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創刊2000年10月のメールマガジン「軍事情報」です。


最近ジェフリー・ロバーツ『スターリンの将軍 ジューコフ』(白水社、2013年)を読みました。

日本人はなぜかドイツ軍が大好きなので、ロンメルやらグデーリアンとかマンシュタインとかの関連本は豊富なのですが、ソ連軍の軍人に関する良書は少ない状況が続いていました。

ジューコフについては回想録『ジューコフ元帥回想録』が翻訳されていますが、同書の原本は共産主義体制下で刊行されたため、ジューコフの自筆原稿から削除されている箇所が多いことは有名な話です。

しかし、本書が今回刊行されたことで、最新の研究成果に基づいたジューコフの伝記が邦語で読めることになりました。日本人研究者の関心が高いであろうノモンハン事件に関する記述もすごく充実していて大変面白かったです。

軍事史に関心のある方にとっては自宅の書棚に必備の基礎的文献になりますね。

http://okigunnji.com/1tan/lc/jucof.html

それでは今週もよろしくお願いいたします。

【前回までのあらすじ】

本連載は、1940年から1942年11月8日に実施されたトーチ作戦(連合国軍によるモロッコおよびアルジェリアへの上陸作戦のコードネーム。トーチとは「たいまつ」の意味)までのフランス領北アフリカにおける、米国務省と共同実施された連合国の戦略作戦情報の役割についての考察である。

前々回から、フランス領北アフリカでインテリジェンス活動を展開していた三つの機関が、インテリジェンス・ネットワークを確立した過程について考察している。

フランス領北アフリカでインテリジェンス活動を行っていた機関は三つあった。すなわち、

1、駐ヴィシー米国代理大使ロバート・マーフィーの指揮下で動く十二人の副領事(十二使徒)・・・国務省系のインテリジェンス・ネットワーク

2、M・Z・“リガー”・スロヴィコフスキーが指揮するアフリカ機関・・・ポーランド軍&英国系のインテリジェンス・ネットワーク

3、ウィリアム・ジョセフ・ドノヴァン&ウィリアム・A・エディーのインテリジェンス・ネットワーク・・・情報調整局(OCI:後の戦略情報局(OSS))系のインテリジェンス・ネットワーク

以上、三つの機関である。そして、三つの機関は、それぞれ独自にインテリジェンス・ネットワークを構築していた。

前回は、ウィリアム・A・エディーがどのようにしてインテリジェンス・ネットワークを形成したのかについて述べた。

エディーのインテリジェンス活動は、地元のレジスタンス指導者や
タンジールに本拠地を置く宗教団体と接触し、港湾・上陸地点・重要な軍事目標といった重要な情報を収集するために、彼らの支援ネットワークを利用して情報収集を実施した点に特徴があった。

今回は、連合国にとって最大の謎であったフランスの動向を連合国がどのように考えていたかについて述べたいと思う。

【連合国にとって最大のエニグマ(謎)であったフランス】

フランス領北アフリカへの侵攻作戦を立案・準備する連合軍の作戦立案者にとって最大の謎は、フランスの動向であった。

フランスは、連合軍のフランス侵攻――その目的は、フランス領北アフリカを望ましくは無抵抗で通過し、北アフリカ東部でモントゴメリー将軍率いる英国陸軍と対峙するロンメルを背後から攻撃し、将来の南欧州での作戦のために地中海の南岸を確保することにあった――に際会し、どのような行動に出るのだろうか?

この複雑な謎は、ルーズヴェルト大統領がフランス領北アフリカで展開されることになるであろう上陸作戦のためのアドヴァンス・フォース・オペレーションを開始した時に、彼にとって最大の関心事であった。

【ルーズヴェルトの密命 ~ウェイガンが何を考えているのか探れ!】

1940年末、ルーズヴェルト大統領は、ロバート・マーフィーとウィリアム・ドノヴァン大佐に対して、北アフリカ地域の情勢を見積り、かつ同地域の地勢、同地域の重要人物に関する情報、同地域の住民の一般的動向を探るよう任務を与えた。

1941年に入ると、マーフィーとドノヴァンは、地中海地域において調査活動を開始した。

ルーズヴェルト大統領は、マーフィーに対して、「アフリカにおけるウェイガンの実際の権限の範囲。この老兵が将来に何をするつもりなのか?そして、米国はウェイガンを助けるために何ができるのか?」(ロバート・マーフィー『軍人の中の外交官』。原題:Diplomat Among Warriors )についての回答を出すように要求した。

本連載ですでに言及したように、マキシム・ウェイガンは、ヴィシー政権の国防大臣を務め、1941年7月にはフランス軍北アフリカ駐留軍総司令官兼アルジェリア総督に就任する人物であった。したがって、連合軍が北アフリカに上陸する上で、彼の動静を探ることは必須の問題であったのだ。

【マーフィーとドノヴァンの合同評価報告書の効果】

他方、ドノヴァンに対しては、ルーズヴェルトは、北アフリカ全域の経済的・政治的・軍事的側面を調査するように命じた。

マーフィーとドノヴァンの合同評価報告書は、地中海地域の外交・情報・軍事・経済の諸側面を分析したものであり、その意味で国力の諸要素をバランスよく扱ったものであったといえる。その結果、二人の合同評価報告書は、大統領とその補佐官たちの関心を地中海地域の諸問題に集中させると共に、地中海地域が外交的・軍事的行動の目標となるはるか以前から、大統領とその補佐官たちがこの地域を戦略的に考察する機会を作り出した。

【変化する情報ニーズとそれにより生じた問題】

ルーズヴェルト大統領がフランス領北アフリカにおいて情報収集を継続する決断を下したため、1941年夏から1942年11月までの期間、この地域のインテリジェンス活動の焦点は、戦略的なものから作戦的・戦術的なものへと急速に変化した。

さらに、上陸作戦計画立案のための諸活動と作戦立案のための情報要求が頻繁になされるようになるにつれて、収集される情報の焦点が、一般的なものからより詳細かつ専門的なものへと変化した。

しかし、情報ニーズが変化したことは、連合軍の北アフリカ地域におけるインテリジェンス活動を非効率なものにしたことも確かである。

というのも、リガーやOSSの報告書では述べられていないが、同一地域における2つの機関の存在はフランス領北アフリカにおけるインテリジェンス活動の権限を二分したからだ。

リガーの指揮するアフリカ機関は、ロンドンから要求される作戦的・戦術的レヴェルの情報(たとえば、部隊・港湾・船舶の移動に関する継続的な情報)に情報収集活動の焦点を合わせ続けた。

本連載ですでに指摘したように、リガーは、エージェント(協力者)の安全を確保するために、どんなレジスタンス・グループとも限定的な接触しか維持しなかったと述べている。このことにより、リガーは、トーチ作戦開始後に惹起するようになる外交問題や抵抗活動の組織化といった問題から切り離された。

【副領事とOSSの情報収集活動の焦点】

副領事(十二使徒)とOSSのエージェント(協力者)は、当初、アフリカ機関と同様の作戦的・戦術的レヴェルの情報を収集していた。しかし、OSSの説明によれば、副領事とOSSは、レジスタンス・グループや、フランス植民地政府の指導者およびその組織に関する情報や、これらの諸集団の協力関係に関する情報を継続的に収集し続けたと述べている。

副領事(十二使徒)とOSSの情報収集活動の焦点は、米英に対するフランス植民地政府の要人の反応を調査するという最も難しい問題にあったのだろう。さらに、副領事(十二使徒)とOSSは、上陸作戦の物理的準備というアドヴァンス・フォース・オペレーションにもその活動の焦点を合わせ始めた。

次回も、連合国にとって最大の謎であったフランスの動向を連合国がどのように考えていたかについて述べたいと思う。


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