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米国国家情報会議(編)北村愛子・北村淳(訳):グローバル・トレンド2025 ~変貌する世界~

time 2010/06/18



『グローバル・トレンド2025 ~変貌する世界~』
米国国家情報会議(編)
北村愛子・北村淳(訳)
並木書房
平成22年5月5日発行
http://tinyurl.com/25ash5h
米国という国には、情報(インテリジェンス)に極めて敏感という特質があります。


ここを甘く見たら痛い目に合うことは、これまでのさまざまな出来事を通じておわかりかと存じます。
米が情報を重視する証左のひとつは、各機関がさまざまな情報資料を公開していることに顕れています。これほど情報関連資料が公開されている国は他にありません。
種々の意図はあるでしょうが、隠せば探されるけど、出せば簡単に探されなくなる。
情報を公開しているからこそ、公開しない情報が守られるということもあるのでしょう。
さて米国には、CIAをはじめとする16個の情報機関を統括する「国家情報長官」なる職が
あります。
先のブッシュ政権時代に創設されたもので、国家情報長官を支える機関「国家情報会議」は、情報関連公刊物を出版・公開しています。そのひとつが今回ご紹介する「Global Trend」です。
20年後の世界情勢を4年ごとに予測したもので、今回発行されたのは4回目となる「Global Trend 2025」です。
2020年前後の時代がどうなるか。
わが周辺地域はどうなるのか?
これについて米国はどう見ているのか。
その方向性がつかめる非常に有益なハンドブックといえます。
たとえばこんなことが書いてあります。
●わが国の政治経済力は米・支・印に次ぐ世界第四位に転落する
●支那の中共、ロシアが展開する「国家資本主義」なるものに魅力を覚え、影響を受ける国が多くなる。
●2025年までに朝鮮半島は統一される可能性が高い
●わが国は「中の上」レベルの国際的地位を維持するけれども、働く人口が減り、成長を維持するのに苦労する。米支の経済力・軍事戦略の影響で、外交戦略の見直しを迫られる
最後の項目では4つのシナリオが描かれています。
あとがきで訳者さんが書かれているとおり、
他の重要文書に比べれば内容は薄く見えます。その点で物足りない人もいるかもしれません。
しかしよく考えてみてください。
専門家でもないわれわれが、米のインテリジェンスを通じて吸収すべき養分は、
各分野の詳細な分析結果ではなく、米という大河がこれから先の歴史で、どういう流れをとってゆくかという、実生活に直接関わる「大きな流れの方向性」ではないでしょうか。
ここをバチッとつかんでおれば、今後の各種判断で大きな錯誤はないでしょう。
わが国は世界で最も米と密接な間柄にある国ですからね。
その意味で本著は、私やあなたが「米という大河の流れ」をつかめる、米政府お墨付きの貴重な一次資料であり、信頼できる内容といえます。
おそらく米は今後、ここで描かれている内容に沿って動くことでしょう。
一読をオススメします。
★なかでも、第2章「人口動態が奏でる不協和音」は、非常に有益な内容です。ここを読むだけでも元は取れると思います★
ちなみに読了後まず頭に思い浮かんだのは、先日ご紹介した荒谷卓さんの「戦う者たちへ」でした。意外かもしれませんが、本著を把握する上でおそらくもっとも有益な参考書になると感じます。
以下は余談です。
先ほど書きましたとおり、米の各機関はさまざまな形で情報資料を公開しています。もちろん英語で書かれているので、内容をつかむことはそれほど簡単なことではありません。しかしその邦訳書はほぼ皆無です。
本著は、米の情報資料の邦訳として一般向けに出版されたものとしては、唯一の作品ではないでしょうか。
現在は要路にある人々が重要な資料を選んで、翻訳し回覧しているのだろうと思います。英語ができる人は直接読んで自分で理解しているでしょう。
「中国の軍事力」や「QDR」、米海軍情報部報告など、米が公開する各種情報資料の内容を一般レベルでも概要を把握しておくことは重要です。この基盤がないと、国際情勢に関する適切な質問ができません。ですから、この種の海外の各種資料は国語で持っておいてはじめて価値が生まれると思います。
国語に訳し、書籍として、いつの時代になっても縦の比較を通じた内容確認ができる仕組みを整えることが大切だと思います。
一方で、この種の資料を日本語化して残すことには非常な手間と労力が必要です。こういう状態なので一般向けに出版されることはまずありません。
これまで私が見たのは、「中国の軍事力」の全訳のみです。
それも、国際軍事データと、WiLL(だったと思います)の付録としてついていたものでした。
国防安保に関わる重要資料の国語への翻訳と国民普及は、国防や安保啓蒙に当たってとても重要です。
「英語ができたらいい」というのは、ある意味植民地発想です。
そういう発想に私は与しません。
1980年代半ばまで、わが国では陸幕2部翻訳の「ミリタリーバランス」が毎年出版されていました。ところが、あまりに売れないために中止されたと聞きます。これでいいのか?といつも思っていました。
そんななか生まれた本著に対し、万雷の拍手をささげます。
翻訳に当たられた訳者の労と、版元の並木書房さんの志に感謝の気持ちを伝えます。
世界はこれから、想像以上に大きな変化を遂げてゆきます。
現在顕れている変化も、丹念に本著を読み込むと腑に落ちるところ大でしょう。
2020年前後は、わが周辺で最大の動きがあると認められる時期でもあります。
一家に一冊。
おすすめします。
(エンリケ航海王子)
【もくじ】
はじめに
謝辞
本書の概要
序章 変貌する世界
連続より変化
さまざまな未来
第1章 グローバル化する経済
バック・トゥ・ザ・フューチャー(未来への帰還)
増大する中産階級
国家資本主義ーアジアで台頭する民主主義以後の市場
現在の世界的不均衡を修正するための多様な道
多数の金融ノード
分岐する発展モデルーしかしどのくらい続くか?
第2章 人口動態が奏でる不協和音
同時に起こる人口増加、減少、そして多様化
年金受給者の増加ー高齢化への挑戦
持続するユース・バルジ
環境の変化ー移住・都市化・民族の変化
人口統計学的描写ーロシア・中国・インド・イラン
第3章 新たなプレーヤー
台頭する有力国ー中国とインド
他の主要なプレーヤーたち
将来有望な国々
グローバル・シナリオ1:欧米抜きの社会
第4章 豊かさの中での不足
ポスト石油時代の始まり?
エネルギーの地政学
水・食料・気候変動
グローバル・シナリオ2:オクトーバー・サプライズ
第5章 高まる紛争の可能性
2025年までに不安定の孤は縮小するか?
増大する中東における核軍拡の危険性
資源をめぐる新たな紛争
テロリズムー良いニュースと悪いニュース
アフガニスタン・パキスタン・イラクー地域的道筋と外的利害関係
グローバル・シナリオ3:BRICsの崩壊
第6章 難局に直面する国際システム
多国間(協調)主義のない多極化
国際システムはいくつ存在するのか?
ネットワークの世界
グローバル・シナリオ4:政治は常に局所的とは限らない
第7章 多極化世界における権力分有
米国の指導力は依然として強く要求されるが、その能力は縮小するだろう
新たな関係と修正される古い関係
地位低下するドル
より制約される軍事的優越性
予期せぬ衝撃と意図せぬ帰結
指導力こそ重要である
訳者あとがき
囲み記事一覧
2025年の世界的背景
2020レポートと2025レポートの比較
長期的な予測:警告的な話
2008年の金融危機でグローバル化は危機にさらされているのか?
科学技術のリーダーシップ:新興大国にとってのテスト
ラテンアメリカ:穏やかな経済成長と継続する都市での暴力行為
地政学的変化の動因としての女性たち
2025年の世界の背景を形成する高等教育
HIVとAIDSの影響
西ヨーロッパのイスラム教徒
タイミングがすべて
脱石油世界における勝者と敗者
2025年までの科学技術の飛躍的進歩
気候変動で勝利する2つの国
開かれた北極圏の戦略的含蓄
サハラ以南のアフリカ:世界の交流と多くの問題
非核統一コリアの誕生?
中東/北アフリカ:経済は変化を促すが紛争の危険が伴う
二重構造のイスラム世界?
エネルギー安全保障
もう1つの核兵器の行使?
なぜアルカイダの”テロのうねり”は崩壊するのか?
変わりゆく紛争の形態
イデオロギーの終焉?
世界的流行病の出現可能性
アジア地域主義はグローバル・ガバナンスにとってプラスかマイナスか?
急増するアイデンティティと高まる不寛容?
民主主義の未来:新たな高まりよりも逆戻りの可能性
衰退しつつある反米主義?

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