「何が違うか明らかにするための議論」の成果

2019年10月10日


こんにちは。エンリケです。
国を思う気持ちと向かう方向性は同じだが、その理由と具体策が真逆の二人による主張、討論を紹介し、この二人に代表される戦後日本の「わが国策論」の何がどう違うかについて、これまでにない深さで理解できる本。わが国における米の影の実態も把握できる。
自立する国家へ! (ベスト新書)
紹介にあたって、毎号のメルマガの冒頭で掲載してることばを紹介しましょう。
本著を読んで強く思い起こしたのはこの言葉だったからです。
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【軍事理解のための「3つの土台」】
1.せめてこれくらいは国民として把握しておきたい軍事の常識
→軍事は政治の延長線上にあるもので、決して特別なものではない。
だから、軍事を忌み嫌う人は、政治を正しく理解することが出来ない。
一方で、軍事を必要以上に神聖なものと捉える人も、全体を見誤まる。
2.国民の軍事理解でイチバン欠けている部分
→国際政治がバランスオブパワーの関係で成り立っているということを知らな
い。一方で、そのようなことを知らないお人好しが、あたかも善良な人である
かのように捉えられる傾向にある。残念ながら、現実の国際社会は単なる仲良
しクラブにあらず。
3.ナゼ国民は、軍事理解に乏しいのか?
→自国への帰属意識が希薄であるため。守るべき対象(日本)を感じることが
出来ないのだから、軍事を理解することなど到底不可能。国家観に対する教育
を怠ってきたことのツケ。
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■相当深い話が
一言でいえばこの本は、
「戦後日本は、アメリカに従属することで生きている。その状態を打破して自立するために何をなすべきか?」
について、真逆の主張を持つ天木さんと田母神さんが、それぞれの「わが国策論」の違いを明確にしたものです。
これを読めば、
・戦後日本におけるアメリカの影の実態
・対米従属の現実はどういうものか?
がわかります。
お二人は、わが国における米の影について相当深い話をされており、とても興味深い内容です。
田母神さんの愛読者でしたら目新しい主張はないかもしれませんが、天木さんの言葉を通じ、「米からの自立を考えるうえでシナとの協力は不可欠」と主張する人々の論拠を把握することができます。
現在わが国にアメリカはどの程度の影響を及ぼしているか?をつかみ、
21世紀のわが国の方向性を考えるためには、読んで損のない一冊といえましょう。
それでは、このインテリジェンスブックの内容を見ていきましょう。
自立する国家へ! (ベスト新書)
●目次
序文 天木直人・・・5
第1部 
 今こそ自主・自立した日本を取り戻すときである 天木直人・・・・13
■新政権の抱える最大の課題・・・18
■防衛政策について正面から議論すべき時が来た・・・22
■とっくに終わっている日米安保条約の役割・・・・23
■冷戦後の安全保障政策を提唱した「樋口レポート」・・・26
■日米安保条約の成立過程を正しく知ることの重要性・・・28
■保守こそ日米安保条約に反対すべきだ・・・30
■私は左翼でもなければ親中国でもない。ましてや反米ではない・・・32
■民主党、社会党、公明党の責任と共産党の限界・・・34
■日米安保条約は米軍駐留条約である・・・・37
■日米安保条約を巡る外務省内部の隠された秘話・・・38
■昭和天皇が望んだ日米安保条約の早期締結・・・40
■防衛省・自衛隊の対米従属・・・42
■米国が危険視する日本の自主防衛・・・・44
■「まだまだ対米従属度が足りない」と米国はいう・・・46
■「日本と米国は価値観を共有する国である」という言葉の嘘・・・48
■なぜ私が米国のイラク攻撃に反対し、辞任に追い込まれたか・・・51
■経済面における対米従属・・・54
■財務省の対米従属・・・57
■「戦後史の正体」が告発したこの国の支配者の売国性・・・60
■「戦後史の正体」が触れていない自主防衛論・・・63
■なぜ米国との軍事協力から日本を解き放つ必要があるのか・・・65
■「軍事力を強化して日本を守る」という考えの行き着く先・・・68
■日本を攻めてくる国があるというのか・・・・72
■尖閣諸島の鍵を握るのは米国である・・・・73
■米国のアジア分断作戦に乗せられてはいけない・・・77
■国防軍ではなく日本を守る自衛隊を取り戻せ・・・79
■東アジアに集団安全保障体制を構築する・・・81
■今は憲法9条を一字一句変えてはならない・・・・83
■憲法9条は最強の日本の自主防衛策である・・・83
第二部 日本は国力と軍事力を備えた独立国家たれ! 田母神俊雄・・・・87
■戦後とアメリカの影・・・88
■政治家がもっと上手く官僚を使えばよいのだ・・・91
■憲法が自虐と謝罪の原点である・・・95
■マインドコントロールされた善意の日本人・・・99
■「専守防衛」は自主防衛とはいえない・・・・101
■異常な状態が続く戦後日本・・・・103
■自主防衛への道に日米共同開発が立ちはだかった・・・・104
■アメリカの戦略は「日本を自立させない」こと・・・・107
■ソフト支配が対米依存度を高める・・・・109
■戦後日本と日米安保の存在意義・・・112
■日米安保に抑止力以上を期待してはいけない・・・113
■核武装論者が受け入れた「非核三原則」・・・116
■「どうせアメリカは・・・」的思考では何も変わらない・・・121
■アメリカを敵に回さず自主防衛を・・・124
■「日本派」がいない日本・・・128
■アメリカにぶつけたい日本の正論・・・130
■核武装の正当性を説く・・・133
■自主防衛が戦争回避につながる・・・137
■大人の対応で国際政治は動かない・・・141
■本当の意味での日米同盟を目指す・・・146
第三部 激論!最強の自主防衛とは 田母神俊雄VS天木直人・・・153
■立場を超えて論じ合うことの重要性・・・154
■対米従属の実態・・・156
■「自主防衛を目指す」と書かれた自民党結党時の政綱・・・161
■冷戦と経済成長が対米従属を忘れさせた・・・167
■冷戦後も続く日米安保体制・・・172
■軍事力強化と国防軍・・・・177
■核戦争の可能性・・・182
■アメリカにものを言うために・・・190
■主要兵器は国産にしなければ自立できない・・・196
■歴史問題に決着をつけるべき・・・・203
■安倍政権への期待と提言・・・214
■対米従属でやられた日本経済の立て直しを・・・220
後書き 田母神俊雄・・・227
いかがですか?わが国における米の影を克服するために必要な知識がすべてそろっています。
この本を読み終わるころには、あなたは日米安保の本質をつかめるだけでなく、日米同盟の何たるかへの理解を通じ、具体的かつ正確な日米関係の実態にかかわる知識を手にできるでしょう。その知見を元に、自立した祖国を作り上げる国民になれるでしょう。
■感想
政治というのは結果が全てです。
いくら立派で理想的なことを言っても、現実に活かされなければクソの価値もありません。国際社会の現場を知る人は皆そういっています。
過去の歴史を見ると、国際社会では、理想主義で物事がよくなったためしがありません。逆に、狡猾でしたたかな現実主義に基づく行動が平和で安定した時代をもたらすことが多々あります。
また、国際社会は「獣がうろつく無法地帯」です。
古今東西変わることはないでしょう。
田母神さんが本著でおっしゃっている
「国際政治は子供の世界と同じで、腕力の強い者の言い分が通る。強いもののいうことを聞かなければいじめられる」と同じです。
そのなかで「大人の対応」をしてきたわが国がどういう結果を導いたでしょう?
現状を見ればわかるでしょう。
しかしわが国は、いじめられることを恐れずいうべきことを、したたかな戦略的計算の下で主張できる「サムライ魂」を持つ世界で唯一の国です。
「どうせアメリカは・・・」的思考の持ち主は早々に退場してもらい、
サムライ実務家が表舞台で活躍できる環境を用意すべきでしょう。
ただひとつ、軍事知識・常識に欠けた戦略論が未だにはびこっていることに違和感を持ちます。天木さんも例外ではなかったですね。とても残念です。天木さんがおっしゃる「目指すべき自衛隊像」や「憲法9条論」は、軍事常識からいえば現実には存在しえない机上の空論ではないでしょうか?独自核武装に対する感覚にも違和感を覚えました。
ただ、本著を通じて流れる元国家エリート二人の祖国への思いには、心打たれるものがあります。
■執筆者紹介
田母神俊雄(たもがみ・としお)
1948年、福島県郡山市生まれ。67年、防衛大学校電気工学科
(第15期)入学。卒業後の71年、航空自衛隊入隊。地対空ミサイ
ルの運用幹部として部隊勤務10年。統合幕僚学校長、航空総隊司令
官などを経て、2007年、第29代航空幕僚長に就任。08年、
民間の懸賞論文へ応募した作品が政府見解と異なるものであったこと
が問題視され、幕僚長を更迭される。同年11月3日付で定年退職。
同年11月11日、参議院防衛委員会に参考人招致されたが、論文内
容を否定するものでないことを改めて強調した。その後は執筆、講
演活動を中心に活躍。『自らの身は顧みず』(WAC)『田母神塾』
(双葉社)『田母神大学校』(徳間書店)『間接侵略に立ち向かえ』
(宝島社)『ほんとうは強い日本』(PHP新書)『日本はもっと
ほめられていい』(廣済堂新書)『日本を守りたい日本人の反撃』
一色正春との共著(産経新聞出版)など著書多数。人気のツイッター
は常に上位をキープしている。
ツイッター http://mobile.twitter.com/toshio_tamogami
ブログ http://ameblo.jp/toshio-tamogami
天木直人(あまき・なおと)
1947年、山口県下関市生まれ。69年、京都大学法学部中退後、
上級職として外務省入省。中近東アフリカ局第二課長、内閣安全保障
室審議官、在マレーシア日本国大使館公使、在オーストラリア日本国
大使館公使、在カナダ日本国大使館公使、在デトロイト日本国総領事
などを経て、01年2月から駐レバノン日本国特命全権大使。03年
8月末、小泉政権下、イラク戦争に反対し、外務省を解雇処分となる。
その後、評論・執筆活動を続ける。日本ペンクラブ会員。23万部超
のベストセラーになった『さらば外務省』をはじめ『さらば小泉純一
郎!』『さらば日米同盟!』『ウラ読みニッポン』(以上、講談社)
の他『イラク派兵を問う』(岩波書店)『九条新党宣言』(展望社)
などがある。安倍新政権発足の日よりブログ、メルマガで「インタ
ーネット政党を立ち上げよう」の連載を開始している。
天木直人のブログ http://www.amakiblog.com/
メルマガ http://goo.gl/YMCeC
自立する国家へ! (ベスト新書)
著:田母神俊雄、天木直人
新書: 230ページ
出版社: ベストセラーズ (2013/1/19)
ISBN-10: 4584123934
ISBN-13: 978-4584123935
発売日: 2013/1/19
商品の寸法: 17.6 x 11 x 1.8 cm
(エンリケ)
追伸
国を思う気持ちと向かう方向性は同じだが、その理由と具体策が真逆の二人による主張、討論を紹介し、この二人に代表される戦後日本の「わが国策論」の何がどう違うかについて、これまでにない深さで理解できる本。わが国における米の影の実態も把握できる。
http://tinyurl.com/9wpn7zp