本の紹介

2019年2月6日

■『【新訳】名将言行録』 兵頭二十八 PHP 2008/10発行
戦国武将の選りすぐりの言行をまとめた『名将言行録』岡谷繁実(原著)の
兵頭版注訳。
特徴は原著にあるすべての項目を取り上げ、新書一冊にコンパクトにまとめた
点。コンテンツそのものよりも、まえがきにある、岡谷繁実に関する兵頭さ
んの解説が一番滋養になるように感じた。

■『アメリカ空軍の歴史と戦略』 源田孝 芙蓉書房出版 2008/8発行
芙蓉書房と戦略研究学会が一般向けに打ち出した戦略啓蒙書シリーズ
「ストラテジー選書」の白眉のひとつ。
米空軍の創設から今に至る歴史が洩れなくコンパクトに示されている。
著者は退役空将補。
わが空自創設の経緯を、帝国陸海軍から現在にいたる歴史から
組織論を通じてアプローチした高橋秀幸の『空軍創設と組織のイノベーション』
と並び、空軍に関心を持つ方なら手に取る必要がある本だろう。
■『武力戦の諸相』 総監修 佐久間一 内外出版 2008/6発行
わが自衛隊将校が集結してまとめあげた、今を生きる国民のための陸海空軍事
教科書。
陸戦を安村勇徳退役陸将、海戦を金田秀昭退役海将、空戦を大串康夫退役空将
がそれぞれ代表してまとめあげた労作。
他に例を見ない軍事啓蒙教科書であり、ぜひ手にとってほしい。
ただ、ボリュームがそれなりにあり、少し高い。
本格的教科書のため、分かりやすさという点で少ししんどく感じる人もいるか
もしれない。しかし、この本のレベルをクリアしないと政治に対する意見具申
はできない。壁は乗り越えるためにある。ぜひ手にとってほしい。
陸海空軍事の歴史、風土の違い、戦い方のセオリー、言葉・用語の違いもよく
分かる。何度も何度も読み返してエキスを脊髄に染みわたらせる必要のある
基本書といえるだろう。
充実した索引、数十ページにわたる用語解説、佐久間退役海将の簡にして要を
得たあとがきなど、どこをどう見てもわが国を代表する軍事教科書といえる。
■『戦う制服』 坂本明 並木書房 2009/1発行
著者は著名なミリタリー・イラストレーター。
軍・警察・消防の制服から宇宙服にいたる特殊用途服を、姿かたちや実際の作業
の面から紹介したガイドブック。実に情報量豊富なイラスト満載で楽しめる。
特殊戦要員や宇宙飛行士の装備・行動に関心がある人に特にオススメ。
■『改訂 軍事OR入門』 飯田耕治 三恵社 2008/9発行
軍事意思決定に不可欠な知識である「軍事OR(オペレーティング・リサーチ)」
の歴史的背景、主要理論を説明した実務入門書。
内容は意外に平易だが、理系の数学やシステム工学・経営工学になじみのある
人でないと、最初は少しとっつきにくいかもしれない。
ただ、軍事ORについて書かれた一般書はおそらくこれだけだと思うので、
少しでも興味がある人は早めに手にとっておいたほうがいい。この種の本は
すぐに消えてなくなってしまう。著者の忌憚なき各種批判も、ひとつの読み
どころ。
■『太平洋戦争はなぜ負けたか』 別宮暖朗 並木書房 2009/3発行
最近流行りの「帝国海軍批判書」のひとつだが、全般から受ける印象は、
「日本の官僚的なるものへの批判を帝国海軍を舞台に行なっている」点に
ある。その意味で類書とは異なる印象を受ける。
官僚的思考、官僚的判断、官僚的行動からもたらされた結果は反省を産まない。
これが国を腐らせる主因ではないか?と著者は訴えているように感じる。
著者独特のあくの強さに拒否反応を示す人もいるだろうが、一度手に取る価値
はある。
■『ヨムキプール戦争全史』 アブラハム・ラビノビッチ(著)滝川義人(訳)
 並木書房 2008/12発行
佐藤優さんも推薦する話題の一冊。こんな高い専門書なのに売れ行き好調と
聞く。
存亡の危機に立たされたイスラエルが大逆転を演じて国を保った、第四次中東
戦争(ヨムキプール戦争)にまつわる全ての記録といってよい。
著者はジャーナリストで、読み物としても面白いのがうれしい。
中東政治のキモをつかめることはもちろん、イスラエル、ユダヤ的なるものの
「見えない強さ」を知る上で格好の参考書でもある。
■『アメリカ海兵隊のドクトリン』 北村淳・北村愛子共著 芙蓉書房出版
2009/2発行
ドクトリンの和訳とアメリカ海兵隊入門の二つからなるアメリカ海兵隊入門書。
非常に平易な言葉で記されている。海兵隊大好きな方や、野中郁次郎さん以来
続く「組織論から見た海兵隊研究」に関心がある人にオススメ。
教義の解説には、戦史に基く具体的戦例もつけてほしかった。
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【090315配信 メールマガジン「軍事情報」より】