を問わず”生きるという仕事”においても、学籍
に居る・既卒であることを問わず”人生という学業”においても)から、”革
命”を実践してやろうと意志している方々、あるいは”非対称戦”を余儀なく
されている方々、または”ゲリラ戦”に憧れを持っていて・・・実際にやらざ
るを得ない状況になっている方々にとっては、具体的な方法論(基礎=日本で
いうカタ)の習得が可能なものとしてあります。
もし、今ひとつ分からなかったら、
「なぜ脳力開発なのか」
http://sonshi.jp/teki2.html

『ブログ兵法的思考力開発講座』
http://sonshi.sblo.jp/article/18074735.html
にある孫子塾塾長の佐野寿龍先生の解説を読んでみてください。戦う思考力
のよい鍛錬になります。
あなたが、『弱者の弱者による弱者のための逆転戦略』についての理解を、回
を重ねつつ、段階的に深め、実践につながるようにしたいと思います。
何故なら、強者とは、最初から兵法を講じる必要の無い者を云うからでありま
す。兵法が必要とされるのは・・・そもそも、自らが弱者(その何故か・・・
の具体的事実は、自分自身を知ることから探知できます)であるからです。
そして、みなさんが納得している自然の有する原理、即ち、「万物は流転する」
「諸行は無常である」ということから・・・それ故に・・・今日の弱者が明日
の強者となる逆転現象は、起こって当然となっているのです。
ここで・・・兵法の常なる心の持ち方ですが・・・新たに失うものにも
(たとえ数十年も粉骨砕身の結果としての安定している地位や名誉や貯金や住
居など・・・)、新たに得ること(まさに現状の逆転の結果です)にも、一喜
一憂することなく、それに粘着することもなく、程よく悲しみ、程よく喜び、
むしろ淡々としていたい・・・これぞ人間の品格と申すものであり、あなたが
学ぶ兵法が最も活きてくる要点でもあります。
スペインから学ぶものとは、世界の頂点に立って得られるものは全て得たけれ
ども、また、得たものを全て失ったこと、しかして、国は存続して未来に向か
っているという点でありましょう。
この講座に接しつつ、戦略的思考、情報的思考(そして、兵站的思考もまた)
について段階的に読み進められ、”システム”というものを意識して行くこと
が、思考面での一つの習慣づくり(”武闘派”とか”手練れ”、あるいは”問
題解決のプロ”への道を歩むこと)に役立っていると思います。この「兵法的
思考」なくして、スペインやラテンアメリカを日本の合わせ鏡として、これか
ら来るべき問題解決のための知恵を出すことは難しいものなのです。
では、始めましょう。
7.日欧の軍事の媒介者
(1)宣教師の内容について
宣教師とは、スペイン語で”misionero”(ミシオネーロ)と言います。その元と
なるの単語は、”mision”(ミシオーン:本当は、”o”の上にアクセント符号
がつきます。エンコードなどが手間なのでご容赦ください)と言い、こちらは
“派遣”、”伝導”の意味に加え、映画「ミッション・インポッシブル」のよ
うな軍事用語での”特別任務”、”特務命令”の意味もある面白い単語で、こ
うなると、戦略を根底として実施される作戦とか戦術とかいった言葉とも関連
性が出てくるものとなっています。
日本では、1549年のイエズス会士フランシスコ・ザビエル(1506-1552)の来
日以降、順次、来日した宣教師は、彼らの”派遣元”の宣教団体(イエズス会、
フランシスコ会、ドミニコ会など)には、時代的にそれら幾つかを数えますが、
派遣された来た人物は、当時の大学を出た”インテリ”(現代の少子化+ゆと
り教育で、大学全入という条件下での大卒などとは大違いの、昔風に言えば
“学士様”のような称号を持っている一般人とは異なる方々)が多数で、一般
民衆の数倍にも値する個人的能力と知性を有しており、常人では不可能な特殊
任務を与えられても遂行出来る資質を備えていた”器”の持ち主たちが選ばれ
ていたのです。
イエズス会と言えば、カトリック・キリスト教の宣教団体として世界でも有名
(詳しくは、『イエズス会日本管区』 http://www.jesuits.or.jp/ をご覧くだ
さい)ですが、かのナチス・ドイツの”親衛隊(SS)”が組織作りにおいて模
範とした興味深い団体でもあります。
当時の宣教活動とは、空挺隊とか、特別陸戦隊(海兵隊)とか、戦闘工兵とか
のように、周りが全部敵だらけで、相当の反撃や継続的な抵抗活動があって、
必ず苦戦出血を強いられる点を承知して、進みて身を挺して強敵を制圧し、
難しい任務を成し遂げ、後続部隊に道を開けて、作戦の花を持たせてあげる
・・・しかして、自分たちは、脚光を浴びて目立つことはない...即ち、陰
働きというか、軍の陰徳というか、そのようなものが求められるところがあり、
故に、どうしても”侠気”が必要とされる活動と同じものに他ならないと言え
るのです。
即ち、宣教活動とは、「文明対文明の衝突」を担う訳なのですが、”武力面”
で勝利するのではなく、”非武力面”で”戦い”勝利することがその本質です。
よって、そのためには布教対象の人々をどうしても屈服させる武器、即ち、
“知性”が必要となるのです。
信者を増やすこと・・・これは、薬物を使ったり、数人で一人を取り囲んで責
め立てたり、生活の安定をちらつかせて釣り上げたり、目に見えないところに
恐怖や不安や緊張を増幅させて脅したり、難しい理屈を一方的に押しつけてお
いて、論破できなかったら傘下にしてやる・・・というようなものではありま
せん。先ずは、相手の身になっての相手自身による理解、そして、相手の心か
らの納得、そして、相手が自分に対する信用の醸成となるのです。
そもそも、征服というのは、物的に、例えば、核爆弾のようなものを使用して
コテンパンに相手を再起不能のようにしても、精神面、民族的DNAというか伝
統・格式などが死滅していないと、まだまだやってやると思うものです。物質
の世界は有限ですが、精神の世界は無限であります。
心の自由がある以上、捲土重来の再起を狙うのが敵の本性であり、これが現実
なのですから、未だ未だ征服は完遂されたものとは言えないのです。敵が心に
秘める不屈の敵愾心を撃破し消去すること...これは、宮本武蔵『五輪書』
の中にも指摘されているものです。この敵の心を変えること・・・そうすれば
“忠犬”というか”走狗”に仕立てることも可能です。これぞ孫子兵法に出て
くる「謀攻」の重要ポイントなのです。
(そして、「咬兎死シテ走狗煮ラル」の如く、「噛み付くうさぎちゃんがいな
くなると、飼い犬が犬鍋になるアルヨ~」なので、現在の日本は我が身の置か
れたる危険に気づかねばなりません。)
ここで、異質な文明間の衝突事象、特に侵略とか征服といった事柄について、
大変興味深い映画を紹介しておきましょう。国が滅んで敵に征服された・・・
けれども、心の自由まで敵に征服されるのか、それは如何・・・スペインの
エルナン・コルテスがアステカ帝国を征服した直後の16世紀のメキシコの状況
を描いた”La Otra Conquista”です。ラ・オートラ・コンキースタと読みます。
米国で活躍しているサルバドール・カラスコ(Salvador Carrasco)監督作品
です。タイトルの意味は、「もう一つの征服」です。物的征服を表とすれば、
精神的征服は裏になります。この裏の言葉が”他の”の示すところです。
英語タイトルは、”The Other Conquest”です。今から10年前(1998)の米映
画で、DVDは、Amazonで入手可能のようですが、『YouTube』でならスペイン語
版(9~10分程度×12本)をタダで全部見ることが可能です。
http://jp.youtube.com/watch?v=S6nDxfy4-oQ&feature=related
はなしの筋は、亡国となったアステカ帝国で絵師であった主人公(モクテスマ
皇帝の庶子という設定)がスペイン軍に捕虜となり、名前も言語も宗教も習慣
も”スペイン人”にされて行くのです。が、九分九厘まで行くものの、アステ
カ人としての最後の一厘のところがどうなのかという点を扱っている映画です。
映画の中では、アステカ人はナワトル語で台詞があり、彼らが行っていた生贄
の儀式(仰向けに寝かせた生贄の胸部を石の刃で出来たナイフで切開し、ピク
ピク動く心臓をえぐり出して神に捧げる)が再現されていたり、当時のスペイ
ン軍の軍装、従軍司祭の活躍など、興味深い映画です。
本作品は、今後、世界での新興勢力であり、米合衆国とは少なからぬ因縁にあ
り、パナソニックをはじめとする日本企業も多数進出しているメキシコを知る
ため、同時に戦略から考えると”征服”とは如何に成すべきかということを考
えるための良い映画となっています。
メキシコとは、正しくはメキシコ合衆国と言います。国名は、ナワトル語でア
ステカ人の守護神であり、太陽と戦いと狩猟の神である”ウィツィロポチトリ”
の別名”メシトリ”の土地を意味するものです。
メキシコは、インテリジェンスではゾルゲ事件と並び称される第一次大戦時の
“ツィンマーマン事件”で有名です。米合衆国西海岸に残る多数のスペイン語
地名の理由については、在日外国人参政権問題やアジア系移民の受け入れを提
案している与党や野党がありますが、比較するには興味深いテーマでしょう。
さらに21世紀に向かっては、米合衆国内の”ヒスパニック問題”の背景なども
含めて視線を注ぐ必要のある国でもあります。
この”La Otra Conquista”とは、「一つの文明が他の文明になる」というこ
と、即ち、日本の戦後時代(伝統、格式、精神、宗教などの破壊、屈服、服従、
洗脳など)との比較観察、比較研究するための良き資料ともなりましょう。
また、同じく16世紀のスペイン軍人について、アメリカ大陸にまつわる映画が
ありますので紹介しておきたいと思います。テーマは、黄金郷伝説(街が全て
金で出来ているという “エル・ドラド”の伝説のことです。地域は、現在の
ペルー方面と考えられています)の探索を扱ったスペイン版『地獄の黙示録』
のような映画です。
こちらは、ドイツ映画(故にドイツ語です)になりますが、ヴェルナー・ヘル
ツォーク監督『アギーレ 神の怒り』(原題:”AGUIRRE DER ZORN GOTTES”)
(1972)です(一部は『YouTube』で視聴可)。
http://jp.youtube.com/results?search_query=AGUIRRE+DER+ZORN+GOTTES&search_type=&aq=f
ロペ・デ・アギーレは、実在のスペインの軍人で、”黄金郷”を求めて編成さ
れた探検隊を率い未踏のジャングルに分け入りました。日本の川とは想像もつ
かないような長い川を遡ったり下ったり、人食い種族がいるような密林奥深く
入り込んで、そこで・・・何とスペイン国王に対して反逆=独立を宣言するの
です。ラテンアメリカの独立の起源は、ここにあるという考えもあるくらいで
す。この映画では従軍司祭が果たす役割や対インディオの掃討戦も描かれてお
り、スペイン、ラテンアメリカ(特に”軍事史”)を知るにはお勧めの作品です。
(もし、軍事史を本格的に学びたいのなら、「軍事史学会」という戦前からあ
る学術学会があります。たとえ研究者でなくても加入して、気軽にいろいろな
行事に参加が可能です。詳しくは、 http://wwwsoc.nii.ac.jp/mhsj/ をご覧く
ださい。また、戦略・情報・兵站などに関する学術団体には、
http://www.j-sss.org/ があり、幅広く、戦略という事象を中心にして深く研
究を進めています。誰でも入会可能です。みなさんもこれらの世界に飛び込ん
でいただけることを願っております。)
ちなみに、南米地域の対インディオ戦で、世界で最初の”対非対称戦”マニュ
アル、所謂、今で言うところの”対テロ、対ゲリラ・コマンドウ”の教科書は、
スペイン軍人によって作成されています。戦略研究学会『年報戦略研究第2号』
(芙蓉書房出版、2004)にベルナルド・デ・バルガス・マチューカ著『未知の
戦士との戦い-アンソロジー新世界の挑戦12』(岩波書店、1994)がこれです
が、文献紹介(287頁)をしていますので、一度、ご覧ください。
ついでに、ラテンアメリカに関する情報では、英語になりますが:
・”LANIC”( http://lanic.utexas.edu/
・”LASA”( http://lasa.international.pitt.edu/
・”CIA”( https://www.cia.gov/ )の”The World Fact Book”
などが”オールラウンド”のものとなっています。
CIAのものは、ラテンアメリカの他にも世界中のあらゆる国々についていろい
ろなデータを記述してくれています。それなりに情報は操作されていることを
鑑みることは何事にも必要ですが、概論を知るには大変便利なサイトです。
洋書(書籍版)も出ています。それぞれ参考にしてください。
この当時の宣教師...このキリスト教の教義を前面に掲げて”武器”に非ず、
“知”による戦いを相手に挑むのが彼らなりの”武闘的アプローチ”=「表」
とするならば...「裏」は、宗教臭さのない”文化的アプローチ”になるも
のです。
文化的アプローチ、即ち、キリスト教布教以外のところのものになりますが、
一度お世話になると、なかなか縁が切れなくなるものとなっています。即ち、
キリスト教布教とは、関連付け易い分野、即ち、福祉(医療)、民生、教育、
文化、科学等々の分野であります。
これらの分野において彼らの習得した幅広い高度な知識・技術を披露し、実践
を通じて積極的に布教対象の地域住民の中に溶け込み、親密な人間関係を構築
する、所謂、”宣撫工作”=諜報活動がやりやすいものになって来るのです。
何故なら、軍のあるところ、必ずその裏には諜報活動があり、兵站が付いてい
るものですが、諜報や兵站なくして戦略は成立しません。
ここで、みなさんに学んでいただきたいことは、孫子兵法でいう「間(かん)」
即ち、インテリジェンスについての兵法的(単なる知識に止まらない実践とし
ての)概念です。必ず、孫子塾バックナンバーの「日本人はスパイに対し偏見
や誤解があるようですが」( http://sonshi.jp/sub70.html )をご覧になって
思考の改革を行ってください。
注意するべきは、宣教師の”間”としての存在とその反対の使いようです。
伊達政宗がスペイン人宣教師を通じて慶長遣欧使節を派遣し、いろいろと天下
のことを考えたように(ちなみに、伊達氏の本拠地であった”仙台”とは、ス
ペイン語の”小道”という言葉から由来するとの意見もあります)、また、日
米開戦前にはカトリック・キリスト教のメリノール宣教会のアメリカ人神父二
人が交渉役を務めたこと(情報史に興味のある方は面白いテーマと思います)
があったように、宗教とそれに関わる人々とは、戦争や敵愾心などの”対置概念”
に据えられて考えられることが常識となっているものです。
ここが心の死角や盲点ともなって来るものでもあります。
次回は、この宣教師という存在について、宗教とかではなく、軍事、戦略、情
報などの観点からさらに観察を進めて行きたいと思います。
(つづく)

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