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荒木肇:日本人はどのようにして軍隊をつくったのか ~安全保障と技術の近代史~

time 2010/07/28



『日本人はどのようにして軍隊をつくったのか ~安全保障と技術の近代史~』
著:荒木肇
発行:出窓社
発行日:2010/7/14
http://tinyurl.com/2f3vx3s
本著を通じてあなたにイチバン感じてほしいのは、
<19世紀の列強が暴れまわる国際社会に、資源もカネもないまま放り込まれたわが父祖が、試行錯誤を繰り返しながら、国防体制、軍を必死のやりくりで作り、育て、いかに健気に祖国を護ってわれわれに引き継いでくれたか>
という父祖の努力への感謝です。


■在野の軍事研究家
この本を書かれたのは、
メルマガ『海を渡った自衛隊 ~陸軍史あちらこちら~』でおなじみの荒木肇先生です。
本から略歴を引用します。
<荒木肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部教育学科卒業。横浜国立大学大学院修士課程(学校教育学専修)修了。
日本近代教育史、国民教育と軍隊、日露戦後の教育改革と軍隊教育、大正期の陸軍幹部人事計画などを研究する。横浜市立小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処理教育センター研究員、横浜市小学校理科研究会役員などを歴任。1993年退職。
生涯教育センター常任理事、聖ケ丘教育福祉専門学校講師(教育原理)などを勤めながら、教育史の研究を続ける。近代陸軍は教育機関であり、国民のインデックスであることを主張し、陸上自衛隊との関係を深めてきた。
主な著書に、『自衛隊という学校、正・続』、『学校で教えない自衛隊』、『指揮官は語る』、『自衛隊就職ガイド』、『学校で教えない日本陸軍と自衛隊』、『子供に嫌われる先生』(いずれも並木書房)、『静かに語れ歴史教育』(出窓社)などがある。また、メールマガジン「海を渡った自衛隊 ~陸軍史あちらこちら~」(週刊)も配信中。>
荒木先生は、教員として仕事をされる以前の学生時代から、長きにわたって軍・自衛隊の研究を重ねてこられました。
長い研究の蓄積と「学問」(学んで問うこと)の積み重ねを通じて得られた「軍事への深い理解」があるからこそ、自衛隊、陸海空軍の教育、編制、用兵、歴史や兵器・武器への総合理解がすこぶる妥当で信頼性高く、読み手にひたりと迫ってきます。
そんな荒木先生がこのたび世に問われた新刊は
『日本人はどのようにして軍隊をつくったのか ~安全保障と技術の近代史~』
http://tinyurl.com/2f3vx3s
といいます。
■どういう本?
本著は、次に代表される「戦後日本の歴史の定説・常識」
・そんなに過去の日本人は戦争が好きだったのか?
・指導者たちは支那や半島をわがものにしようと考えていたのか?
・庶民は騙されて犠牲だけを払わされてきたのか?
に応えるために、次の構想と問題意識を通じて作られました。
各時代の実態を、「国民の安保への考え方」「軍事を支えた技術」「思想を養う教育」の三つの面から見る中で、戦後日本でいわれてきた軍事にまつわる歴史上の定説・常識を鵜呑みにしてよいものかどうか考える。
本著の特徴は、
「正確な軍事知識へのこだわり」
「現在の基準で過去を評価しないという、歴史に対する冷静かつ妥当な視座」
「歴史を生きた先達への敬愛」
「軍事教育、軍事技術をめぐる総合的で深い考察」
の4点です。
印象は、
1.荒木肇先生のこれまでの執筆活動、研究の集大成
2.開闢以来初の「国民向けわが軍事史」の名に値する本
3.軍事理解のために必要な科学的姿勢の基準を提示した書
です。
ひとことでいえば、
歴史上の父祖たちへの温かい視線と冷厳極まりない技術解説が見事に両立した軍事史です。
読んで欲しいと思う理由は次のとおりです。
1.無機質なデータや事跡の時系列羅列ではなく、人・武器・装備・出来事を主人公とする物語の数々を通じて、建軍以来のわが軍事の歴史が語られるストーリー性。
1.使用している資料は、「偕行社記事」などの軍部内向け本格資料や軍人の言が多く、それらを咀嚼した著者の記述の信用度はすこぶる高い。
1.軍事能力の核となる武器技術と教育を中心に、明治建軍から満洲事変に至るわが軍事史を総合的に記述した内容で、歴史としての総合性と軍事専門性の両立という点で他に例を見ない。
1.重要なのに知られざる軍事できごと(軍内部の教育や配属将校のこと、日露戦争の各種失敗など)を、信頼できる資料を通じて、わかりやすく解説している。
1.メルマガ記事を読みなれているものにとっては、ひとつひとつのストーリーの長さが適度で読みやすい。
1.あらゆる歴史事象に対し、現在の価値観で過去を裁く傲慢さがない。懸命に、当時の現実のなかで評価しようとする姿勢に信頼と好感を持てる。
1.帝国陸海軍の仕組み、軍事・軍隊の何たるかを、わかりやすく誠実な姿勢でしかし、妥協することなく科学的に解説している。
本著を以て国民は、維新以来はじめて「国民のための総合的なわが軍事史」を手にできたと感じます。
こういう事業が、ひとりの教育者の手によって成し遂げられたことに驚くとともに、荒木先生に対し、限りなき敬意を表します。
■日露戦争~昭和初期に至る歴史
私が本著にもっとも感謝するのは、第三章以降の著述を通じ、日露戦争から昭和初期の歴史に関する苛立ちー「当時の歴史の全体像と、わが国の進路がおかしくなった分岐点が見えない」ー
を解消する視座を与えてくれたことです。
どうやら、この時代の歴史を把握するキモは「RMAと統帥権干犯問題」のようです。
日露戦争(1904~1905)から一次世界大戦(1914~1918 大正3~7年)の時期に軍事の世界は大きく変わりました。RMA(軍事分野の革命)が確認されたのです。
大正~昭和初期の軍縮への動きは、RMAに伴う「軍近代化」という意味合いが非常に大きかったようです。
しかるに政治はこのことを正確に理解せず、マスコミ、軍部内の反対派や革新官僚と結託して統帥権干犯問題の政局にしてしまい、(ちなみにこの主役になったのが前首相の祖父・鳩山一郎でした)陸軍の下克上、海軍の部内亀裂を招く種になったようです。
このとき政治は、将来の国防の方向性、あり方を真剣に考え、国際社会における力関係、わが国力の実際、必要な安保体制など総合的な視点から、軍近代化という大問題は、軍関係者に丸投げすることなく政治の責任で進めなければいけなかったのでしょう。
その責任を感じず、軍部に取り返しのつかない重大な傷を残し、将来の禍根を招いたことをさておいて、マスコミ・政治等の当時のエリート層は、それ以降に起きた総ての責任を軍部に押し付け、知らん振りしてきたのではないでしょうか。
二十一世紀のRMAは、いまも現在進行形で進んでいます。
「総力戦」が「新総力戦」、「軍縮」が「軍拡」になるなど、それぞれの言葉は違いますが、RMAに伴う世界規模の軍の変革は当時と同じような形で世界を飲み込んでいます。しかるに国民・マスコミの理解は低く、政治も意味を理解できていないようです。
■ここは圧巻!
291ページからはじまる「学校教育と軍隊」は圧巻です。
荒木先生の面目躍如といいましょうか、帝國陸軍と学校教育の関係のここまで詳細な歴史が、一般の人の前で明らかになったのは初めてではないでしょうか。
多くのマニアは「1925年(大正14年)からの現役将校学校配属制度」が、学校での軍事教育の始まりだと思ってますが、実際のところは明治はじめから行われていました。陸軍の要請でなく文部省の要請ではじまり、文部省の熱意に対し陸軍は冷淡だったという意外史も記されています。
そんな陸軍も、現役将校配属制度が始まってからは、最優秀の将校を学校に派遣し「軍民離間」が起きぬよう細心の注意を払って対応していたようです。
その証左である「行われた教育のハイレベルさ」には驚きました。
中学(現在の高校)では士官学校レベル、
高等学校(現在の総合大学教養部)・高専(現在の単科大学)では初級~中級将校レベル
大学(現在の総合大学専門課程)では陸大履修者レベル
で企画されていたそうです。
その際、学生に与えられた資料も優れたものが多かったそうです。
ところがこれに対する学生・学校側の反応は、次のようなものでした。
<生徒たちは真面目に話を聞こうとしない。二言目には、軍人などは頭脳のレベルが低い、体力自慢の人間である。もう戦争など起きないのに、ありもしない脅威を言い立てて自分たちの飯のタネにしようとしているなどという>(旧制高校配属の陸軍中佐)
<『軍隊ほど非人間的なところはない。人間の自由を陸軍ではどう考えているのか』そういう理屈をいうわりに、身の回りの整理整頓ができない。自由と放埓さを履き違えている>(旧制中学配属の陸軍大尉)
<学生たちは教授に出会っても挨拶もしない。先生の方も、講義中に学生が私語をしても注意もしない。大学の構内では物を置き忘れたら、まずなくなってしまう。誰もが自分の利益だけを考えている。全体のために何かしようとすると、口だけは賛成するが自分からは実行しない。よい会社や官庁に就職することだけが関心事で、学問も成績を上げるためだけにしている>(ある帝国大学に入学した砲兵大尉)
<職員室では先生たちは非協力で冷たい目を向けてくる。学校長ですら頼りにはならない。孤独に耐え、不平を言わず、ひたすら任務を果たすことに没頭すべし>
(某県立中学派遣の歩兵大尉)
「今と同じだ・・・」愕然とする人も多いのではないでしょうか。
荒木先生は
<高学歴者のエリート意識、軍事への無関心さ、不当な評価を下して平然としている態度、学校教員の軍人への意地悪さなどは、現代でも少しも変わっていないように見える>と指摘します。
同感です。
■国民の軍事認識は江戸時代に先祖返りしただけ
荒木先生が、本著で伝えたいもうひとつの重要なポイントは、次の言葉だろうと感じます。
<常説通り、過去の日本人たちがみな軍事に関心を持ち、侵略主義にこり固まっていたというのは、ほんとうの日本人の姿だったのだろうか。実は、それはある思想をもった人々の捏造だったのだ。近代以来、150年近くが経って、日本人は初めて長い平和の時代を体験している。『戦争とか、国防なんて、お上の考えることですよ』と答えた江戸時代の日本人に戻っただけではないだろうか>(P310)
また先生は「軍国主義の国民は軍事音痴である」という外国の言葉も紹介されています。先に紹介した、将校たちの言葉もこれを裏付けるものです。
為政者やマスコミ、国家エリートは、これらのご指摘をよくよく考えなければいけないですね。
■爽やかな夏へ
荒木先生へは、ねぎらいと感謝の言葉しかありません。
良い本を出していただき、ありがとうございました。
毎年この時期になると、国を出たくなるような「マスコミ発の卑軍情報」がわが国を覆います。しかし今年は、本著とともに、例年とは違う爽やかな夏を過ごせそうです。
読んで欲しい理由は次のとおりです。
1.無機質なデータや事跡の時系列羅列ではなく、人・武器・装備・出来事を主人公とする物語の数々を通じて、建軍以来のわが軍事の歴史が語られるストーリー性。
1.使用している資料は、「偕行社記事」などの軍部内向け本格資料や軍人の言が多く、それらを咀嚼した著者の記述の信用度はすこぶる高い。
1.軍事能力の核となる武器技術と教育を中心に、明治建軍から満洲事変に至るわが軍事史を総合的に記述した内容で、歴史としての総合性と軍事専門性の両立という点で他に例を見ない。
1.重要なのに知られざる軍事できごと(軍内部の教育や配属将校のこと、日露戦争の各種失敗など)を、信頼できる資料を通じて、わかりやすく解説している。
1.メルマガ記事を読みなれているものにとっては、ひとつひとつのストーリーの長さが適度で読みやすい。
1.あらゆる歴史事象に対し、現在の価値観で過去を裁く傲慢さがない。懸命に、当時の現実のなかで評価しようとする姿勢に信頼と好感を持てる。
1.帝国陸海軍の仕組み、軍事・軍隊の何たるかを、わかりやすく誠実な姿勢でしかし、妥協することなく科学的に解説している。
総理大臣から中学生まで、わが軍事を把握する際の基礎となる「わが軍事史」の必須文献として
常に目を通し、繰り返し読みつづける価値を持つすばらしい本です。
あなたの生涯を支えることでしょう。
今回は満洲事変までですが、満洲事変から大東亜戦争開戦に至る時期を対象とする続編の構想もあるそうです。実に楽しみです。
ぜひお読みください。
本日紹介した本は
『日本人はどのようにして軍隊をつくったのか ~安全保障と技術の近代史~』
著:荒木肇
発行:出窓社
発行日:2010/7/14
http://tinyurl.com/2f3vx3s
でした。
(エンリケ航海王子)
■もくじ
はじめに
第一章 日清戦争と脚気
1 外征型軍隊の建設
2 初めての対外戦争と誤算
3 日清戦争とその実態
第二章 世界が注視していた日露戦争
1 それまでの戦争とは大きく異なっていた日露戦争
2 完成された連発銃・三十年式歩兵銃
3 二十八糎榴弾砲の伝説
4 まだ間に合わなかった馬の改良
5 日露戦争でまたも襲った脚気の惨害
第三章 金もない、資源もない日露戦後
1 日露戦争後のアノミー(無規範)社会
2 軍隊という組織
3 『歩兵操典』の改正
4 大艦巨砲の時代
5 世界が注目した日清両国の海戦
6 ドレッドノート・ショック(戦艦建造の誤算)
7 海軍はなぜアメリカを主敵としたのか
8 陸軍を「国民学校」にした田中義一
第四章 第一次世界大戦と日本
1 第一次世界大戦から陸軍は何を学んだか
2 火力主義か白兵主義かの大論争
3 陸軍の軍縮は砲兵の大削減だった
4 日本という範囲
第五章 軍事と技術と教育
1 ああ快なるや航空兵、陸軍航空隊の夜明け
2 戦車とはいえなかった戦車
3 学校教育と軍隊
おわりに
参考・引用文献一覧
本日ご紹介したのは、
『日本人はどのようにして軍隊をつくったのか ~安全保障と技術の近代史~』
著:荒木肇
発行:出窓社
発行日:2010/7/14
http://tinyurl.com/2f3vx3s
でした。

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