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コリン・グレイ(著) 奥山真司(訳):戦略の格言 ~戦略家のための40の議論~

time 2009/11/29

コリン・グレイ(著) 奥山真司(訳):戦略の格言 ~戦略家のための40の議論~


『戦略の格言 ~戦略家のための40の議論~』
著者:コリン・グレイ
訳者:奥山真司
発行:芙蓉書房出版
発行日 2009/8/20
http://amzn.to/2ldur5D
コリン・グレイ教授は、現代の三大戦略思想家の一人です。

今回は、グレイ教授の「西洋の戦略思想を理解把握するためにとても役立つエッセンス集」をご紹介します。

■グレイ教授

著者のコリン・グレイ博士は、
英国レディング大学教授です。
本著の著者略歴を紹介します。

<コリン・グレイ(Colins S Gray)
1943年イギリス生まれ。英国レディング大学政治・国際関係論学院教授。
同大学院戦略研究センター所長。専門は安全保障や戦略研究。1970年、オックスフォード大学で博士号を取得後、英・米・カナダの各大学で教員を務める。英国国際戦略研究所(IISS)の副研究部長就任を契機に英米の両政府のアドバイザーとなり、ハドソン研究所の上級研究員を務め、アメリカとの二重国籍を取得。ワシントンにシンクタンクを設立し、レーガン政権では主に核戦略担当のアドバイザーを5年間務める。著書には『現代の戦略』(Modern Strategy)をはじめとしてクラウゼヴィッツ的な観点から戦略論を説いたものが多く、他にも戦略文化、シーパワー論、エアパワー論、スペースパワー論、特殊部隊論、軍備管理、軍事における革命(RMA)、地政学などの分野で積極的に発言。邦訳には『核時代の地政学』(紀尾井出版、1982年)、『進化する地政学』(五月書房、2009年)などがある。>

訳者の奥山真司さんの手になるあとがきにも、グレイ教授のより詳細な履歴が書かれています。(なお奥山さんのあとがきは、実に優れた内容です。ぜひお読みください。)

現代戦略を語る上で、無視してはならない人物の筆頭に挙げられる方と個人的には思います。

■この本

グレイ教授が40個選び出した、西洋社会で受け継がれてきた軍事戦略論のエキス・「格言」とその解説エッセイ(小規模な論文)が付いています。こう書けば、あちこちで書かれた40個の格言と解説を寄せ集めた本と感じるかもしれませんが、まったくそうではありません。

たしかにそれぞれの項目は独立していますが、すべての項目が有機的につながっているんです。
それぞれ独立した40個の「格言とエッセイ」が、ひとかたまりになって「西洋の戦略理論」を読者に語りかけてくるんです。
格言+解説というスタイルだからではなく、一見バラバラに見える各項目が、一体となって西洋戦略理論を訴えかけてくる。この点で、本著は偉大な書物だと思います。統合運用の極地みたいです。

戦略という、つかみ所のない無機質で雲のようなテーマを、可能な限り具体化し、凝縮し、有機化し、飲み込みやすいサイズにまで名人がカットしてくれた。それでいて本格的な戦略の味がきちんとする。そんな本です。

相当ボリュームがあるにもかかわらず、読後感を一言で言えば「なめらか」です。
教授もかかれていますが、実に深く考え、練りに練られた内容、構成だと思います。

■内容

通読して思ったのは「戦略とは、実践そのものである」ということでした。
戦略を考える上で軍事は不可欠という言葉にも大きく頷かされます。
実践である以上、机上の空論は厳に排除されねばなりません。

戦略家と、いわゆる学者の違いはこの点にあるのでしょう。
グレイ教授は疑いなく実践者です。
実践的な言葉がたくさん出てくるのがうれしいところです。

■思ったこと

読めばお分かりいただけるでしょうが、
軍事や戦略なるものに正解はありません。

絶対的なるものもありません。
技術が全てを解決するわけではありませんし、政治がすべてを解決できるわけでもありません。
軍隊が全てを解決できるわけでもありませんし、経済がすべてを解決できるわけでもありません。
文化芸術が全てを解決できるわけでもありませんし、法律がすべてを解決できるわけでもありません。
国家が失敗しないことなど絶対になく、できるのは、失敗を極小に抑えることだけです。

すべては相対的で、一寸先は闇です。
生生流転の宿命を持つ分野だと思います。

だからこそ、少しでも軍事や戦略分野に見識を持つ、しっかりした人間が関係機関や国家の舵取りに関わり、失敗を極小化する保険をかけておく必要があるわけです。

なぜなら、絶対的なるものや正解なるものを高らかに掲げ、仕組みやテクノロジーを神聖視する勢力が権力を握ったとき、国家は最大の失敗を犯して大火傷を負うからです。これが歴史の教訓です。
そんなことを思いました。

ちなみに私の手元にある本は、ページの角を折ったり線を引く箇所が膨大となり、かなり汚れています。

紹介されてる各格言は、
「格言35 軍備はコントロールできるかもしれないが、「軍備管理」ではコントロールできない」
「格言21 不可能なものは不可能だ。まだ解決法が見つかっていないのは「問題」そのものではなく、その状況を作っている「条件」のほうだ」
「格言36 本当に重要なものは変化しない。近代史は「近代的」にあらず」
など、ほんとうに味わい深いものばかりです。

■素人にこそ読んで欲しい

教授は冒頭で「ノウハウの提供」は目的でないと記されています。
恐らくこの言葉は、読者の戦略家に向けた言葉だろうと思います。

しかし、読了後の今思うのは、まったくの素人がこの本を読んだとき、どれだけたくさんの「目からウロコ」や「感覚」や「見識」を得ることができるだろうかということでした。

グレイ教授の意図は、戦略家向けの戦略理論格言集かもしれません。
しかし私は、素人こそが読むべき本であり、現代の戦略思考とはいかなるものかを掴める、貴重な本だと強く思います。
とくにわが国では、広く読まれることが望まれます。

今回ご紹介したのは、
『戦略の格言 ~戦略家のための40の議論~』
著者:コリン・グレイ
訳者:奥山真司
発行:芙蓉書房出版
発行日 2009/8/20
http://amzn.to/2ldur5D
でした

(エンリケ航海王子)

■目次

はしがき
イントロダクション ー 大きな問題を正しく理解するために
パート1 戦争と平和
格言1 最も重要なのは戦争の「コンテクスト」である
格言2 戦争は平和につながり、平和が戦争になることもある
格言3 戦争をするよりも平和を形作るほうが難しい
格言4 戦争は効く! しかし意図しなかった結果や不測の事態は常に発生する
格言5 平和と秩序は自律的なものではなく、誰かによって維持・管理されなければならない
格言6 政治体だけではなく、社会や文化も戦争と平和の形を決定する
格言7 理性は戦争の上に君臨しているが、激情と偶然はそれを支配しようと脅かす
格言8 戦争には戦闘行為よりも多くのことが含まれている
格言9 政策は確かに王様であるが、その王様は戦争の本質や性格については無知であることが多い
格言10 戦争は常にギャンブルである

パート2 戦略

格言11 戦略に関する知識は致命的に重要だ。戦略研究の炎は灯しつづけられなければならない
格言12 戦略は、政策や戦術よりも難しい
格言13 まずい戦略は致命的だが、同じ子とは政策や戦術にも言える
格言14 もしトゥキディデス、孫子、そしてクラウゼヴィッツが語っていなければ、それはおそらく語る価値のないものだ
格言15 今日の「流行の戦略コンセプト」は明日になると陳腐化するのだが、それもいつかは再発見、再利用されて「新しい真理」として
啓示される
格言16 敵も決定権を持っている
格言17 「時間」は、戦略の中でも最も容赦のない要素だ
格言18 「摩擦」は避けられないものだが、必ずしも致命的なものではない
格言19 全ての戦略は「地政戦略」だー地理は根本的な基礎である
格言20 戦略の全てが軍事に関することではない
格言21 不可能なものは不可能だ。まだ解決法が見つかっていないのは「問題」そのものではなく、その状況を作っている「条件」のほうだ

パート3 軍事力と戦闘行為

格言22 人間が最も重要である
格言23 軍事力は政治にける最後の手段だ
格言24 軍隊の優秀さは、戦争における活躍によってのみ証明される
格言25 軍事面での優秀さも戦略の成功を保証できるわけではない
格言26 戦闘での勝利は戦略的・政治的な成功に必ずしもつながるわけではないが、戦略・政治面での敗北は確実に失敗につながる
格言27 戦争で大切なのは火力だけではないし、敵は単なる標的のまとまりではない
格言28 ロジスティックスは戦略的チャンスの裁決者である

パート4 安全保障とそれに対する脅威

格言29 苦しい時はまたやってくる
格言30 外には常に暴虐者や悪者、ならず者、そして愚か者がいるが、内にも害を及ぼしてくる奴らがいる
格言31 超大型の脅威は必ず現れる
格言32 慎重さというのは、国家運営と戦略における最高の美徳である
格言33 戦略史では善意が罰せられる
格言34 防衛費は確実なものであるが、そこから得られる安全保障上の利益は不確実で議論の余地が残るものだ
格言35 軍備はコントロールできるかもしれないが、「軍備管理」ではコントロールできない

パート5 歴史と未来

格言36 本当に重要なものは変化しない。近代史は「近代的」にあらず
格言37 歴史は何かを「証明」するために乱用されることもあるが、それでも未来を見通すために我々に残された唯一のものだ
格言38 未来は予見できるものではない。今日にとっての「明日」ほど素早く過ぎ去るものはない
格言39 サプライズは避けられないが、それが及ぼす影響は防げる
格言40 悲劇は起こる

あとがき ー 戦いのための教訓
訳者あとがき(奥山真司)

今回ご紹介したのは、
『戦略の格言 ~戦略家のための40の議論~』
著者:コリン・グレイ
訳者:奥山真司
発行:芙蓉書房出版
発行日 2009/8/20
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でした

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