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荒谷卓:戦う者たちへ ー 日本の大義と武士道 ー

time 2010/02/26


『戦う者たちへ ー 日本の大義と武士道 ー 』
著者:荒谷卓
発行:並木書房
発行日:2010/2/25
http://tinyurl.com/yay6byf
この本で一番目を引くのは、表紙の清々しさです。


まず目に飛び込むのが真っ白な表紙の上に書かれた毛筆の題名です。副題は題名の右側に赤い字で書かれています。この清々しさは、なんとも本著の内容にマッチしています。
本の製作者が著者の真意を的確につかんでいる証左でしょう。
こんにちは。エンリケ航海王子です。
「日本流のPKOは、ある意味、武士道の体現とも言える立派なものです」
ある方から聞いたこの言葉を私は、いままで十分に理解できませんでした。
きょうになって、ようやくこの言葉が腑に落ちたところです。
この本を読んだおかげです。
■著者は特戦群長
著者の荒谷卓さんは元1等陸佐[元陸軍大佐]。平成3年ごろから特殊作戦部隊の必要を訴え、その後創設されたわが特殊作戦群の開闢群長として任務を完遂されました。退役後の現在は明治神宮武道場「至誠館」館長をおつとめです。「わが特殊作戦群の父」といえましょう。
本著より略歴を引用します。
<荒谷 卓(あらや たかし)
昭和34年(1959)秋田県生まれ。大館鳳鳴高校、東京理科大学を卒業後、昭和57年陸上自衛隊に入隊。福岡19普通科連隊、調査学校、第一空挺団、弘前39普連勤務後、ドイツ連邦軍指揮大学留学(平成7~9年)。陸幕防衛部、防衛局防衛政策課戦略研究室勤務を経て、米国特殊作戦学校留学(平成14年~15年)。帰国後、編成準備室長を経て特殊作戦群初代群長となる。平成20年退官。1等陸佐。平成21年、明治神宮武道場「至誠館」館長に就任し、現在に至る。鹿島の太刀、合気道6段。>
荒谷さんは、特殊作戦群の理念を武士道に置き、精強な部隊づくりを目指しました。その成果はイラク派遣で実証されています。
ちなみに、
米陸軍の特殊部隊教育コース(グリンベレーQコース)に入ったときの年齢は41歳だったそうです。通常30代以下の兵士が入り脱落者の多いこのコースでは異例の高齢だったわけですが、荒谷さんはなんとここを卒業します。
そのときのエピソードは本文にかかれています。
本著のキモをひとことでまとめると、
「漂流を続けるわが国の活き筋は、家族のような国を創るとした神武天皇の建国の精神に立ち戻ること、そして、正しいと信ずることを貫き通すためには、自分の肉体の生死など気にかけないとする武士道の犠牲的精神を取り戻すこと、にある」ということです。
■概略
世界の進歩と発展をリードしてきた、資本主義に代表される「西洋型合理主義・唯物思想」は歴史的使命を終えました。世界はいま、これに変わるグローバルな社会思想を求める「ミレニアムレベルの過渡的状況下」にあります。
それに伴い国際情勢は不安定になり、政治・宗教的テロリストが世界に脅威をもたらしています。
著者は本著で、
「わが神道の考え方と武士道の価値観」は、グローバルな社会思想の任を担うに足るものであり、これを世界で展開することが国際社会における日本の大義になりうると提言しました。
そして、穢れをもたらすものと戦う者は、神道文化を背景とした本来の武士道的価値観に基く研鑚を積む必要がある、との方向性を示し、武士として動くために必要な精神のあり方を、具体的に伝えています。
本編は第1部と第2部から成っています。
第1部では「わが国家の基盤である神道と武士道の真髄とその普遍的価値」に関する論が展開され、日本の大義のなんたるかが記されています。
「わが神道と武士道が持つグローバルな普遍的価値は、日本が世界に発信できる大義たりうる」という内容です。
第2部では、第1部で提案した「日本の大義」を実現するために、戦う者は何に気を付け何をすればよいかが、著者の経験を中心に具体的かつ実践的な形で記されています。
特殊作戦群群長という著者の経験が最大限に発揮された、本著のエキスの詰まっているのが第2部と言えましょう。とはいえ、特殊部隊の機微に触れる記載はありません。当然のことではありますが、その点の期待はしないで下さい。
■第1部
その後の世界の軍事作戦を変質させた陸自イラク派遣の歴史的意義や、現在問題になっている自然環境問題等を通じ著者は、「資源配分」まで盛り込んだわが伝統・文化の意義をなぜわが国は世界に対し戦略的に展開できないのか?
との疑問を呈し、原因は戦後憲法が持つ価値観(*)にあるという結論に至ります。
(*)放棄したのは「戦争」ではなく、「戦うことも辞さない正義心をもった生き方」
また、日米同盟の本質は変化しており、米にとってわが国は「サイフ」としての意義しかなくなっており、そんななか起きたのがグローバリズムという名の資本主義の暴走である。資本主義は民主主義とイコールではなくなっているとします。
つづいて、人権思想なるものの行き着く先が「法さえ守れば何でもOK」という精神的腐敗をもたらす以外の何ものでもないこと、ロックの社会契約説への批判等が展開され、本著のキモたる「神道の考え方と武士道の価値観がなぜ人類普遍の存在足りうるか」へと論は進みます。
著者は、
世界中で起きている人心の荒廃は、西欧型の人為的思想では解決できなくなっている。その背景には、自らの起源と自然発生的な普遍性を失った欧州諸民族が、人為的なものに頼るしかなくなっている状況がある。
そんななかわが国には、自然発生的で普遍的価値を持つ神道文化がある。
武道の背景には神道文化があるが、神道の考え方と武士道精神は欧米武道家の理解と賛辞を得ている。
とし、
神道が持つ「平和共存」「自然と人類の共生」「人々が協和する社会」という理念を実現するために自己犠牲もいとわないのが武士。勝ち負けを争うことでなく、公共の大義を立てて平和共存の道を開く、という武道が持つ教育と神道の発想を通じた「武士道本来の精神」を広めることが重要である。
と論じます。
最後に、現在のわが国世相は邪気に蔽われているとし、これを生み出したのは目に見える仕組みではなく、目に見えない「人間の価値観」である。これは教育で培われるものだから、自分のためでなくまわりの人のために役立つ生き方ができるような教育をすることが大切で、これなしに現在のわが国の問題は解決しないと結論します。
<人間を含めた大自然の営みの中で、そこに秘められた原理と精神を体得し、日本武道の真髄を、邪気を祓う現代の戦いに活かすことこそが戦闘者の使命である>ということばで、第1部は終わります。
■第2部
第2部は本著最大の読みどころといえましょう。
初代特殊作戦群長の経験のエキスが詰まった武士道教本といって差し支えありません。実践的かつ一般人でも容易に取り組める内容でもあります。
第2部最初の「戦いの目的」では、「己の利益を最優先するものと戦う必要性」「わが理想を貫き通すことこそが戦い」「武力は殺傷できる能力のことであり、ここから目を背けて武とはいえない」といったことが書かれています。
「文武両道ということばが持つ本来の意味」も記されています。
第2部で印象に残った箇所をひとつだけ紹介します。
<「やるときは、やりますよ」などと言って、自分の生き方、死に方について具体的に肚決めをしていない者は、いざというときにうろたえる。自分の生き方に関わる肚決めは、事に直面するよりもずっと前に、自分自身で決めておくべきものなのだ。
損得を目的として生きることはできるが、損得を目的として死ぬことはできない。そのような生き方をした人の目的は、死とともに無に帰す。しかし、正義を目的として生きる者は、その目的のために死ぬこともできる。このような生き方をする人間の目的は生きているときのみならず、死してもなお生き続けるのである。
生と死をもって成し遂げようとした生き方は、時空を超えて多くの人々に働きかけ、影響を与える。A1曹の心もまた、特殊作戦群戦士たちの心に不朽の精神として息づいている。>(P103)
第2部で取り上げられているテーマの詳細は、以下の目次でご確認ください。
■特徴
1.特殊部隊指揮官が一般人向けに自ら書いたはじめてのメッセージである。
題名にある「戦う者」とは武器をとって戦う人のみを指す言葉ではなく、大義に向かって行動するすべての日本人に向けられた言葉である。
1.神道の考え方と武士道の価値観はわが文明のキモであり、不可分一体のものであることを、軍人らしい冷静かつ論理的なアプローチで「理」として明らかにしている。
1.武士道をわがものとするために読み手が必要とする具体的アドバイスを、現代の戦闘者たる著者がキメ細やかにかつ具体的に示している。
その意味で本著は、武士道の自己啓発・自己煥発教本といえる。
1.いただいた著者メッセージには、
<かといって戦前に戻っては同じことの繰り返し。日本の特異性ばかり強調していては、たちまち国際社会から排除されます。>という一節がある。このことばにあるとおり本著は、具体性・現実感覚を無視した憂国憤慨といった内容ではない。
1.戦後日本のエリート層はもはや使い物にならないと著者は見ており、わが伝統文化を脈々と実践する土民と純正な若者たちが読者対象になると明言している。なかでも若者への著者の期待は大きい。
1.参考図書・文献が69冊記載されており、この種の本としては非常に多い。
次代を担う若者への期待と読者に対する著者の真摯さを感じとれる。
■感想
同種の本は、故葦津珍彦先生の名著『武士道ー戦闘者たち』しかないように思います。
その系統を引き継ぐ本が、それも武人の手からでたのは実に喜ばしいことです。
わが神道が持つ考え方・武士道の価値観は、一部の文明でのみ通用するような偏狭なものではなく、人類全体で共有できる普遍的なものだということがよくわかります。あわせて、「自由」「資本主義」「人権」「グローバリズム」といった概念が持つ怪しさへの理解も深まることでしょう。
神道文化を背後にもつわが武士道とは一体どういうものなのか?が明確につかめ、それをいかにして体得するかの「具体的ノウハウ」がふんだんに詰め込まれているのはうれしい限りです。
わが国は独自文明を持つ国です。その文明のキモは、神道文化と武士道的価値観にあります。
国家にとって「文明が持つ価値観」は、パソコンでいうOSのようなものです。
ウィンドウズやLinux(Unix)といったものですね。
これがなければ何もできません。国家はその上で、各種の国家運営ソフトを走らせるわけです。
戦後日本の特徴として挙げられるのは、独自のOSがあるにもかかわらず、他国の別のOS上でうまく動くソフトをOSの違いに考慮することなく導入し(させられ?)、うまく動くはずもないことはハナからわかっているのに「ソフトがうまく動かないのは自分のOSが悪いからだ」と責任転嫁しようとする姿勢にあります。
今私たちがしなければならないのは、われわれの内面にある「わが日本のOS」のなんたるかを改めて明確に掴み、自らの手に取り戻すことではないでしょうか。
本著は、すべてのページでこの期待に応えるものです。
荒谷さんはおそらく、全身全霊を込めて本著を記されたろうと思います。
そして編集者さんも、通常とは異なる意識レベルで本著作成に取り組まれたように感じます。
読み手に作り手の思いは伝わります。
すべてのページが読みどころといって差し支えないのはその証左でしょう。
「日本流のPKOは、ある意味、武士道の体現とも言える立派なものです」
ある方から聞いたこの言葉を私は、いままで十分に理解できませんでした。
きょうになって、ようやくこの言葉が腑に落ちたところです。
この本を読んだおかげです。
あまり口にしませんが、今回は久しぶりに申し上げます。
ぜひお求めください。
今回紹介したのは
『戦う者たちへ ー 日本の大義と武士道 ー 』
著者:荒谷卓
発行:並木書房
発行日:2010/2/25
http://tinyurl.com/yay6byf
でした。
(エンリケ航海王子)
■もくじ
はじめに
読者の皆様へ
現代の戦闘者へ
第一部 大義の下の戦い
一.日本人が忘れたもの
ニ.「大義」を喪失した日本
三.戦わない日本人
四.グローバリズムのもたらすもの
五.「人権思想」の限界
六.個人の「自由」が暴走する社会
七.普遍的な神道の考え方
八.日本建国の理念
九.人間の真心を具現する武士道
十.武士道の体現者
十一.自然の摂理に従い生きる
十二.共存共栄をめざす武士道精神
十三.武士道精神が世の中の邪気を祓う
第二部 戦う者たちの武士道
十四.戦いの目的
戦うということ
正義を通す戦い
目的をもって生きる
戦闘のモチベーション(その1)
戦闘のモチベーション(その2)
自立した意志で戦う
背負うべき使命を自覚する
自分の肚で決める
十五.行動する勇気
行動を通じて知る
実行しなければ道は切り拓かれない
体の緊張をとく
恐怖心を克服する
死しても譲らない気概を持つ
十六.持続する勇気
心がふるい立つ工夫
心のバランスをとる
必死の精神の効用
恐怖心を胆力に変える
日本の武人としての自覚
相打ちができる胆力を養成する
十七.実効性ある能力
相手の力を包容する
心身の中心を意識する
戦闘力は自分で創る
あらゆるものを戦闘力に変える
持てる力をフルに活用する
柔軟性という戦闘力
戦いの理と術を知る
感性を身につける
十八.力の組織化
精神は共有できる
志のために戦う
日本人のソフト・パワーを活用する
武士道を見につけた特殊作戦兵士
「信じる」ものを貫き通す
参考図書・文献
今回ご紹介したのは、
『戦う者たちへ ー 日本の大義と武士道 ー 』
著者:荒谷卓
発行:並木書房
発行日:2010/2/25
http://tinyurl.com/yay6byf
でした。

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