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普天間の謎  基地返還問題 迷走15年の総て

time 2010/07/22

『普天間の謎  基地返還問題 迷走15年の総て』
著者:森本敏
発行:海竜社
発行日:2010/7/17
http://tinyurl.com/2a4my5m



■証明された「国民の安保理解、未だ浸透せず」

あとがきで著者は、鳩山首相が「社民党の離脱、政治と金の問題の責任」をとって
辞任した、とされていることについて、そうではないとします。

普天間基地問題の迷走に見られる政治指導部の失態が最も重大な責任であったこと
は明らかである。普天間基地問題の処理が鳩山政権の命脈を断ち切ったのである。
今から思うと「海外、少なくても県外」という鳩山政治の理想が実現しなかった結果
である。>

つづいて

<政治に理想は必要であるが、この普天間基地問題の背後にある複雑な政治・外交・
安保課題の本質を十分理解すれば、この理想を実現することはさほど容易ではないこ
とに気がつくはずである。>

と、普天間基地問題は単なる一基地の移転問題ではなく、戦後日本の安保・外交・政
治の本質的課題に直結する課題である、ということへの鳩山指導部の不明を指摘し
ます。

そして、この問題を騒ぎ立てることにそもそも何の意味があったのか? と、
普天間基地移設という考え方そのものへの疑問を呈します。

<私自身について言えば、普天間基地問題は必然性がある問題だったのかという疑問
がいまだに解けない。普天間基地をどこかに代替地を求めて返還するという命題は間
違いではなかったのか。なぜ、この問題にこれだけの時間と労力をかけ、リスクを負う
必要があったのであろうか>

そして、この問題を通じて明らかになったこととして

日米同盟が日本国の安全にとって真に重要であるという理解はまだ十分、行き渡って
いないこともはっきりした。米国のイラク戦争以降、米国の武力行使や一国主義に嫌気
がさしている国民感情が反米感となって基地問題にマイナス効果をもたらしていること
もはっきりした。>

とし、最後に重大な問題提起をします。

<この国の中に日米安保体制の意義や重要性が浸透するには、まだまだ時間がかかると
思われる。鳩山政権の普天間基地問題の迷走も、基地問題というより政治闘争という
側面から見ている国民が多かったのであろう>

安全保障観が成熟していないところに普天間基地問題という難問を投げかけられる
と議論が沸騰し、その結果がよい方向に行けばよいが、そうでなければ国論が割れる
ことになる。普天間基地とか沖縄米軍基地とか抑止力とかいう言葉がテレビを通じて
お茶の間にはいり、あるいは飲み屋の話題になったのは、鳩山首相の功績だったとい
うのはブラックジョークであってほしい。本当のところ国民が真剣に考えるべき問題
であったのである>

■普天間問題(沖縄の基地問題)理解のための理想的な入門基本書

著者は森本敏さんです。
森本さんは、防大卒業後空自将校に任官し、その後外務省に移りました。
外務省退官後はアカデミズムの世界に入り、現在は拓大海外事情研究所所長、同大
院教授をおつとめです。安保関連の発言で広く知られ、テレビにもよく出演されてい
るのでおなじみの方も多いでしょう。

普天間問題の本質について森本さんはまえがきでこう書いています。

<より本質的には、この普天間基地問題は、同時に、在日米軍あるいは海兵隊とは
何なのか、なぜ海兵隊が日本に駐留する必要があるのか、海兵隊は抑止力になるのか、
グアムにすべてが移転すればよいではないか、といった議論がその根底にある。これら
はすべて日米安保体制の根幹に関わる問題であり、日本の安全保障に関わる問題であ
る。

先に指摘したように、これは冷戦後に起こった第二次安保闘争という性格を持ってい
る。そのことはすなわち、日米同盟の信頼性や日本の安全保障政策に深く関係する
問題だということであり、また、この問題の舞台が沖縄であることによって生じる
特別な意味合いから、本質的に、これは、沖縄問題であるという側面がある。>

本著はこれらを国民に伝えるため記された啓蒙書です。
まえがきの最後の二行で森本さんは、本著を書いた目的について

<「普天間問題とは一体何か」と素朴な疑問をもっておられる国民の方々に、
この問題の本質を理解していただくために書き下ろしたものであることを強調して
おきたい>

と書かれています。まさにそのとおりの書です。

普天間基地問題は、
「極めて複雑で一筋縄ではいかないやっかいな課題」
だろうと思います。

こんな複雑かつ重要な「普天間基地問題」について、
その核心を把握するに必要な、
「歴史」「軍事」「政治」
を通じ、総合的視点から国民を啓蒙する書は存在しませんでした。

本著をもって嚆矢とします。

特筆すべきは、

・綿密な取材が行われており登場人物名はすべて具体名。仮名やふせ名はなく、
 内容への信頼度が高い。

・問題理解の上で不可欠な在沖米軍の詳細データ、部隊運用の常識、地政学的視点が
 防大出身、元空自将校だった著者を通じ余すところなく記されている

・政治的複雑さを有する普天間問題の経緯・歴史記述が、わかりやすく記されている。

・沖縄で何が起きていたのか、がよくわかる。なかでも沖縄の指導者たちが示してきた
 国防、安保への覚悟、日本国に貢献する姿勢が詳細に記されている。

・わが政治指導部がこの十五年、本件でどういう動きをしていたかがつかめる

・付録で詳細な年表がついている

といったところです。

こういった内容が有機的に統合され、十分な発酵がなされた結果、
読みやすくて滋養あふれる、画期的な「普天間(沖縄の米軍)基地問題」啓蒙書に
仕上がった感を持ちます。

これから先、普天間問題を口にする際は絶対に欠かすことのできない基本書に
なることでしょう。古典としての価値ある内容と思います。

これ一冊あれば、普天間問題に関するすべてが把握できるといって過言ではありま
せん。

■すべては歴史から

人を採用するときは、履歴書職務経歴書を通じてその人の歴史を知ろうとつとめ
ます。それらなしに人を雇うのはよほどの特殊事情以外にありえません。

それと同じで、
何か理解しようとするときは、歴史を学ぶことを通じて、
何が問題か、何がキモなのかをつかむのが先決です。
学問でもなんでもそうです。

普天間問題も同じです。
しかしこれまで、総合的な経緯・歴史を一冊にまとめた
良心的かつ有機的な啓蒙書はありませんでした。

本著の登場をもって、
この問題の背景・歴史を国民は知ることになりました。
今後は、この問題への無知を口にすることはできなくなります。

普天間基地問題は、現在進行形です。
本著を一人でも多くの方が熟読し、普天間問題、ひいては在沖米軍基地問題、
日米安保、わが国防への視座を培ってほしい。
沖縄を巡る、お国のためにならない政治闘争に振り回されることのない
「一皮向けた国民」になっていただきたい。

痛切にそう思います。
本著は、森本さんの最高傑作だと思います。
普天間問題のみならず、沖縄の米軍基地日米同盟抑止力、わが安保、国防
というキーワードに関心を持つ方すべてに手にとっていただきたい名著です。

心よりオススメします。

エンリケ航海王子

■もくじ

はじめに

第一期 1995ー2002

 第一章 普天間基地返還合意はこうしてできた
  1 発端は沖縄米兵少女暴行事件
   ◎普天間飛行場米海兵隊の拠点基地
   ◎ナイ・イニシアティブに基づく日米協議
   ◎衝撃的だった米兵による少女暴行事件
  2 SACO設置で動き出した基地の整理・統合
   ◎吹き飛んだ日米安保共同宣言
   ◎当初は見込み薄だった普天間基地の返還
  3 急転直下決まった普天間基地返還
   ◎日米首脳会議で普天間を取り上げた橋本首相
   ◎橋本・モンデール階段で全面返還に合意
   ◎沖縄の悲願を盛り込んだ「日米安保共同宣言」

 第二章 米海兵隊はなぜ沖縄にいるのか
  1 米太平洋軍の指揮下にある在日米軍
   ◎小沢発言「第七艦隊だけで十分」は誤り
  2 精鋭兵員からなる第三海兵機動展開部隊
   ◎佐世保強襲揚陸艦と一体で任務遂行
  3 在日米海兵隊の強力な抑止機能
   ◎海兵隊撤退論は一国平和主義
   ◎抑止力なしには中国に対応できず
  4 在沖縄米軍基地の経緯と特殊な事情
   ◎経済的メリットで相殺できない過重な負担
 
 第三章 代替施設をどこに造るのか
  1 代替施設を本土移転できない理由
   ◎「県内移設」が前提だった普天間返還合意
   ◎「県外移設」は非現実的、普天間固定を招くだけ
  2 決まらない移設先
   ◎乱れ飛ぶ候補地名、揺れる地元自治体
   ◎本格検討された嘉手納統合案
  3 海上基地案の出現で一躍注目集めた名護市
   ◎局面展開狙った米国が海上基地案を提示
   ◎急浮上した名護市キャンプ・シュワブ
 
 第四章 海上基地方式から埋め立て方式へ
  1 海上基地方式のメリット・デメリット
   ◎浮かんで消えた「移動式海上基地」
   ◎日本側は「浮体式桟橋工法」を想定
  2 沖縄経済を潤す埋め立て方式への転換
   ◎白紙化に追い込まれた海上基地案
   ◎代替施設協議会を舞台に工法の再調整
   ◎地元に歓迎された辺野古沖リーフ上埋め立て案
  3 暗礁に乗り上げたSACOプロセス
   ◎政府と沖縄の埋まらない溝
   ◎SACOの進捗状況をどう評価するか

第二期 2003-2009

 第五章 強硬路線に転じた小泉政権
  1 米軍再編で息を吹き返した普天間移設
   ◎グローバルな米軍再編
   ◎国内に混乱を招いた在日米軍再編協議
   ◎米軍再編と「沖縄の基地負担軽減」をセットに
  2 白紙撤回された代替施設の移設先
   ◎「五ー七年以内の返還」どころか着工すらできず
   ◎振り出しに戻った移設候補地選び
  3 辺野古への回帰と三つどもえの攻防
   ◎「シュワブ陸上案」対「リーフ内浅瀬案」ー日米の攻防
   ◎「シュワブ沿岸案」対「リーフ内浅瀬案」ー政府と沖縄の攻防
  4 辿り着いた先はV字型滑走路のシュワブ沿岸案
   ◎日米を最終合意に導いた「額賀マジック」
   ◎県は協議継続を条件に日米合意受け入れへ
 
 第六章 環境影響評価と日米合意成立後の動き
  1 SACO最終報告以降の環境影響評価と妨害活動
   ◎環境アセスメント法に則った手続きを実施
   ◎環境保護とリンクした反基地運動
  2 政府案もとに普天間移設協議会で協議続行
   ◎振興策は移設受け入れが条件
   ◎調査支援に海上自衛隊掃海母艦を派遣
   ◎強硬路線見直しで歩み寄った福田政権と沖縄
  3 なぜ普天間移設は進まなかったのか
   ◎問題があった海上案から陸上案への唐突な修正
 
 第七章 在沖海兵隊のグアム移転をめぐる攻防
  1 極東有事を見据えた在沖海兵隊グアム移転計画
   ◎拝啓似9・11テロと不穏な東南アジア情勢
   ◎「沖縄の負担軽減」と「抑止力維持」は両立するか
  2 グアム移転の日米経費分担という難題
   ◎グアム移転プランがまとまるまでの紆余曲折
   ◎移転経費をめぐる日米交渉外務省防衛庁の確執
   ◎額賀・ラムズフェルド会談で政治決着
   ◎司令部移転後も実働部隊は沖縄・岩国に駐留

第三期 2009-2010

 第八章 民主党政権誕生ー日米合意案見直し
  1 「最低でも県外」を公約した鳩山首相
   ◎鳩山連立政権が十数年の成果を一瞬でご破産に
   ◎当初は様子見に徹したオバマ政権
  2 忍耐と柔軟性で対応するオバマ政権
   ◎米国はオバマ大統領訪日前の決着を望んだ
   ◎「トラスト・ミー」が日本の信用を失墜させた
  3 民主党の安全保障観と沖縄政策
   ◎「常時駐留なき安全保障」構想
   ◎結党直後から掲げていた「県外・国外移転」
  4 民主党政権の迷走の背景は何か
   ◎台頭する中国を脅威と見ない楽観主義
 
 第九章 揺れる連立政権と沸騰する沖縄
  1 「二〇一〇年五月末決着」が決まるまで
   ◎「決定の先送り」を決定
  2 連立政権内部に広がる亀裂
   ◎社民党・国民神道の基本方針
  3 ”我が道を行く”四人の民主党関係閣僚
   ◎司令塔不在の政権運営
  4 「県外・国外」一色に染まった沖縄
   ◎梯子を外された仲井真知事の悲痛な叫び
   ◎移設の可否を問う名護市長選で反対派が当選
 
 第十章 新たな移設候補地を求めてー迷走の日々
  1 三党検討委員会による候補地選びと米国の反応
   ◎「ゼロベース」で移設先検討に着手
  2 百花繚乱の移設候補地案
   ◎二〇一〇年二月時点の各案の特色と問題点
  3 米国は「現行案がベスト」譲らず
   ◎焦りの色を濃くする米国
   ◎日米安保改定五十周年で「日米同盟深化」を演出
   ◎小沢幹事長に対する米国の対応
  4 米国・沖縄双方から拒絶された政府案
   ◎二〇一〇年三月取りまとめの二段階移設案
   ◎オバマ政権に突き放された鳩山首相
 
 第十一章 日米合意案への回帰
  1 徳之島案と地元の反応
   ◎県外移設の切り札とされた鹿児島県徳之島
  2 明瞭になった「県外・国外移設」の挫折
   ◎残された唯一の選択肢は二〇〇六年の日米合意案
   ◎沖縄から突きつけられたイエローカード
  3 「五月末決着」の政治的けじめ
   ◎五月末決着に向けた政府の努力
   ◎五月末決着に向けた最後の詰め
  4 迷走の軌跡を振り返って
   ◎傷ついた日米同盟を速やかに回復せよ

普天間基地問題の経緯(年表)
人事表

おわりに

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