日の丸父さん(5)石原ヒロアキ 「自衛隊の糧食」

2019年2月6日

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はじめに

自衛隊は自己完結性の組織なので、食料も自前で準備します。
機動隊などは仕出し弁当です。
災害派遣や訓練などで出される非常食です。ミリメシと言われるもの
です。缶詰タイプとレトルトパックタイプがあります。缶詰(カンメシ)は、
昔は非常食の主流でしたが、今はレトルトパック(パックメシ)に変わり
つつあります。以前は種類も少なく、かつ味もよくありませんでしたが、
今はだいぶ改善されました。
若いころあまった飯を猫に与えたら、猫が吐いたことがあります。
カロリーは1食分約1000~1100kcalと多めです。これは第一線で
活躍する若い隊員を基準にしているためで、40代、50代の後方勤務者
が三度三度食べていたらとんでもないことになります。
おじさんが必要とするカロリーは1日1400~1500kcalといわれているからです。
また、ささやかな改善としてはスプーンが付いたことです。カンメシの
場合、缶切りは付いてくるのですが箸(はし)はありません。自分で割りばし
などを持っていきます。ない場合は小枝を代用にするか缶詰のふたを
はずし、折り曲げて食器代わりにするかです。
パック飯にはスプーンが付いてくるのですが、なくとも直接パックから
食べることができるので、便利です。カンメシでもおいしいものがあって、
とくに沢庵(たくあん)は人気でした。赤飯もあったのですが、
東日本大震災を境になくなりました。大量の死者が出ている被災地で
赤飯はないでしょうということですね。
最近のパックメシのおかずはバラエティに富んでいて、さんまのかば焼き、
やきとり、肉じゃが、ハンバーグ、手羽先などがあり、粉末のスープや
味噌汁なども付いています。とてもおいしいのですが、味は濃い目に
つくられています。これは肉体作業で失った塩分補給も兼ねているから
でしょう。また、結構腹にずしんと来て、もたれる場合があります。
活動中できるだけ空腹を感じないように、腹持ちがいいようなつくりに
なっているようです。
自衛隊では野外炊具(すいぐ)という炊事セットがあって、一度に100名分
の温かい食事ができます。この準備ができるまで戦闘糧食を食べること
になるのです。飽きないようにメニューは毎回変えてあるはずですが、
一度カレーが朝昼晩と続いたことがありました。糧食の仕事は大変なのです。
これに増加食と言ってお茶などが付くことがあります。
パックメシは、カンメシと違ってまた別のメリットもあります。食後の処置
が容易なのです。缶詰は金属容器なので、食べたあともあまり容積が
減らず、重くて処分が大変でした。その分パックメシは、袋を折りたたんで
簡単に捨てられるのです。
私が普通科連隊の小隊長の時、戦闘糧食にパンが出たことがあります。
軽くて徒歩行進に良いという中隊長の判断だったのでしょう。しかし結果は
裏目に出ました。真夏に、行進に引き続き攻撃という訓練科目でした。
40kmを夜間歩き通し、そのまま演習場に入って攻撃という行動です。
体重の半分ほどの背嚢(はいのう)と銃を背負い、徹夜で山を登るのですが、
その日は熱帯夜で大量の汗をかき、喉が渇きました。熱中症でベテラン隊員
も倒れるような過酷な環境です。早朝の攻撃の時は水筒に水はなく、
喉の渇きは耐えがたいまでになっていました。
さて、攻撃が無事成功し、小隊で休憩を取ってパンを食べようとしたら、
パンが口蓋に張り付いてのどを通りません。唾も出ず、水もなく、
しばらくパンを口に入れたまま呆然としていました。暑さと、喉の渇きと、
空腹で気を失いかけていましたが、間一髪水の補給が来ました。あの時
の感動は今でも忘れられません。

米軍の戦闘糧食

米軍の戦闘糧食はMRE(Meal、Ready-to-Eat)と言い、
パックに入っています。日米共同訓練や米軍研修などでたびたび食べる
機会がありました。これも1パック1200kcalほどあり、私は一度に全部
食べきれませんでした。チリビーンズ、ビーフステーキ、グリルドチキン
などの主食のほか、クラッカーやチョコレート、ケーキ、粉末ジュース、
コーヒーなどいろいろパックに入っています。
それなりにおいしいのですが、やはり味は濃く、水かお茶なしには
食べられませんでした。ただケーキだけは甘すぎて一口でもうだめでした。
ときどき米軍基地でもデザートでケーキを食べることがありますが、
砂糖のかたまりかと思うほど甘いものがあります。彼らの味覚は
我々とは違うのでしょう。
日米共同訓練では彼らは有り余るほどのMREを持ってきます。
食べ飽きているのかよく我々にくれたり、ホームヴィジットで民間宅に
訪問の際はお土産にしたり、たくさんの方々に配っていました。

駐屯地の食堂の飯

幹部食堂と隊員食堂に分かれていますが、メニューは一緒です。
パイロットなどは加給食と言って、さらにプリンやヨーグルトなどが
1品多くなっています。
最近はメニューに対するアンケートを取り、隊員の嗜好に合った食事を
出すよう工夫を凝らしている駐屯地もあります。野外でステーキを焼いて
配ったり、焼き立てのナンを出したり、新鮮なネタのすしを出すところ
もあります。ごはんは自分でよそいますから、食べ過ぎないよう注意する
必要があります。
栄養管理は栄養士さんがいてしっかりしていますから、短大などから
研修に来ることがあります。女子大生から「お疲れ様です!」と
声をかけられ、食事をもらうと一気に士気が上がります!
きょうの漫画はこちらからどうぞ↓
日の丸父さん(第5話)
http://okigunnji.com/url/102/
※5月31日まで無料
(つづく)
(いしはら・ひろあき)
【著者紹介】
石原ヒロアキ(ペンネーム)
1958年、宮城県石巻市生まれ。青山学院大学卒業後、陸上自衛隊入隊。
第7化学防護隊長、第101化学防護隊長を歴任。その間地下鉄サリン事件、
福島第1原発災害に出動。2014年退職。学生時代赤塚賞準入選の経験
を活かし、戦争シミュレーション漫画『ブラックプリンセス魔鬼 全10巻』
(電子書籍版)を発売中。『漫画で学ぶサイバー犯罪から身を守る30の
知恵』(ラック サイバー・グリッド・ジャパン・並木書房)の漫画を担当。
家族3人(一女)。本名:米倉宏晃。
『ブラックプリンセス魔鬼』
http://okigunnji.com/url/50/
『漫画で学ぶサイバー犯罪から身を守る30の知恵』
http://okigunnji.com/url/17/
※最近「石原ヒロアキまんが館」(URL:http://okigunnji.com/url/97/)
というホームページを開設しました。
ここには、化学学校ホームページで掲載中の4コマ漫画
『CBRNロボタマ子さんが行く!!』を毎週1話ずつアップしていきます。
このホームページは部内用なので普通閲覧できませんが、
CBRN(シーバーン)の啓蒙も兼ねて化学学校の許可を得て
掲載しています。ぜひご覧ください。