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爆弾探知犬レックス━━ソルジャードッグ(1)

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軍事情報短期連載 
「爆弾探知犬レックス━━ソルジャードッグ(1)」
  加藤喬(Takashi Kato)
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「軍事情報」読者の皆さんへご挨拶

 加藤喬(たかし)と申します。1991年からカリフォルニア州モントレーの米国防総省外国語学校(DLI)日本語学部で准教授を務めています。元米陸軍大尉です。
 今回、軍事情報さんのご厚意で「ソルジャードッグ」と題し、軍用犬と軍犬兵の活躍について短期連載させていただけることになりました。

 日本ではあまり馴染みのないトピックですが、戦術面、ヒトの犬の絆というヒューマンな面、また犬好きのお国柄が出る民族性や文化の面でも興味深い分野です。

 5回にわたり、爆弾探知犬、警護犬、軍用犬学校、イラクやイランでの活躍、そして、戦傷復員兵の癒やしに特化した介護犬などを取り上げていきます。どうかご期待ください。

『軍用犬レックス』(原題 Sergeant Rex)は、イラク戦争を舞台にしたノンフィクションです。

 ベトナム戦争以来初めて実戦参加した米海兵隊軍用犬チームの一員、軍犬兵マイク・ダウリング軍曹とパートナーレックスの体験を通じ、ヒトと犬の間に芽生える友情と忠誠、そして過酷な爆弾探知任務を遂行する勇気が紡ぎだされていく様子が簡潔な語り口で描かれています。

 その息を呑むリアルさに、読者自身、IED(簡易爆弾)が仕掛けられ、敵の狙撃兵が潜む通りに一歩一歩足を踏み入れていく錯覚にとらわれるでしょう。

 しかし、本書の魅力は軍記物としての迫力だけではありません。戦友や儚(はかな)い恋心を抱いたイラク人女性通訳が殺されていく無慈悲な現実で著者が味わう怒り、悲しみ、絶望、そしてそれを乗り越える過程で気づく、生きることへの洞察も読者の心を捉えるはずです。

 出版の翌年、レックスをめぐるあるエピソードが全米メディアを駆け巡りました。

 ミーガン・レヴィー伍長はダウリング軍曹のあとを引き継いだ2人目のレックスの軍犬兵。2006年9月イラクのラマディ郊外で任務遂行中、簡易爆弾が炸裂し、レックスとともに負傷。伍長とレックスは米国に帰還し、ともにリハビリに励んだのです。

 1年後レックスは任務復帰を果たしましたが、聴覚をやられたレヴィー伍長は退役せざるを得ませんでした。

 それから5年。本書が出版されて間もなく、彼女はレックスが老齢のため軍務を解かれることを知り、海兵隊に引き取りを申し出たのです。

 しかし、民間引き渡し後の法的責任を厭う軍は許可を下ろそうとしません。生死をともにしたパートナーが安楽死させられてしまうのではないか。そう危惧した彼女は、地元ニューヨーク州選出の有力上院議員に支援を訴えます。

 議員の働きかけで2万人以上の嘆願書がたちまち集まり、ついに軍も折れ、引き取りを認めました。

 このニュースにニューヨーク・ヤンキーズのオーナーが粋な計らいを申し出ます。レックスを譲り受けるためカリフォルニア州ペンドルトン基地まで飛ぶ往復の費用を肩代わりしたうえ、2012年5月の対シアトル・マリナーズ戦の際、元伍長と退役したレックスを球場に招き、国のために尽くし傷ついた英雄たちの勇気と栄誉を称賛したのです。

 ヤンキー・スタジアムを埋める満員の観客は歓喜し、その場は異様な熱気と荘厳な雰囲気に包まれました。

 全米に流されたこの感動的なシーンが、犬好きで知られるアメリカ人の心を捉えないはずはなく『軍用犬レックス』の知名度も跳ね上がりました。本書にとっても幸運な巡りあわせでした。

▼画像http://goo.gl/LJZoAX
   http://goo.gl/CN9oEJ

『軍用犬レックス』を翻訳中だった昨年12月、レヴィー元伍長からレックス死亡の連絡を受けとったとダウリング氏がメールをくれました。肺と心臓に水がたまり癌も患っていたそうです。

 退役してから7カ月間、戦友と一緒に過ごせたことが救いでした。彼女の庇護のもとレックスは普通の犬に戻ることができたからです。

 毎晩居心地の良いベッドで休み、近くの川で泳ぎ、近所の犬と戯れ、鹿を追い、生まれて初めて雪の中を走り回ったそうです。
 最期は戦友の腕に抱かれ優しく話しかけられながら安らかに逝ったと言います。

 レヴィー元伍長に誰よりも熱心にレックス引き取りを勧めたのはダウリング氏でした。切っても切れない絆で繋がれたレックスを自分の家族にしたいのは人情。実際、海兵隊はレックス最初の軍犬兵だったダウリング元軍曹の功績に鑑み引き取りの優先権を与えました。

 しかし、彼は潔く辞退したのです。負傷したマリーンを一番よく理解し癒すことができるのは、同じく負傷したマリーンだと信じたからです。

 ダウリング、レックス、レヴィー。この海兵隊員たちはお互いに対する真の忠誠と愛で繋がれていたのです。翻訳を通じレックスに情が移っていたのか不覚にも目頭が熱くなりました。

 著者マイク・ダウリング氏は、現在、南カリフォルニアのロサンゼルスを拠点に講演や俳優業で活躍しています。映画・テレビに出演する退役軍人の支援グループVeterans in Film and Television: VFTの創設者の一人であり、戦傷復員軍人をサポートする非営利団体の顧問も務めています。日本語版出版にあたっては、海兵隊特有の表現などが日本の読者により良く伝わるようにと当初から頻繁に協力を頂きました。米陸軍体験を持つ自分が翻訳を担当することになったのも、あるいは人生のカラクリかも知れません。

(以下字句を修正しています)

◆メルマガ[軍隊式英語術]では、「YouTube」の動画をもとに生きた英語を学んでいきます。以下の動画を再生しながら、一緒に勉強しましょう。

(修正ここまで)

動画サイト:
http://www.youtube.com/watch?v=fh8XP7bTyb8&feature=related

基本語彙(カタカナ表示は大雑把なものです)
War against terror(ウオー アゲンスト テラー)対テロ戦争
Weapon(ウェッポン)武器
Take out(テイクアウト)排除する 抹殺する
Congratulate(コングラッチュレイト)お礼を言う 褒める
Canine(ケイナイン)犬 いぬ科の動物
Sniff out(スニッフアウト)嗅ぎ分ける 嗅ぎ出す
シナリオ (カウンターを00:00に合わせてください)
In a war against terror, America’s best weapon is also America’s best friend.
(対テロ戦争において、アメリカ最高の武器はアメリカの最良の友でもあります)
Time to meet the dogs of war.
(戦争の犬たちに会う時です)
After writing about their infamous role in taking out Osama Bin Laden, I headed to Colorado to congratulate these titanium toothed heroes.
(オサマ・ビンラディン殺害で軍用犬が果たした役割について書いたあと、私はチタニウムの歯をした英雄たちを祝福するためコロラドに向かいました)
First stop, the Air Force Academy in Colorado Springs where they train elite group of canine to sniff out trouble.
(最初に行ったのはコロラドスプリングスの空軍士官学校です。ここで、厄介事を嗅ぎ出すエリート犬を訓練しているのです)
英語一言アドバイス:
Congratulate は祝うとか祝福するという意味です。名詞は congratulations で、さまざまな祝いの席で使えますから覚えておきましょう。
Congratulations on graduation.
(ご卒業おめでとうございます)
Congratulations on a new job.
(新しい仕事が決まっておめでとう)
Congratulations on your engagement.
(ご婚約おめでとう)

動画サイト:
http://www.youtube.com/watch?v=fh8XP7bTyb8&feature=related

参考動画:マイク・ダウリング氏インタビュー
http://www.youtube.com/watch?v=6pIJDbrKRpM

参考サイト:リーヴェイ元伍長とレックス再会http://goo.gl/R5bHfb

参考サイト:軍用犬写真
http://www.theatlantic.com/technology/archive/2011/05/my-favorite-photo-ever-a-military-dog-jumping-out-of-a-helicopter/238431/

参考サイト:SERGEANT REX原書写真
http://www.amazon.com/Sergeant-Rex-Unbreakable-Between-Military/dp/1451635966

参考サイト:『レックス軍曹』の著者マイク・ダウリング元軍曹主演の映画『戦争の傷跡』トレイラー
https://www.facebook.com/photo.php?v=10151585958352532&set=vb.1408871125993222&type=2&theater

参考サイト:著者のメルマガ「もしも、の英会話入門:軍隊式英会話術」http://archive.mag2.com/0000229939/index.html

●著者略歴

加藤 喬(かとう・たかし)
米国防総省外国語学校日本語学部准教授。元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。カリフォルニア州立短大ラッセン・カレッジ、アラスカ州立大学フェアバンクス校で学ぶ。88年空挺学校を卒業。91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。カリフォルニア陸軍州兵部隊第223語学情報大隊中隊長をへて、現職。著書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT ある“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』(いずれも並木書房)がある。現在メルマガ「軍隊式英会話術」を配信中。

追伸:「軍用犬レックス」翻訳完了! 日本語版は並木書房より10月刊行予定。乞うご期待!
https://www.facebook.com/takashi.kato.71465572?fref=ts

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