谷光太郎:「米海軍から見た太平洋戦争情報戦 ーハワイ無線暗号解読機関長と太平洋艦隊情報参謀の活躍ー]

こんにちは。エンリケです。
国家が総力を挙げて取り組むのが戦争で、
そのとき情報はすべてをつなぐ緊要点になります。
国が持つ情報能力は、戦争という事態に接したとき
最大限に発揮されます。
ですから戦時の情報史については、あらゆる角度から
眺める必要がありますし、味わう意味があります。
眺める角度の一つに、
「当時の敵国の視点」
があります。
この本は、大東亜戦争太平洋戦線(いわゆる太平洋戦争)
における主敵「米海軍」の情報戦についてまとめた本です。
我の視点から見た情報戦と
敵の視点から見た情報戦を
突き合わせることではじめて
情報戦の全貌が浮かび上がってきますし
教訓を得ることができるのではないでしょうか?
大東亜戦争太平洋戦線(いわゆる太平洋戦争)で
がっぷり四つで戦った日米両国。
太平洋戦線の主役は海軍でしたが、
想像以上にあっさりと米海軍に軍配が上がりました。
その理由についてこれまで種々言われてますが、
比較されてきたのは目に見える作戦用兵の話ばかりで、
目に見えない「情報」面の比較が十分研究されているとは言えない気がします。
われわれ国民が、大東亜戦争太平洋戦線敗戦の
歴史から何を学ばなければいけないか?
それは作戦用兵の分野より情報分野の方が大きいのではないでしょうか?
敵と我の情報取り扱いのどこがどう違ったのか?
当時のわが国には何が足りなかったのか?
に真摯に取り組み、情報への関心を高めて今に活かす必要が
あるのではないでしょうか?
本著は、そのきっかけとなるとても良い本です。
ひとつひとつの出来事が興味深く、つい読みふけってしまいますが、
この種の情報に接するときに脊髄反射で出てくる「だから日本は・・・」という
感覚を捨て、全体を俯瞰する視座を失わないよう意識して読むと、
今に活かせるダイヤモンドがあちこちから顔をのぞかせてくるでしょう。
著者はいいます。わが国の歴史で情報が重視された時代は
戦国時代と幕末明治初期のみであり、いずれも例外的な時代だった。
国家存亡の危機から遠のくと、先祖返りが始まる、と。
大東亜戦争太平洋戦線で戦った帝国海軍の情報軽視の姿勢は、
まさにその構図に当てはまります。
ただ、より正確に言うと、
国全体がそうなったから軍に反映された、
という見方のほうが妥当では?と思います。
国家国民が、軍事や情報への意識・対処を怠ると
歴史は繰り返されることになる。
その意味で、今のわが国をとらえなおす本でもありましょう。
軍事・国防・安保・情報関係者、研究者はもちろん、
戦史・情報史ファンや情報オタクにも手に取っていただきたい本です。
米海軍から見た太平洋戦争情報戦
ーハワイ無線暗号解読機関長と太平洋艦隊情報参謀の活躍ー
著者:谷光太郎
出版社: 芙蓉書房出版
発売日: 2016/9/21
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エンリケ