軍事情報 (自衛隊ニュース)を愛読のみなさまへ (田母神俊雄)

軍事情報 (自衛隊ニュース)を愛読のみなさまへ
田母神俊雄前航空幕僚長                
平成21年4月7日
国際外交は理想論では話にならない現実を「弾道ミサイル試射失敗」で多くの
国民が実感したのではないでしょうか。この週末に北朝鮮から撃たれた弾道ミ
サイルが飛び越えたわが国の空の下、桜が悲しく散っているように見えたのは
気のせいでしょうか。

北朝鮮ミサイル報道一色なので、ここで、昨年8月北京五輪真只中のロシア軍グ
ルジア侵攻を振り返ってみたいと思います。中央アジアと欧州を結ぶ新たなパ
イプラインはグルジアの地なくして西側諸国のエネルギー戦略は成り立たない
事情がありました。グルジアのパイプラインの存在は欧州のエネルギー利権を
一変するもので、ロシアの主導権を必衰されるに十分なものでした。これがロ
シア軍グルジア侵攻の動機です。ロシアは自国の国益を重視したものであって、
グルジアは自国の国益を脱ロシアで重視した結果です。
宗教や民族問題などの様々な問題から戦争に発展するケースと称されるもの
もありますが、実際は自国の利益、つまりは国益が動機となっています。実際
に戦争を起こすには信じられない莫大な資金が消費されます。自国が亡国の危
機にあわない限りは単純な思想回路で戦争は物理的に起きえないものです。
稀なケースとしては中国共産党のチベットやウイグル侵攻です。侵攻のリスク
を超えた天文学的な利益が侵攻先の国に保障された場合。このような場合は道
理、秩序や物理的などという視点はぶっ飛び、単純な国益の基準が戦争勃発の
動機となります。
高級住宅で鍵を付けずに泥棒が入るまで、又は泥棒の被害に有っても、ひたす
ら「泥棒よ、来ないでくれと」 忍耐強く願ってみよう。そして警察に守って
もらうことは「被害が拡大するから危険」と解釈し、ただひたすら「被害にあ
わないように」願ってみよう。このような家は泥棒の都合の良い一種の利権と
して、いずれは家に住む権利まで奪われてしまう。
家を守ることも国を守ることも基本は同じことなのです。
わが国も稀なケースとして、ジワジワむしり取られていることに気づいてほし
いと願うばかりです。特に自衛隊を貶めることに必死な方々に。
軍事情報管理人さんの無償の努力による日々の活動に敬意を表します。そして
何時も応援いただいておりますおき軍事さまへ御礼を申し上げます。有難うござい
ました。
田母神俊雄
【090407配信 メールマガジン「軍事情報」より】