日の丸父さん(17)「ゴルフの付き合い」 石原ヒロアキ

2019年2月6日

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はじめに

 どんな社会でも人間関係はきわめて大切です。当然自衛隊も人間関係は重視されており、とくに上司との人間関係はその後の人生にまで影響を与えかねません。
 仕事以外の付き合いと言えばゴルフ、酒、カラオケなどが一般的ですが、これらが好きな上司は自衛隊にもたくさんおり、私もだいぶお付き合いをさせていただきました。
 ゴルフもカラオケもまったく上達しませんでしたが、自分としてはそれなりに楽しみました。自衛隊は今も男社会ですが、最近女性がだんだん増えてきて、女性が上司になることがあります。
 私は一度だけ女性の上司に仕えたことがあります。この時はさすがにどうしたら良好な人間関係を築けるか悩みました。ある時「部長、今日もお綺麗ですね!」と言ったら、「あんた、なに企んでるの?」と返され、「いえ、これは本心からですよ、部長」と思わず反応したら、かえって機嫌をそこねたことがあります。
 みなさん人間関係には気をつけましょう。
 石原ヒロアキ「まんが館」を立ち上げました。 現役時代に頼まれて描いた4コマ漫画もアップしています。
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自衛隊のお付き合い

 自衛隊、とくに陸上自衛隊は人の多い組織です。約14万人います。そしてさまざまな機能を持った組織に分かれており、それらが連携をとって任務を遂行しています。つまりお互いの組織の役割や能力をよく理解し、日ごろから交流を深めていないといけないわけです。
 たとえば師団の場合、普通科(歩兵)、特科(砲兵)、高射特科(対空)、機甲科(戦車、偵察)の戦闘職種のほか、それらを含む師団全部隊の後方(兵站)を支える後方支援連隊があり、師団全般の行動を支援する施設部隊(工兵)、通信部隊(通信)、航空部隊(航空)、化学部隊(化学)がありますが、どれか一つでも機能麻痺に陥ると師団全体の作戦に影響を及ぼしかねません。
 よく部隊間で協同訓練が行なわれるのはそのためです。日米の場合は共同訓練です。共同は境界線を引き、お互いを横目で見ながら行動しますが、協同の場合は同じ空間でそれぞれが助け合いながら行動します。
 協同の良し悪しは、それこそ任務達成だけでなく、自分たちの命にもかかわることなので、人間関係が重要になります。自衛隊で飲み会が多いのはそのためです(それ以外にも単に好きというだけの理由もありますが)。自衛隊は、部隊間あるいは部隊内で同期、先輩・後輩、職種、出身校などさまざまなつながりがあり、いつも飲み会をしています。
 部隊長どうしの人間関係は、また特殊なものがあります。部隊長は部隊の行動に全責任を負っているため、部隊長どうしの仲が悪いと任務達成に直接影響が出てきます。そこで仕事面では共同訓練ほか部隊長会議や各種の部隊長集合訓練などでお互いの意思疎通を図りますし、プライベートでは飲み会のほかゴルフコンペなどもよく行なわれ、部隊長どうしの親睦を深めているのです。
 ところでゴルフですが、幹部学校でもCGS (指揮幕僚課程)出身者はほとんどたしなみますが、TAC (技術高級課程)出身者はあまりやりません。CGSは部隊勤務が多くなり、将来連隊長や師団長など上級指揮官になるものが多いので、意思疎通の手段としてゴルフをするのだろうと思います。とくに上級者になると部外の名士とのお付き合いもありますから。
 なかにはプロゴルファーの指導を受けて、本格的にゴルフを修得するツワモノもいます。しかし、TACは将来補職で装備の研究開発に進むものが多く、個性的な集団であり、マニアックなところがあります。仕事でも個人プレイが得意なものが多いのですが、趣味も個性的です。
 私はTACなので、ウォーゲームという非常にマイナーな趣味を持ち、同じTAC出身者といつもプレイしてましたし、あるものは陶芸、あるものはピアノと多種多様でした。
 しかしTACでも指揮官になるときもあり、その時はCGSの方々とのお付き合いが始まります。私は師団化学防護隊長のときに初めてゴルフをしましたが、その様子は漫画に描いた通りです。
 私は方面隊でも指揮官を経験しましたが、方面隊は師団と違い、部隊間での結びつきはそれほどでもありません。ゴルフコンペなどありませんでしたし、部隊長が集まっての飲み会などもありませんでした。ちょっと寂しい感じでしたが、そのかわり駐屯地での部隊長の集まりは比較的ありました。
 駐屯地では駐屯地司令を中心に集まります。大宮駐屯地では化学学校長が駐屯地司令です。駐屯地の部隊は、駐屯地創立記念や駐屯地夏祭りなどの駐屯地の行事以外はまとまって動くことがほとんどなく、会話もあまりありません。しかし駐屯地には通常駐屯地の維持運営をする業務隊という部隊があり、営内者の生活や自分たちの勤務環境を維持向上させるために業務隊長との良好な人間関係を築くことはとても重要なことでした。
(いしはら・ひろあき)
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【著者紹介】
石原ヒロアキ(ペンネーム)
1958年、宮城県石巻市生まれ。青山学院大学卒業後、陸上自衛隊入隊。第7化学防護隊長、第101化学防護隊長を歴任。その間地下鉄サリン事件、福島第1原発災害に出動。2014年退職。学生時代赤塚賞準入選の経験を活かし、戦争シミュレーション漫画『ブラックプリンセス魔鬼 全10巻』(電子書籍版)を発売中。『漫画で学ぶサイバー犯罪から身を守る30の知恵』(ラック サイバー・グリッド・ジャパン・並木書房)の漫画を担当。家族3人(一女)。本名:米倉宏晃。
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