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戸島国雄 「タイに渡った鑑識捜査官」

time 2012/06/05


タイと縁が生まれるきっかけは、妻を亡くしたことだった・・・
かけがえのない最愛の妻を亡くし、来る日も来る日も誰もいない暗いわが家に帰る。
部屋に漂う線香の香りは、妻が亡くなったことを切ないまでに実感させる・・

妻を亡くして一年。
著者は、JICAが募集している技術指導専門官に応募します。

幸い合格し、1995/11からタイに単身赴任することとなったのです。
著者とタイの関わりはこのとき生まれました。

国際協力活動は、机上の空論やきれい事でできることではありません。
人と人との心のふれあいを通じて行われるものであり、
決して一方通行の関係ではないのです。
教える側が偉くて教わる側が劣っているのではないんです。

タイの人々には、古きよき日本人の美質が残っていると著者は言います。
今の日本人が見失い、忘れつつあるわが民族の美点、
やさしさ、思いやり、愛国心、勤勉さを、今のタイ人は持っています。

本著には、
鑑識現場ならではの、生々しい(時には生々しすぎる)現実が冷静なタッチで描かれています。

特に、インド洋大津波のところの描写は、非常に生々しいです。
食事時に読むのはオススメしません。
しかしこれが現場の現実なんですよね。

本著を通じて読み取っていただきたいのは、
・この世は、決して甘くない現実であふれかえっている
・人間力は国境を越える
・世間で流布する「きれい事」は、本著で描かれているような、目を背けたくなる現実と対処する人がいるおかげで成りたっている
ということです。

では、「タイに渡った鑑識捜査官」の内容をご紹介しましょう。

★もくじ

序 消えた「微笑み」

第一部 鑑識技術に国境はない
 タイ赴任初日の大失態
 謎の言葉「マイペンライ」
 日本人の腎臓を狙った怪事件?
 日本とタイの鑑識の壁
 事件現場につきものの「葬儀団」
 タイに受け入れられた日本の鑑識技術
 やっとタイの食べ物が合ってきた?
 やさしい笑顔
 タイ警察の有名人「トチャイ将軍」
 「日本のヤクザなら撃ち殺せ」
 いまどきの日本の若者
 行方不明になった日本の大学生
 タクシー強盗に間違われる?

第二部 眠らない街バンコク
 チャイナタウンの殺人事件
 運河に漂流する肉片
 蜂に襲われた警官
 タイの麻薬撲滅作戦
 部下がくれた黄金のお守り
 チャオプラヤー川の船舶火災
 長い長いタイの葬式
 邦人殺害事件
 軍事クーデター勃発
 年越しの大火災
 五つ星ホテルの盗難

第三部 悪夢のインド洋大津波
 被災地への出動命令
 「これから何をすればいいのか?」
 津波発生三日目、指紋採取を開始
 刑務所行きを覚悟の「指紋採取」
 スピードアップした指紋採取
 やっと交代できる・・・
 被災地で迎えた64歳の誕生日
 初めて出会った日本人ジャーナリスト
 ついに感染症の危険
 足りない棺桶
 日本の鑑識チームと合流
 久しぶりの入浴
 霊がさまよう村
 ボランティアを知らないボランティア
 世界の歴史に残る仕事をやり遂げた
 長い夜
 事件は続く・・・

終わりに

著者略歴

などなど、現場での実際のできごとを中心に、わが鑑識技術移転の歴史の概要が一冊で手に入るといってよい、盛りだくさんの内容です。
この本を読み終わるころには、あなたは鑑識という捜査手法の海外移転という一つの事業を通じ、人と人のコミュニケーションの何たるかがわかるようになるでしょう。

それでもあなたはこう思うかもしれません。
そもそも自分にとってコミュニケーション話など何の関係もないし使えないんじゃないの? と。
実際のところ使えるか使えないかはあなた次第でしょう・・・

もしあなたがどうせ何も手に入らないだろうと、最初から諦めていれば何をやっても上手くいかないでしょう。
しかし、あなたが、人々とのかかわりの中で自分を変え、自分の人生に応用して成果を出し、プライベートも満足あるものにしたいと思うなら、この本の中に書いてある戸島さんの経験・テクニックは宝の山に見えるでしょう。なぜなら人間というのは毎日がコミュニケーションの連続で、ビジネスでの営業や商談、会社の面接、異性との付き合いなど人生の全ては相手とのコミュニケーションの連続だからです。

ですので、コミュニケーションの何たるかがつかめた人は仕事でもプライベートでも望む人生を手に入れることができます。逆につかめない人はいつも人から避けられ、妥協を強いられ毎回不利な条件を飲んでしまって余計な仕事をたくさん抱えたり、取らなくてもいいリスクを背負わされたりして、不満の人生を送ることになります。

しかし、ひとりぼっちで外人に鑑識技術を伝授するという、ある意味極限下でのコミュニケーションを当事者と図り、成果を残してきたプロのノウハウを身につけることができればそういった問題はなくなります。

海外での鑑識指導のエキスを身につければビジネスや人間関係が上手くいきます。
海外での鑑識指導のエキスを身につければ不利な交渉から身を守ることができます。
海外での鑑識指導のエキスを身につければ全ての局面で自信を持つことができます。
そして、海外での鑑識指導のエキスを身につければ人生が変わります。
そしてこの本はそういう海外での鑑識指導のエキスの全てが書かれた極めて中身の濃い一冊です。

(エンリケ)

★著者略歴

戸島国雄(とじま・くにお)
1941/1/1 誕生
1960 自衛隊入隊(19歳)。習志野第一空挺団(24期)に配属
1967/6/27 警官になる。中学生時代、冤罪に苦しんだ経験があり、テレビ「七人の刑事」を見て警官を志す。
1965 警視庁巡査、蒲田署勤務。
1970 警視庁刑事部鑑識課現場写真係。三島由紀夫割腹事件(1970年)、三菱重工爆破事件(1974年)、ホテルニュージャパン火災(1982年)、羽田沖日航機墜落事件(1982年)、日航123便墜落事故(1985年)、宮崎勤幼女連続殺人事件(1989年)、オウム真理教関連事件(1995年)など数々の大事件を担当。警視総監賞部長賞等107回受賞。非番や休日を利用して上野公園の街頭にいる似顔絵師のところに通い似顔絵の書き方を学ぶ。講道館柔道(6段)。
1994/2 4歳の幼女の証言で容疑者の似顔絵を作成し、強制わいせつ事件を解決。
1994/3 病院の看護婦長だった妻を白血病で亡くす。
1995/3 警察庁海外派遣の試験。全国の警官の中から刑事捜査鑑識専門官としてタイ国派遣選抜試験に合格。当時はフィリピンに2名。タイに1名派遣された。
1995/11/6 タイのドーンムアン国際空港に到着。警視庁刑事部に在籍しながらJICA(国際協力機構。当時は国際協力事業団)の専門官として、タイ内務省警察局科学捜査部に配属され、犯罪捜査および現場鑑識の指導にあたる。警察幹部を対象にした科学捜査技術セミナー(月2回)も実施。タイ政府と国家警察局の要請依頼で2年の任期を1年延長。タイ語による犯罪鑑識の教科書も出版。
1998 帰国。警視庁似顔絵捜査官が設立され、犯人手配用の似顔絵専門捜査官001号の任命証を警視総監より受理。
2001 警視庁警部を定年退職。似顔絵捜査官を指導する嘱託員として5年間の勤務を打診される。
2002/3 タイ国家警察から「もう一度指導してほしい」との申し出があり、その要請に応えて、JICAのシニアボランティアとしてふたたびタイに渡る。警察大佐を拝命。セミナーなどで指導した若い警官らが鑑識活動要領を引き継いでくれていて、日本の鑑識技術が根付き始めているのを確認。最赴任後も鑑識捜査官らとともに事件現場を飛び回り、若い士官、尉官たちを指導している。
2004/12/26 現地時間午前8時過ぎ、インドネシア・スマトラ島沖地震が発生。それによる大津波で南タイのバンガー、クラビー、プーケット各県に甚大な被害。津波発生時の翌27日から10名の部下とともに一番被害の大きかったバンガー県の被災地に直行し、約3ヶ月間で約4000体の遺体から指紋を採取し、遺体処理をする。日本に一時帰国したときに、吹上御所で天皇皇后両陛下に現地の状況をご説明し、両陛下からねぎらいのお言葉をいただく。
2006/3 邦人2名殺害された事件で鑑識活動により殺害現場を特定し、証拠採取により犯人を逮捕する。
2006/8/24 タクシン首相暗殺未遂事件で爆弾処理。
2006/9/19 軍クーデターに遭遇
2011/7 帰国


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