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日の丸父さん(4) 地下鉄サリン事件と自衛隊(アメリカ編) 石原ヒロアキ

time 2016/04/20

日の丸父さん(4) 地下鉄サリン事件と自衛隊(アメリカ編) 石原ヒロアキ

きょうの漫画はこちらからどうぞ

http://okigunnji.com/url/98/

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はじめに

今回の話は、地下鉄サリン事件のつづきです。
マンガでは長谷部3佐は化学剤の検知器調査のため、
アメリカに行くことになりました。いつまでも「カナリア」に頼る
わけにもいきません。海外に装備品調達のため調査に行く
ことはよくありますが、現地で実際運用しているところを見たり、
現地関係者と人間関係を築けたりとメリットはたくさんあります。
そのとき頼りになるのが現地の駐在武官です。私もだいぶ
お世話になりました。

さて、『ブラックプリンセス魔鬼』の第7巻が出ました。
今回は中国解放軍の原子力空母が出てきます。
ラストシーンは海上自衛隊の同期も共感してくれました。
ぜひご覧ください。

ブラックプリンセス 魔鬼(マキ) [第7巻]
http://okigunnji.com/url/96/

また、最近「石原ヒロアキまんが館」(URL:http://okigunnji.com/url/97/
というホームページを開設しました。
ここには、化学学校ホームページで掲載中の4コマ漫画
『CBRNロボタマ子さんが行く!!』を毎週1話ずつアップしていきます。
このホームページは部内用なので普通閲覧できませんが、
CBRN(シーバーン)の啓蒙も兼ねて化学学校の許可を得て
掲載しています。こちらもぜひご覧ください。

地下鉄サリン事件と自衛隊(アメリカ編)

地下鉄サリン事件は、日本だけではなく、世界も震撼させました。
とくにアメリカは敏感に反応しました。

まず、この時代、アメリカは世界でどういう立場にあったのかを理解
する必要があります。この事件が起きたのは1995年です。この6年前
の1989年、ベルリンの壁が崩壊し東西冷戦が終わりました。ソ連が崩壊し、
アメリカが勝ち残ったのです。これで平和になるかと思ったら超大国
のタガが外れて世界中で戦争や内戦が勃発します。そのなかでも
最大の戦争は1991年の湾岸戦争です。

アメリカは世界の警察官として中東の秩序維持のため中東に
コミットしていきます。ここから今に続くアメリカと中東との複雑で
悩ましい関係が始まるのですが、米軍にとってこの戦争の意義は
大きな意味がありました。というのは、ベトナムで失った自信と信頼
を取り戻すことができたからです。

しかしこの戦争に勝つことによってアメリカは世界で唯一の超大国
となり、敵対する国がいなくなりました。彼らは次に強大な軍事力を
どの方向に持っていったらいいか考え始めましたが、そこにこの事件
が起きたのです。テロとの戦いは非対称戦ともいわれます。弱い勢力
でもテロという手段で巨大な国に戦いを挑むことができるのです。
彼らが「アメリカはテロとの戦いに入るのではないか?」そう考える
のも不思議ではありません。

ですから、これまでにない、まったく新しい戦いに備える必要が
あると感じたでしょう(一部にはこれで国防費をあまり削られずに
済むと考えた者もいたでしょう)。特に化学兵器は高度な技術を
要する通常兵器に比べて、手軽に作れて単価も安く、使用した際の
効果は甚大です。地下鉄サリン事件はそれを証明して見せました。

アメリカのNBC(今はCBRN〔シーバーン〕:Chemical〔化学〕、
Biological〔生物〕、Radiological〔放射性物質〕、Nuclear 〔核〕と
呼びます)戦能力は、第2次世界大戦後急速に伸びました。それは
宿敵ソ連が化学生物兵器を重視していたからです。核戦略は別格
ですが、アメリカは化学兵器にしても生物兵器にしても防護装備
だけではなく、報復用に大量に攻撃用兵器を保有していました(今はありません)。

研究施設もいくつか持っており、化学生物兵器の基礎研究は、
アバディーン試験場にあるエッジウッド化学生物兵器研究センター
(Edgewood Chemical Biological Center:ECBC)で行なわれ
(生物兵器の研究はアメリカ陸軍伝染病医学研究所:USAMRIIDでも
実施)、実用試験はユタ州にあるダグウェイ試験場(Dugway Proving
Ground:DPG)で行なわれています。

アメリカ陸軍の化学部隊は、旅団単位でいくつか存在し(自衛隊の
場合、1佐が長の中央特殊武器防護隊が最大の化学部隊)、基礎教育
は陸、海、空、海兵隊とも陸軍化学学校(アラバマ州フォートマクレラン
から現在はミズーリ州フォートレオナルドウッドに移駐)で行ないます。
防衛省、自衛隊では考えられないような規模です。

彼らは化学生物兵器を大量に持つソ連が消え、目標が一時なくなり
つつあったところに、新たな化学生物テロの脅威対処という目標を
みいだしたことでしょう。

冷戦終結はいいことばかりではありません。ソ連はじめ東ヨーロッパ
の共産国家が崩壊し、大量の軍人が解雇され、多くの兵器が管理不能
になりました。化学兵器や生物兵器(もちろん核兵器も含めて)に関係
する軍人、技術者、資材、兵器も例外ではなく、過激な組織やならず者
国家がそれらを利用するのではないかという脅威が出てきました。

地下鉄サリン事件の6年後、2001年9月11日、アメリカは同時多発
テロの攻撃を受けますが、同じ年の9月18日と10月9日に炭疽(たんそ)菌
によるテロ攻撃を受けます。テロとの戦いは現実のものとなったのです。

私はそうした雰囲気の中でアメリカに行く機会を得ました。どこに行っても
温かく迎えてくれましたが、それは「地下鉄サリン事件で活躍した日本の
軍人」というだけではなく、軍人に対する尊敬の念が一般にアメリカ人に
強いからかもしれません。

彼らは歴史が浅い多民族国家です。よく国としてまとまっているなと
思います。しかし「アメリカの合衆国の脅威」に対してはすさまじいほど
の団結心を見せます。第1次世界大戦時のルシタニア号事件や、
第2次世界大戦の真珠湾攻撃のときがまさしくそうです。私は地下鉄
サリン事件でアメリカの見せた反応を現地で見て、この団結心、愛国心
がアメリカという国家の根源を創っていると感じました。

いま日本の周辺では、かつてなく脅威が高まっています。アメリカほど
ではないにしろ、日本はもっと脅威に対する国民としての団結心が必要
なのではないかという印象を持ちます。それが真の抑止力になるのでは
ないでしょうか。

きょうの漫画はこちらからどうぞ↓

日の丸父さん(第4話)
http://okigunnji.com/url/98/
※4月30日まで無料

(つづく)

(いしはら・ひろあき)

【著者紹介】
石原ヒロアキ(ペンネーム)
1958年、宮城県石巻市生まれ。青山学院大学卒業後、陸上自衛隊入隊。
第7化学防護隊長、第101化学防護隊長を歴任。その間地下鉄サリン事件、
福島第1原発災害に出動。2014年退職。学生時代赤塚賞準入選の経験
を活かし、戦争シミュレーション漫画『ブラックプリンセス魔鬼 全10巻』
(電子書籍版)を発売中。『漫画で学ぶサイバー犯罪から身を守る30の
知恵』(ラック サイバー・グリッド・ジャパン・並木書房)の漫画を担当。
家族3人(一女)。本名:米倉宏晃。

『ブラックプリンセス魔鬼』
『漫画で学ぶサイバー犯罪から身を守る30の知恵』



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