商社罪悪論への疑問

最近疑問に感じていることを少し書いてみます。

それは、山田洋行に端を発した商社罪悪論です。
中には、商社などを通さずに防衛省が直接に取引すべきだ、という意見も少なく
ありません。既に防衛省はこれに悪乗りして新しい組織を創ろうとしています。
しかし、これは民間企業の多くが会社の諸機能を極力アウトソーシングしようと
している現代の潮流に逆行しているのではないでしょうか。



徳川幕府は商業の持つ流通や情報の機能を理解できず、「士農工商」と商業従事
者を最下級に位置付けましたが、現実の行財政の運営は彼等を利用しなければ何
も出来ませんでした。
最近の防衛装備品の輸入を巡る議論の暴走は徳川時代にも劣る内容のように感じ
ます。需要と供給双方のホットな情報の早期把握や瑕疵担保の責任負担等、日本
商社という世界に冠たる企業集団が果たしてきた重要な役割を全く無視している
からです。

よく言われるように、我が国政府の対外情報の収集・分析機能は極めて貧弱で、
ジェトロを始めとして世界に展開した日本商社の現地駐在員からの諸報告が辛う
じてそれを補ってきました。
例えば、中国や韓国が砕氷艦の建造を考え始めたという情報で最も早く防衛庁
(当時)に届いたものは某商社が北欧から得た、と言われています。
日本商社のこの広汎で質の高い情報機能を理解しないで、単に商品の利益をピン
ハネする悪徳中間搾取者としか思わないのは、政治家も官僚もマスコミも「兵
器」と「一口ギョーザ」の違いが分かっていないからではないでしょうか。

この事件を契機に防衛省は輸入や調達に関する人を増やすでしょう。
そして素人集団が非能率な仕事をして、人件費や関連諸経費だけが増え、時間が
かかり、不良品輸入の責任は誰も取らない、というお役所仕事がまた増えるのは
火を見るよりも明らかです。

官庁は一人でやっていた仕事が二割増えただけで人間を一人増やし、更にその上
役ポストを増やします。つまり、二割増えると一人が三人になるのです。
武器を輸入するなら、輸入業務のプロに任せる、そして必要な経費はキチンと払
う。このアウトソーシングの考え方こそ、長い目で見て結局は経費削減になるの
ではないでしょうか。

以上、ヨーソロの管見でした。

(ヨーソロ)

【080225配信 メールマガジン「軍事情報」より】