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創刊2000年10月のメールマガジン「軍事情報」です。

荒木肇 「東日本大震災と自衛隊」 並木書房

time 2012/06/08


7年前の晩春の日の午後、二人のサラリーマンがメールマガジン「軍事情報」の購読を始めました。二人ともよく似ていました。二人とも、名の通った一流企業の幹部候補生で頭脳明晰、可愛い恋人を持ち、会社から海外留学させてもらい、仕事ができるのはもちろんのこと人望も厚い。メルマガで紹介する本についても問い合わせをくれ、若手エリートが皆持っているように、将来への大志を持っていました。

二人は、今も一流企業に勤め、可愛い恋人と結婚し、弊マガジンの読者です。
二人とも会社では順調に出世しています。

一つだけ違うのは、A君が課長になった一方で、B君は社長になっていたことです。
なぜ二人にこのような違いが生まれたのでしょうか・・・・

これについてはあとにしましょう。

さて、あとがきで著者がかかれている次の言葉が、本著のすべてを語っています。

<まさに陸上自衛隊は、伝統的な「役割社会」であり、「気持ち主義」が大事にされる組織だった。そして、「自発的役割人間」を育てる学校だったということも分かった。
その人間たちが、自分たちの本質があまり理解されなくても不平を言わず、ただ、「被災者がいる」。「俺たちしかできないことじゃないか」と歯を食いしばって過ごしたのが、今回の活動だったということが明らかになった。>

この文面をタイプしているだけで、涙が出て止まらないのはなぜでしょうか?

本著は、震災派遣という舞台を通じ、
日本における陸軍組織のキモ「人を動かす目に見えないもの」をつかみ出す試みです。
陸軍という組織を考察しながら、祖国日本の文明も同時に明らかになってゆくところが非常に面白いです。

改めて思うことは、
一国の陸軍は、その国の歴史・伝統・文明を如実に反映する組織である。
反映する組織でなければ精強足りえない。ということです。
「東日本大震災と自衛隊 自衛隊はなぜ頑張れたか?」
 
▽「陸軍は人」の真骨頂

今回の震災でわが陸自の活動は、世界規模でその活躍を高く評価されました。

「何故あそこまでできたのか」という声を各方面から聞きます。
本著を読んでその理由がよく理解できました。

わが陸軍の根底に流れるのは、組織の運用にあたって、
人と人の絆、縁、義理人情、浪花節を大事にする、ということだったんです。

一般国民は、今回の自衛隊震災派遣への評価について、わが国ならではの伝統・文化・文明が評価されたのだ、という意識をもっと持ったほうがいいと思います。

組織を動かすのは何でしょう?
システムでも理論でもありません。

「人」です。

人を動かすのは何でしょう?
夢でも希望でも志でもお金でもありません。

誰かとの絆を確信できる安心感です。

これを支えるのが、ひとことでいえば「情」なんですね。

本著を読んで、日本人でよかった。
この本を読んで感動できる人間でよかった。
と思いました。

▽荒木節炸裂

荒木先生の本は、長い長いご研究の積み重ねから抽出されたエキスと、「真実は細部に宿る」の実践による、説明(用語や背景事情など)がたくさん詰まっています。おなかいっぱいになることがあるかもしれません。
本著も例外ではありません。

そういう書だから、数十年経っても、いや数百年経っても価値を失わないのです。

一部だけですが、荒木節の一部をご紹介します。

・陸軍の団結の大本が中隊なら、海軍のそれはフネそのものが団結の単位である。
「兵家徳行」と「士心合一」
・日常の生活、市民としての、家族の一員としての暮らしを戦時といえども重視するのが欧米の軍隊である。対して、戦争を異常事態として、普段の生活と切り離して考えるのが日本の軍隊だった
・・・

いいでしょ?

それでは、心してページをめくってください。

□もくじ

序章 アメリカ軍と自衛隊

第一章 自衛隊は、なぜ頑張れたか?
 1 鎖国の国と開拓の国
 2 日本型役割社会と欧米型個人社会
 3 受容的勤勉性と自主的選好性
 4 努力が報われる社会

第二章 自衛隊の底力
 1 西周の「兵家徳行」と「士心合一」
 2 部下へのまなざし
 3 部下からのまなざし
 4 原子炉に冷却水投下
 5 「つとめ」の意識
 6 コンボイ(道づれ)感覚
 7 「訓練のとおり!」実戦経験と自衛隊
 8 隊員たちの使命感
 9 自衛官としての自覚

第三章 被災者の気持ちになれ
 1 「気持ち」を大事にする自衛官
 2 後から支えた人
 3 社会・文化の変化の中で
 4 支えてくれた人への感謝

第四章 自衛隊はどこへ行くのか?
 1 人を大事にする組織はなくならない
 2 何を持って戦うか?

あとがき

□著者
荒木肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業。同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を行う。2001年陸上幕僚長感謝状を受ける。年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、講話を行っている。
著書に『学校は変わるか?教育改革Q&A (空とぶくじらブックス)(共著)』(パテント社)、『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』(出窓社)、『自衛隊という学校』『続・自衛隊という学校』『子どもに嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日本陸軍と自衛隊』(並木書房)がある。

企業関係者、特に社長クラスの方は、第四章は必読です。
この章は、「実践に使える日本における組織運用論」といって差し支えない貴重な内容です。

さて最初にあげた2人の若者ですが、なぜこれほどの差ができたのでしょうか?
理由は「海外留学」と「荒木肇」にあります。

二人は同時期に帰国したのですが、それから微妙に口癖が変わりました。
A君は、海外で体験したことを「それに引き換え日本では・・・」と、
B君は「外国ができるんだから日本ならもっといいものを作り出せる」が
口癖になってました。

不思議なもので、それからぐんぐん差が開いていったんです。
なんとも不思議なことだったので後日B君に話を聞いたら、
「メルマガで紹介された荒木さんの本を読んで、先生のファンになり、本を全部読んだんです。もしかしたら、Aとの違いはそれだけかもしれません。あいつは先生の本を確か読んでないと思います。
荒木さんの本を読んでいると、僕らレベルで知っておけばいい軍事知識を身につけてくれ、何とはない自信を持たせてくれます。それだけじゃなくて、日本人で本当に良かったなあと無理なく思わせてくれるんです。
そして、自分が他の人にそのことを説明できる知識を荒木さんはくれるんです。
だから留学のときも持っていきました。
外人の前で恥をかかなかったのは荒木さんのおかげでしょう」
といってました。

今日ご紹介した本は
「東日本大震災と自衛隊 自衛隊はなぜ頑張れたか?」
編著者:荒木肇
発行:並木書房
発行日:2012/4/20
http://tinyurl.com/76pwx6e
でした。

(エンリケ)

追伸
B君から言葉をもらいましたので紹介しておきます。
「震災出動した自衛官の生の声はもちろんですが、冒頭に、普通では考えられないボリュームの自衛隊提供の現場写真があります。これだけでも買う価値ありです。
震災派遣自衛隊の記録としても貴重だし、それだけのことを成し遂げたわが陸自・陸軍の核心は何か?を知りたいひとにとって格好の教材になるでしょう。
軍事情報を読んでいるのにこの本を買わないなんて、意味分かりません笑」
⇒ http://tinyurl.com/76pwx6e

(エンリケ)


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