人はなぜ平和を祈りながら戦うのか? (私たちの戦争と宗教) 星川啓慈 石川明人 

2019年2月6日


「どうして戦争はなくならないの?」
と聞かれたら、どう答えますか?
そんな時この本があったらとても救われるはずです。
この本を読めば、
・戦争と平和について、論理的に考えることができるようになる
・宗教問題に対する妥当な視座を得ることができる
・宗教と戦争のかかわりについて、これまでなかった視点を得られる
ようになります。
その結果、
・なぜ戦いはなくならないのか?
・人間とは何か?
についてご自分の見識を持つことができるでしょう。
戦争とは何か?
人間にとって戦うとはどういうことか?
を考えたい人、知りたい人、誰かに伝えたい人
は必読だと思います。
「宗教と戦争」という問題をきっかけに、
人間が持つ根本的な矛盾を自覚し、問いかける内容です。
この本を読めば、「人間の内側から戦争を考える」「戦争を通じて
人間を理解する」ための道具を手にできます。
著者は、石川明人さんと星川啓慈さんです。
星川啓慈(ほしかわ・けいじ)
1956年愛媛県生まれ。筑波大学第二学群比較文化学類卒業、
同大学大学院博士課程哲学・思想研究科単位取得退学。博士(文学)。
現在、大正大学文学部教授。専門は宗教哲学。著書に『宗教と<他>なる
もの』(春秋社)、『対話する宗教』(大正大学出版会)、『言語ゲーム
としての宗教』(勁草書房)、『宗教書ウィトゲンシュタイン』(法藏館)
がある。
石川明人(いしかわ・あきと)
1974年東京都生まれ。北海道大学文学部卒業、同大学大学院博士後期
課程単位取得退学。博士(文学)。北海道大学助手、助教をへて、
現在、桃山学院大学社会学部准教授。専門は宗教哲学、戦争論。著書に
『ティリッヒの宗教芸術論』(北海道大学出版会)、『戦場の宗教、軍人
の信仰』(八千代出版)、『戦争は人間的な営みである─戦争文化試論』
(並木書房)などがある。
石川さんの前作『戦争は人間的な営みである─戦争文化試論』
をより深めた続編といって差し支えない内容です。
人は何のために生きるのか?
人はなぜ矛盾や葛藤を背負わざるを得ないのか?
という問いを通じて人間の内面を掘り下げる本著の試みは、
今後の宗教・戦争をめぐる議論の足掛かりになりうる、
戦争文化論の新たな地平を切り拓くものと感じてなりません。
全体を通して、宗教と戦争、人間と戦いを考えるうえで必要な
「混同の戒め」「バランス感覚の大切さ」が伝わってきます。
歴史上の賢人たちの主張とその背景、心理学等様々な分野の論など、
「戦争とは何か?を考えるうえで欠かせない知識」を、余すことなく
与えてくれます。
取り上げられている論とそのさばき方は、学問的アプローチで戦争研究に
取り組もうとする人にも役立つだろうと感じさせますね。
戦争を考えるうえで欠かせない用語の解説・定義もじゅうぶんなされています。
各章が1テーマで完結し、読みやすい長さでまとまっていることから、
気になった章をそのテーマの入門書代わりにし、研究を発展させるというやり方も
ありるんじゃないでしょうか。
■もくじ
まえがき 石川明人
序章 「戦争」とは何か
1.戦争の現実
 第1章 人は人を殺したがらない
 第2章 それでも戦争はなくならない
 第3章 戦闘における生理と心理
 第4章 宗教と戦争の関係
2.戦いの中の矛盾
 第5章 「人を殺すな」か「人を殺せ」か?
 第6章 聖書・キリスト教における「平和」
 第7章 軍事大国アメリカの宗教
 第8章 日本のクリスチャンと戦争責任
 第9章 キリスト教史の中の暴力と迫害
 第10章 戦場の聖職者たち
3.平和への葛藤
 第11章 テロをめぐる善と悪
 第12章 戦うことは絶対に許されないのか?
 第13章 兵役拒否と宗教
 第14章 世界の諸宗教の平和運動
あとがき 星川啓慈
■こういうことが記されています。
序章では、宗教が戦争の原因とする見方は短絡的であり、宗教が戦争
を推し進める側面があることと混同してはならないとします。
1章、2章では、戦争を考えるうえで避けて通れない「人を殺す」こと
について、「人は人を殺したがらない」という立場と「人は人を殺すこと
に喜びを覚える」とする立場を、歴史上の賢人の主張を通じて、それぞれ
紹介しています。
3章では、戦闘の場面で人が特殊な状態になることを、戦場ストレス等
の豊富な実例を通じ、描き出しています。
4章は、戦争を社会的にとらえるため、宗教とは何か?からはじまり、
宗教と戦争の間にどういう関係があるか?非人道的行為の本質にある
表裏一体性などいろいろな切り口から宗教と戦争の関係について論考され
ています。コンパクトな中に中身がぎっしり詰まった印象です。
5章は、この世が続く限り永遠に続くであろう「状況が許せば殺せ」と
「何があっても絶対殺すな」の矛盾について記されています。
6章は、キリスト教における平和、暴力、戦争について解説されています
7章は、アメリカという国が持つ宗教的特性を解説しています。あまり
目にしない内容なので、面白く読めるはずです。
8章は、日本のキリスト教徒がいかに戦争と接してきたかについて
記されています。軍人では、淵田美津雄や吉田満、三木忠直などが
取り上げられています。
9章は、十字軍、魔女狩り、ラテンアメリカでの原住民迫害など、
キリスト教史でみられるといえる暴力、迫害について記されています。
ここでも著者は、「だからキリスト教は」とする短絡的なものの見方を
戒めます。
10章では、軍の聖職者について記されています。従軍チャプレンに
ついては、必要なのか否定されるべき矛盾の営みか簡単に結論は出せない、
としています。
11章は、テロに関する論考です。テロ=絶対悪という定義づけが
わが国で行われているが、果たしてこの姿勢は妥当なのだろうか?
テロというものをじっくりよく吟味することが大切ではないか?と
指摘します。
12章は、「命の重さは時代と場所によって異なる」という深い
人間洞察に基づく重要な指摘、軍人勅諭、ヒトラー暗殺計画などを通じ、
戦いと倫理について論考しています。
13章は、兵役拒否をテーマにした論考です。
14章は、世界のさまざまな宗教団体がどういう平和運動を行って
きたか?いるか?について紹介されています。データベースとして
も役立ちますね。
■さいごに
石川先生の著書『戦争は人間的な営みである─戦争文化試論』は、
わが軍事文化の世界を切り拓く意味を持つ重要な作品だった気がします。
今回その続編が出たことを本当にうれしく思います。
この本をきっかけに、
わが国における戦争文化研究がますます発展することを
心から期待しています。
戦争を考えるとは、人間なるものの一番根っこにある「二面性」を
あからさまにし、直面することかもしれません。
その意味でこの本は、戦争を通じて人間を知る本でもあります。
きょうご紹介した本は
人はなぜ平和を祈りながら戦うのか? (私たちの戦争と宗教)
単行本(ソフトカバー): 238ページ
出版社: 並木書房 (2014/4/18)
発売日: 2014/4/18
でした。
今すぐ手に入れてください。
http://okigunnji.com/ishikawa2/
電子版もあります
http://okigunnji.com/1tan/lc/dbishikawa1404.html
–エンリケ