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太田文雄:同盟国としての米国


『同盟国としての米国』
太田文雄(著)
芙蓉書房出版
2009年10月5日発行
http://tinyurl.com/y49grg6
■本当の専門は


著者の太田さんは海自ご出身で、最後の補職は情報本部長でした。
そのため「インテリジェンスの専門家」というイメージがあります。
しかしこれは的を射た見方ではないようです。
太田さんは本著のまえがきで
<・・・私には、これまで3冊の和書があり、そのいずれも「情報(インテリジェンス)」をテーマとしていることから、インテリジェンスを専門としているかのように思われがちですが、私の博士論文のタイトルは、冷戦後の日米同盟を扱った「同盟の合理性」でした。(以下略)>
と書いていらっしゃいます。
まえがきで書かれている詳細なご履歴を見る限り、太田さんが数十年にわたって継続して内から外から見てこられたのは日米同盟であり、あえて専門をいえば「日米同盟の専門家」が妥当に思えます。
その専門家が、「日米同盟の意味するもの」「米戦略を理解するためのインテリジェンス」を惜しげもなく公開しています。
■米戦略の入門書でもある
本著は、米の戦略を理解できる非常に優れた日本人向け入門書です。
理解に必要な概念や方向性等を、素人でも分かる形で有機的に記した啓蒙の書です。
文章が非常に読みやすいので、つっかかることなく最後まで読み進められます。
特に興味を惹くのは、日米同盟に関わってきた米人の姿が、実際に接した経験から、また対話を通じて描きだされている点です。彼らと直接接してきた太田さんならではの内容といえましょう。私が特に印象に残っているのは、海兵隊のグレグソン将軍のはなしでした。
「己を知り敵を知れば百戦危うからず」という言葉がありますが、わが国内では、米を敵視する人も同盟相手として信頼する人も、いずれも米戦略の何たるかを知るところ浅いと思います。
QDRやシナ観、シンク・タンク、トランスフォーメーション、統合軍といった項目で展開される解説を読み、読了することにはすべてが総合され、米戦略の何たるかがくっきり見えてくるでしょう。
米の世界戦略・安保姿勢はいったいどういうものか?これからどういう方向に向かってゆくのか?何を意図しているのか?日米同盟はなんなのか?が把握でき、米戦略の現状と方向性、わが国の戦略的活き筋も手にとるようにつかめることでしょう。
この理解をわが国益につなげていきたいものです。
先日の大礒さんの短期連載でも書かれていましたが、21世紀の世界政治の中心が米であることに疑問の余地はありません。多極化という言葉の裏にある「弱肉強食社会への突入」という意味合いを把握できないまま、国防安保姿勢の脆弱なわが国が、自国の潜在能力のみをあてにして、同盟維持のレベルでふらふらしているようではだめだと思います。
今こそ、「日米同盟理解」と「米国戦略研究」の内容をもつ本著を紐解く秋ではないでしょうか。本著はあなたにとり、日米同盟を考えるとき常に立ち戻る本になることでしょう。
(エンリケ航海王子)
【もくじ】
はじめに
第1章 日米同盟の歴史
なぜ同盟が必要か?
冷戦後の日米同盟
大陸国との同盟か海洋国家との同盟か
日本の同盟史とその教訓
日米安保協力の変遷
同盟のギヴ・アンド・テイク
第2章 米国にとっての日米同盟の意義
日米同盟は米国から見ても死活的
消え去った「ビンの蓋」論
在日米軍基地の軍事的重要性
日本のソフト・パワー
後方支援と技術協力
第3章 インテリジェンス・コミュニティー
同盟関係の底辺を支えるのはインテリジェンス関係
日本にとって必要な「情報の傘」
米インテリジェンス・コミュニティー
米インテリジェンスの人員・予算規模
情報時代のサイクルは新しい発想が必要
カウンター・インテリジェンス
防衛保全サービス報告書
第4章 国防総省
組織
ゴールドウォーター・ニコルスを越えて
国防総省の組織改革
州兵と予備役の将来及び調達と計画・プログラム・予算・執行システム
『ゴールドウォーター・ニコルスを越えて』の方向性
第5章 シンク・タンクとその役割
何故米国ではシンク・タンクが大きな役割を演じるのか?
シンク・タンクの種類
安全保障関係の重要ポストとシンク・タンクの関係実例
第6章 国家安全保障戦略等
米国の戦略系列
国家安全保障戦略
省庁間協力
『ゴールドウォーター・ニコルスを越えて』Phase4報告書
核戦略
第7章 QDR(4年毎の国防計画の見直し)等
作成の経緯
9.11後の変化
2006年のQDR
QDR2009の予測
クラウゼヴィッツ・モデルよりは孫子・リデルハート・モデル
国家防衛戦略
国家軍事戦略
21世紀のシー・パワーに向けた協調的戦略
第8章 東アジア戦略
アメリカの東アジア戦略の歴史的経緯
冷戦後の東アジア戦略
21世紀に入ってから
東アジア諸国の核と米国の抑止
第9章 中国観(『中国の軍事力』を中心に)
複雑な中国観
『2009年版中国の軍事力』
特に注目に値する点
海南島の海軍基地
米海軍の対応
弾道ミサイルの増勢
中台紛争を越えた軍備拡張
不透明な国防費
第10章 トランスフォーメーションとネットワーク・セントリック・ウォー
フェアー
トランスフォーメーション(変革)
RMA(軍事における革命)
ネットワーク・セントリック・ウォーフェアー
軌道修正
第11章 統合軍
組織
統合進展の時代的背景
9.11後の脅威の変化に伴う方向性
統合(Joint)、他国間協力(Coalition)、省庁間協力(Interagency)
任務部隊の番号付与制度
第12章 日米防衛協力のための指針と在日米軍
日米防衛協力のための指針(ガイドライン)
在日米軍基地の軍事的重要性
有事の際の基地拡張性
在日米軍の再編と日米の一体化
第13章 弾道ミサイル防衛
初の戦略的相互依存
初めて日本が米本土を防衛できる能力を保有
日本の地理的意義の向上
第14章 アーミテージ/ナイ・リポート
2000年報告書と2007年報告書との違い
執筆者たちとの対話から
安全保障面で注目すべき点
第15章 21世紀の日米同盟
日米安保50周年を迎えるに当たって
21世紀を担う士官候補生交流
日米同盟の将来に向けて
あとがき

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