自衛隊の情報戦 塚本勝一

2019年2月6日

■本著は大きく分けて
1.創設以来の陸自情報の解説
2.塚本さんが韓国武官だったときに発生した「よど号事件」に関するはなし
3.金大中事件に関するはなし
4.国防政策、防衛省、陸自、情報への提言(なかでも宣伝・広報の重要性)
の4つの柱からなる本です。
題名とは少し印象が違い、2.3.に関する著述が大半を占めています。
とはいうものの、すべての要素は章を問わず有機的に記されています。
著者は、塚本勝一元陸将です。
陸士・陸大を卒業された帝国陸軍の将校で、終戦時の階級は少佐。
陸大恩賜の天保銭組です。
敗戦後陸自に入り、最終階級は陸将、最終補職は西方総監で制服を脱がれました。
塚本さんの体験に基く言葉・提言は読み応えがあります。
特に「南京事件」「従軍慰安婦」に関する言は、当時現地にいた人の言葉なので説
得力があります。
また、わが国防政策には、つねに積極と消極の両論があって、交互に変遷を重ねてき
たと塚本さんは指摘します。
塚本さんは<消極策をとったとき、国内は繁栄したものの、
国際情勢から取り残された。積極策をとったときは、実力を超える外交で挫折
することが多かった>としています。
また、よど号事件の描写の中で突然、乗客(?)だった「聖路加病院」の日野原氏の名前が
出てくるなど、エキサイティングな場面が結構あり、読んでいて楽しいです。笑
1.「よど号事件」「金大中事件」を情報の観点から総括し、
帝国陸軍、陸自情報に被せられたゆえなき汚名を晴らす実情報告。
2.情報戦、広報戦について、説得力あることばで読み手に知らしめる。
この2点にこの本の稀少価値があります。
もしあなたが、軍事インテリジェンスに関心をお持ちでしたら、読まない理由はないはずです。
より詳しいはなしはこちらで↓
http://okigunnji.com/tsukamoto/