第一次世界大戦の陸戦史でご自分のインテリジェンス感覚を磨きたい人は他にいませんか?

2019年2月6日

ご存じのとおり、今年は一次大戦から100年の記念の年ですね。
また今年一月に安倍首相は世界経済フォーラム(ダボス会議)で、
わが国と中共の緊張関係を一次大戦前夜の英独の対立関係になぞら
えた演説を行って世界に衝撃を与えましたよね。記憶に新しいところです。
そういうこともあってか、国内での一次大戦への関心はかつてないほど
高まっているといって差し支えありません。
しかしこれまでわが国の一次大戦への関心は極めて低かったといえます。
理由は「自分たちと関わりが少なかった」からです。
ですから、一次大戦をテーマにした一般書はあまり目にしないんですよ。
そんななか登場したのが本著です。
一次大戦をきっかけに戦争というものは、軍人だけに任せておくにはあまりに
大きな問題になってしまいました。ですから、一次大戦の歴史を真剣に研究
することは、いまの戦争を考えるうえできわめて大切なんですよね。
軍事的な面で、一次大戦から学ぶべきキーワードは
「陸戦革命」「無制限通商戦」の二つだと考えますが、
そのひとつ「一次大戦陸戦」のすべてを記した全史が本著です。
専門家向けでなく、一般向けに出されているのがうれしいところです。
この戦争の陸戦に現れた戦術や戦いのやり方は、
それまでの戦争とどう違ったのでしょう?
詳細な戦闘経緯の紹介と解説を通じて明らかにされます。
ミリタリーファンはもちろん、歴史愛好者にとっても、
待ちに待った書ではないでしょうか?
著者は、一次大戦に造詣が深い歴史評論家・別宮暖朗さん。
本著を読めば、WW1陸戦のキーワードが「鉄道」「銃砲の性能」
「内線」「補給」「防御>攻勢」にあったことがわかります。
また、「一次大戦はなぜ起こったのか?」についてページを割いて
詳しく経緯が記されているので、セルビアでオーストリア皇太子夫妻が
暗殺されたことがなぜ欧州全体を巻き込む大戦争になったか?の理由と
視点が身につきます。
あわせて、欧州・ロシアという地域が抱える問題点は、当時も今も
何も変わっていないという視座を手にできます。
それだけでなく、一次大戦中に発生したロシア革命の経緯を通じ、
国内の政情不安は、外国の謀略により引き起こされているとみるのが妥当、
ということもよくわかるんです。
少し軍事に詳しい方であれば、本著がいわゆる「浸透戦術」の歴史を、
露軍・ブルシロフ将軍の紹介から詳細に記した書であることに価値を
見出すことでしょう。
個人的には、本著を通じ、ファルケンハイン、ブルシロフという人に出会え
たことに感謝しています。
当時、大国のひとつだったオーストリアは、この戦争を通じ、その地位
から完全に滑り落ちました。その理由はどこにあったのでしょうか?
大国の興亡という観点からも示唆に富む内容となっています。
戦闘単位で仕切られた各章は、長くもなく短くもない絶妙の長さで
構成されており読みやすい。おススメの一冊です。
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第一次世界大戦の陸戦史の全貌